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第2回:エルサの力はどこから来たのか。森の奥にある衝撃の“奇跡”とは?

ぴあ

19/11/27(水) 12:00

全世界で大ヒットを記録した『アナと雪の女王』は公開後から続編を望む声が多かった。しかし、ディズニーのフィルムメイカーたちはその声に感謝しつつも、慎重に考え、時間をかけて続編を製作するべきか検討した。彼らが作品に“グリーンライト(製作決定)”を灯す条件はたったひとつ。語るべきストーリーがあるか? そして彼らはついに発見する。この物語を描くために『アナと雪の女王2』は生まれたのだ。

それは“ふとした疑問”から始まった

映画がヒットすると、多くのスタジオは続編を検討する。ディズニーも過去には続編をビデオ作品としてリリースしたこともある。しかし、長編アニメーション映画は、彼らの長い歴史と誇りと責任がかかった特別なものだ。過去には長い時間をかけて案を練りながら“凍結”されたプロジェクトもある。「ディズニー・アニメーションではフィルムメイカーが映画のアイデアを持っていて、語りたいと願わないと決して続編をつくらないんです」と本作のプロデューサーを務めたピーター・デル・ヴェッコは語る。「だから、本作は58作品のディズニー長編アニメーションの歴史の中で4本目の“続編”なんです(※)」

彼らも当初は続編に対して慎重だった。しかし、前作のプロモーションのために世界各地を旅したデル・ヴェッコと、ジェニファー・リー&クリス・バック監督は繰り返し同じ質問をされていることに気づいた。「エルサはどこで力を手に入れたの?」。彼らも同じように疑問を抱いた。エルサの力はどこから来たのだろう? 「でも、それは単なる“きっかけ”に過ぎません」とディレクター・オブ・ストーリーのマーク・スミスは念を押す。「私たちが本当に考えたのは、この物語のキャラクターにまだ語るべきことがあるだろうか? ということ。それも“感情”の面でね。もし続編をつくるのであれば、感情的にもっと深いものでないといけません」

エルサとアナにはまだ描くに値する感情があるだろうか? 両監督は2015年のはじめ頃から本格的に続編が可能か考え始めた。「私たちはアナ、エルサ、クリストフ、オラフ、スヴェンのことをとても深く考え始めました。彼らは今どこにいるの? 彼らには何が起きているの? ここからどこへ行けるの?」(リー監督)。短編映画『アナと雪の女王/エルサのサプライズ』をふたりで監督したことも、続編の製作を後押ししたようだ。「短編映画に取りかかった時、僕たちは興奮したよ。僕らはこの物語の世界とキャラクターが大好きだって改めて思ったんだ。ここには語るべきストーリーがもっとあると思ったんだ」(バック監督)

そこで、両監督は海外に飛んだ。前作制作時には脚本づくりで忙しい監督たちに代わって、スタッフが訪れたノルウェーをはじめとする北欧の国々へ。通常、ディズニーでは作品をつくる際に“リサーチ”をとても重視する。本作の舞台になっている王国アレンデールの個性的な建物や装飾や、広大なフィヨルド(氷河の浸食によってつくられた複雑な地形の湾)、雪の質感などはリサーチ旅行で得たものが映画に反映されているが、本作では旅で目にしたものや経験、監督たちに訪れた感情が“ストーリー作り”に活かされた。

「私たちは“アナは完璧なおとぎ話のキャラクター”だということにこの旅行で気づきました」とリー監督は振り返る。「彼女は特別な力を持っていませんし、楽観的なキャラクターです。一方、エルサは“魔法の力”をもつ神話的なキャラクターです。神話的なキャラクターは世界の重みをその肩に背負っていて、しばしば悲劇的な運命に遭います。そこで私たちは気づいたわけです。『アナと雪の女王』はふたつのストーリー、つまり“おとぎ話”と“神話”が同時進行しているのだと」

※残る3作品は1990年の『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』、2000年の『ファンタジア2000』、2018年の『シュガー・ラッシュ:オンライン』

すべての秘密は“森の奥”にある。『アナと雪の女王2』の物語

王女エルサと妹のアナが冒険の果てに“真実の愛”を見つけ、アレンデールに幸福な日々が訪れてから3年が過ぎた。エルサとアナは共に城で暮らし、クリストフと相棒のトナカイ・スヴェン、雪だるまのオラフも幸福な日々をおくっている。しかしある日、エルサは自分だけに“不思議な歌声”が聞こえてくることに気づく。この声はどこから聞こえてくるのだろう? この歌は自分にとって何の意味があるのだろう? エルサは穏やかな日々を壊したくないと思う反面、未知の世界に足を踏み入れたい(イントゥ・ジ・アンノウン)気持ちを抑えきれない。

