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染谷将太、斎藤工、山田孝之……日本の映画界担う俳優たち、映画制作に進出する背景は?

リアルサウンド

19/2/18(月) 15:00

 2011年秋に行われた第68回ヴェネツィア国際映画祭で、日本人初となるマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞)を受賞したことを大きな契機に、数多いる若手俳優を牽引する存在として数多くの映画に出演している染谷将太。そんな彼のもうひとつの顔でもある“映画監督”としての一面を見ることができる特集上映「監督 染谷将太」が2月16日から東京・渋谷のミニシアター、ユーロスペースにおいて1週間限定で開催中だ。

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 『ピンポン』や『デビルマン』などで子役として活躍してきた染谷は、高校生の頃から自主映画を作るようになったそうで、これまでにも2011年に公開された『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のスピンオフムービーや、全編16mmフィルムで撮影された『シミラー バット ディファレント』などのショートフィルムを監督。とくに後者を製作した2013年は、同作を含めて12本の出演映画が公開されていることを考えれば、いかに彼が映画へ情熱を注いでいるかが容易に見て取れることだろう。

 その『シミラー バット ディファレント』の上映会が行われた際に、俳優業をメインにしながら監督業も続けていくことを宣言した染谷。このように、俳優業と監督業を併行してこなしていくというケースは決して珍しいことではない。海外に目を向ければチャールズ・チャップリンをはじめクリント・イーストウッド、ロバート・レッドフォードなど枚挙にいとまがなく、最近でもアカデミー賞作品賞を受賞した『アルゴ』のベン・アフレックや今年のアカデミー賞の有力作の一角に名を連ねている『アリー/ スター誕生』のブラッドリー・クーパーなど、多数存在しているのだ。

 もちろん日本でも、古くは田中絹代のように俳優として国際的評価を得た人物が、溝口健二という偉大な監督の指導を受けながら監督業を行い、のちに『流転の王妃』という傑作を生み出した歴史がある。また、お笑い芸人として多彩な才能を発揮していたビートたけしが諸般の事情により主演映画『その男、凶暴につき』で監督デビューを果たし、そこから数年で“世界のキタノ”と呼ばれるまでに昇りつめていったというケースもあるわけだ。

 同じ“映画人”という括りにされる俳優と監督ではあるが、実際に完成した作品における関わり方、役割というのはまったく異なるものである。しかしながら、過去の様々な作品や経験からインプットしてきたものを、映画というフィールドの上に独自の手法でアウトプットしていくという“表現者”という立場では共通していることは言うまでもない。

 例によって、染谷は無類の映画好きとして知られており、古今東西さまざまな映画から得た知識や表現技法が俳優としての職に活かされており、監督作品にもそれがしっかりと反映されている。そして染谷と同じように、俳優界きってのシネフィルとして知られる斎藤工も昨年『blank13』で監督デビューを果たし、今年の春に公開される白石和彌監督の話題作『麻雀放浪記2020』では企画として携わり自ら主演も務めることで、新たな表現の道を切り拓こうとしいている。

 他にも、国際的な活躍をつづけ短編・中編監督としても活動してきたオダギリジョーが初めて長編に挑む『ある船頭の話』が今秋公開され、山田孝之がプロデュースを務めた『デイアンドナイト』が現在公開されているなど、近年はとくに若手~中堅の俳優たち、とりわけ将来的に日本の映画界を担うことになるレベルの俳優たちが制作者に回るケースが増加しているのは実に興味深い。専業監督から直接受けてきた演出や、過去の映画作品から習得してきたありとあらゆるスキルを自分のものとして還元する能力を持つ彼らの中から、“世界のキタノ”につづくような映画監督が誕生する日もそう遠くはないだろう。 (文=久保田和馬)

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