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『シャーロック』第3話と『グロリア・スコット号』の共通点 「守谷=モリアーティ」も登場?

リアルサウンド

19/10/22(火) 6:10

 空き家で見つかった死体と、そこから浮かび上がる5年前の“地面師詐欺”事件。前提として頭に入れておきたいのは、この“地面師詐欺”というあまり聞き慣れないフレーズ。端的に言えば土地などの不動産の持ち主のふりをして勝手にそれを転売するという手口で、序盤で獅子雄(ディーン・フジオカ)が語るように何年も人が寄り付かなくなった空き家が増え、さらに地価が上がっている東京では近年被害が増加してきているようだ。

参考:ディーン・フジオカは“ロマン”を体現する 『シャーロック』など古典文学原作ドラマにハマる理由

 10月21日に放送されたフジテレビ系列月9ドラマ『シャーロック アントールド・ストーリーズ』では、この時事ネタとも言える地面師詐欺事件に殺人事件を絡めながら、『シャーロック・ホームズ』の要素も織り交ぜていく。1時間の放送に収めるにはあまりにも濃密な情報量のエピソードとなった。

 これまでの前2話では、それぞれ『六つのナポレオン』の「アバネティ家の恐るべき事件」と『ボヘミアの醜聞』の「ダーリントンの替え玉事件」と明確に“語られざる事件”がモチーフになっていると一目でわかる展開が用意されていたが、今回は少々それがわかりづらい。おそらくは、事前に本ドラマの中で扱うことが明らかにされていた5つの“語られざる事件”のひとつであった『オレンジの種5つ』の中に登場する「タンカーヴィル・クラブの醜聞事件」がモチーフになっているのではないだろうかと考えられる。原作では、この「タンカーヴィル・クラブの醜聞事件」は序盤の会話の中で登場していた。

 「お噂はかねがね、ホームズ先生。お話をプレンダギャスト少佐から。先生はあの方をタンカヴィル倶楽部の醜聞からお救いになったとか」「その通り、少佐はトランプでイカサマの濡れ衣を着せられた」(引用:青空文庫/加藤朝鳥訳・大久保ゆう改訳)。

 この『オレンジの種5つ』の事件は犯罪組織が絡んでくる事件であるということや、今回参考人として獅子雄たちが接触し、周囲からの疑念が晴れる人物の名前がどことなくプレンダギャスト(翻訳によっては「プレンダーガスト」と訳されているものもある)をもじったように見える“古田和人”だったりといった共通点が見受けられるが、どこか繋がりが弱い。

 と、ここでもうひとつ異なるエピソードが浮かび上がってくる。それは『シャーロック・ホームズの思い出』に収録されている『グロリア・スコット号』だ。事件現場の空き家にあるステンドグラスに、被害者が黒幕を暴く証拠の写真を残した木箱など、たびたびシンボリックに登場する帆船。そしてかつて乗っていた船で知り合った人物から犯罪に誘われたというくだりも共通しているといえよう。

 そこに登場する犯罪者の男の名前もまたプレンダギャスト。しかもこの人物、巧妙な詐欺の手口で莫大な金を巻き上げた人物というのだから今回のエピソードと直接的に結びつくわけだ。いずれにしても、2人のプレンダギャストの名前から、劇中に登場する不動産会社の「プレンターハウス」がきているというわけだ。

 また、今回の事件には重要な黒幕の名前が登場する。正体不明の人物として、名前だけ浮かび上がるその人物の名前は“守谷”。言うまでもなく、シャーロック・ホームズの宿敵として知られるジェームズ・モリアーティ教授に当たる人物とみて間違いない。ラストで守谷という存在に獅子雄が強烈に惹かれはじめていることを若宮(岩田剛典)が見抜くくだりから考えるに、今後の本ドラマの向かう先が早くも定まったと判断してもいいのではないだろうか。(久保田和馬)

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