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Superfly『スカーレット』主題歌が運ぶ“心地よい朝” 主人公 喜美子と視聴者に寄り添う応援歌に

リアルサウンド

19/11/2(土) 7:00

 イントロを聴くだけで、脳内に心地よい映像が広がる音楽がある。差し込む温かな陽の光、カーテンをなでるふんわりとした風、青空を気持ちよく流れる白い雲……そんな清々しい朝の風景を彷彿とさせ、思わず新鮮な空気を胸いっぱい吸い込みたくなるような音楽が、歴代の朝ドラを彩ってきた。

参考:Superflyが主題歌で彩る、連続テレビ小説『スカーレット』の世界 OP映像はクレイアニメーションに

 9月30日からスタートした、戸田恵梨香主演のNHK連続テレビ小説『スカーレット』もまた、さわやかな音楽が気持ちのいい朝を演出してくれている。本作は戦後間もない時代から高度経済成長期にかけて、貧しいながらも、たくましく働き、女性陶芸家として波乱万丈に生きる主人公・川原喜美子の人生を描くオリジナルストーリー。がむしゃらに、明るく、懸命に生きようとする姿が、すでに多くの視聴者の心を掴んでいる。

 物語のキーとなる陶芸にちなんで、オープニングではろくろの上で粘土が様々な形に姿を変える映像が流れる。1人で立ち上がったり、炎が燃え上がったり、人と人とが繋がってひとつになったり……一定方向に回るろくろを見ていると、決して巻き戻すことのできない時間の流れを見つめている気分になる。まるでその様子は、出会いと別れ、創造と破壊を繰り返す、人生や時代そのもののようだ。

 そんなオープニング映像に乗せて耳に届くのが、Superflyの歌う「フレア」だ。Superflyといえば、「愛をこめて花束を」「タマシイレボリューション」「Beautiful」に代表されるように、力強く聞き手を鼓舞する楽曲が印象的だ。

 越智志帆から放たれる歌声は、気持ちいいほど伸びやかで、“ここまで届いてほしい“という期待を遥かに超えてくる爽快感がたまらない。到達した瞬間、全身の毛穴がブワッと隆起し、強く抱きしめられたように息が詰まるような感覚になる。歌声が魂を揺さぶるというのは、こういうことなのだということを、教えてくれるアーティストのひとりだ。

 だが、「フレア」を聴けば、これまでの突き抜けるような高揚感とは異なる、やさしいメロディや歌の表現になっていることに気づく。〈涙が降れば きっと消えてしまう〉そんな歌い出しは、まるで1人ひっそり泣いていたときに、そっと頬に手を添えられたような、包み込むような温かさ。轟々と燃えるような魂の歌から、ポワッと小さな火がついたようなやわらかな応援歌へ。Superflyの楽曲は、私たちの心に灯す炎の火力調整が自由自在のようだ。

 もちろん、彼女の持ち味である伸びやかな歌声は健在だ。〈ほら 笑うのよ 赤い太陽のように〉の部分では、燦々と輝く太陽をめがけて「うーん」と背伸びをしたような気持ちよさ。軽くストレッチをした後に感じる、あの全身に血が巡ってポカポカとした気分になるのだ。いわば聴く準備体操。1日のスタートにもってこいだ。

 主題歌を担当するにあたって、Superflyは「主人公の川原喜美子さんは、自らの窯を開いて独自の信楽焼を見出していく陶芸家。窯をたく炎に対して特別な思いを持っている女性なので、歌詞は炎をテーマに書きました」とコメントを寄せている。

 そして「自分が燃やし続けられる“炎”ってなんだろう。心の炎だ。じゃあ心の炎ってなんだろう。 それはきっと“好奇心“とか、“好き“なことを楽しむ気持ちとか、家族や恋人を“愛する“気持ちだ。日々いろんなことがあるけど、私たちはそういう小さな炎を絶やさないように生きていかなきゃいけないんだ」と、歌詞に込めた想いも語っている。さらに「フレア」のタイトルには、炎(flare)と自己表現・才能(flair)の2つの意味が込められているとも。何かに、そして誰かに、自分自身のエネルギーを注ぎ込み、命を燃やすということ。それこそが「生きる」ことの本質だ。

 実は、この作品には喜美子とSuperflyのみならず、多くの女性たちの“フレア“が熱を帯びている。製作統括・内田ゆき、演出・中島由貴、語り・中條誠子アナウンサー、作・水橋文美江、音楽・冬野ユミ、そしてヒロイン・戸田恵梨香……と、いずれも着実にキャリアを重ねてきた面々。小さいころから絵を描くのが好きだった喜美子のように、“好き“という心の炎を絶やすことなく、生業を手に入れた人ばかりだ。喜美子の物語に共感し、愛情もひとしおだろう。

 「人の心を動かすのは、作品じゃない。人の心だよ。作った人の心が作品を通して、こちらの心を動かす」とは、佐藤隆太演じる草間宗一郎が、幼い喜美子に諭した言葉だ。まさに彼女たちの心が、このドラマを、この楽曲を通して、私たちの心を動かす。朝ドラを作りあげる愛情の炎が、全国の視聴者に分火されていくイメージだ。そして1人ひとりが、そのポジティブな炎を大切に燃やし続けられるように。この曲を聴いていると、そう願わずにはいられない。(佐藤結衣)

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