エルサの感情がある段階に達した瞬間、アレンデールの遥か北にあるという“魔法の森”の精霊たちが目を覚ました。その森は風、火、水、地の精霊によって守られており、彼らの覚醒によってアレンデールに危機が訪れる。エルサは自分の中に眠る秘密を探るため、危険な冒険に出かけることを決める。そしてアナは大事な姉を守りたい一心で行動を共にする。そこにはクリストフ、スヴェン、オラフの姿もあった。

王国に秋が訪れ、木々が赤く染まる広大な森を訪れたエルサとアナは、巨大な霧に包まれた一帯を発見する。長きにわたって人々からその存在を知られることなかった魔法の森。その奥には一体、何があるのか? エルサの聞いた歌声は何を意味するのか? アナは愛する姉エルサを守ることができるのか? ふたりは分厚い霧を抜けて、新しい冒険の一歩を踏み出す。

前作と新作は“ふたつでひとつ”のストーリー

『アナと雪の女王2』では精霊が暮らす魔法の森を舞台に新たな冒険が描かれ、“神話的”な世界観をもつエルサと“おとぎ話的”な要素のあるアナが、自身の秘密に迫り、成長し、新たな感情を発見する。ジェニファー・リー監督は「私たちは1作目の時に神話やおとぎ話について“これは知ってたわ”ってジョークを言っていたけど、本当は知らなかったの」と告白する。「私たちは発見したの。神話というものは悲劇的なストーリーだということを。私たちの欠点や罪、間違いを背負ってくれる特別な力を持ったキャラクターが描かれて、悲劇的な運命を抱えているのよ」

彼女の語る通り、エルサは生まれた時から氷や雪を生み出す不思議な力を持って生まれ、そのことで悩み、苦しみ、人々と会わないように部屋で孤独に暮らしてきた。愛する妹アナにも本心を隠し、心を閉ざした。それはとても哀しい“神話的”な物語だ。しかし、前作『アナと雪の女王』では「“おとぎ話のアナ”がやってきて世界を救った」とリー監督は分析する。「おとぎ話と神話についてのリサーチで最も大きな発見は、この物語はふたつのパワーが綱引きをしていると気づいたことよ」

ストーリーの詳細は明かせないが、本作では謎を追って危険な領域に足を踏み入れるエルサと、“信じる心”だけを武器にエルサを必死に守ろうとするアナのドラマが物語の中心に据えられる。愛する妹を危険な目に遭わせたくない姉と、そんな姉を必死に追う妹……一見、正反対のふたりは新たな冒険を通して自分の過去を、自分の現在の本心を、そして進むべき未来を発見し、自分を犠牲にしても愛する家族のために行動する。

さらに本作では姉妹の“成長”が物語の大きなウェイトを占めている。クリス・バック監督は「魔法の森は“変化するところ”だということを私たちに思い出させます。それらは人生のメタファーで、好んでも好まなくても変化はやってくるんです」と力強く語る。物語ではたまに“そして永遠に幸せに暮らしましたとさ”と語って締めくくることがある。「でもそんなことが本当にあるのかしら?」とリー監督は私たちに疑問を投げかける。

「私たちは、ものごとがうまくいったと思った瞬間に意外なことが起きたり、新しい道が開けたりすることがあると知っています。それが人生というものですよね(笑)。でも、私たちはそれについてまだ深く考えてみたことがありませんでした。人生に急激な変化が訪れた時、人はどうやって対処するのか? 急激な変化や自分の心の要求に向き合うのは恐ろしいし、危険なことかもしれない。でも、それを掘り下げるのは重要だと思ったんです」

前作『アナと雪の女王』は、不思議な力を持って生まれてしまったことで悲劇的な状況に放り込まれたエルサと、アナをはじめとする周囲の人々がお互いを受け入れ、自分よりも相手のことを想うことで真実の愛を見つけ出すまでが描かれた。つまり、“未知の相手”を巡る物語だった。

しかし、『アナと雪の女王2』は“自分の中の未知なる部分”を描く物語だ。奇跡は森の奥に、そして自分の内側にある。新しい冒険を通じてアナもエルサも自分たちの感情に深く入っていく。だからこそ本作は、単に前作の“欠けている部分”を埋める物語ではなく、前作と“ふたつでひとつの物語”になるように構成されている。両監督は語る。

『アナと雪の女王』と『アナと雪の女王2』は2作でひとつの完成された物語だ。

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