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Floating Points、Underworld、畠山地平……小野島大が選ぶエレクトロニックな新譜9選

リアルサウンド

19/10/27(日) 8:00

 UKテクノ〜エレクトロニカの最高峰フローティング・ポインツ(Floating Points)の4年ぶり2作目が『クラッシュ(Crush)』(Ninja Tune/Beatink)。前作はディープハウス、ジャズ、ダウンテンポエレクトロニカ、R&B、ブラジル音楽からクラシックまで複合したリスニングアルバムでしたが、本作はダンスミュージックのDJである自分の原点に戻るかのようなフロアコンシャスな作品となっています。生楽器と電子楽器を巧みにミクスチャーしながらもスケールが大きく緻密で、しかも躍動感のあるドラマティックな世界を構築。聴けば聴くほど、その完成度の高さに舌を巻く大傑作です。これが現代テクノの最高峰。音の良さも特筆もの。できるだけ良いオーディオで聴きましょう。

Floating Points – Last Bloom (Official Video)
Floating Points – Anasickmodular (Official Video)

 カナダ拠点のプロデューサー、ジャック・グリーン(Jacques Greene)の2年ぶり新作が『ドーン・コーラス(Dawn Chorus)』(LuckyMe/Beatink)。レイヴィでファンタジックでヒプノティックなディープハウスは素晴らしい。前作よりもアンビエント〜チルアウト色が強まっていますが、フロアアンセムとしてもツボを心得ています。

Jacques Greene – Do it Without You
Jacques Greene – Let Go ft Rochelle Jordan

 デトロイトのベテラン、元UR(Underground Resistance)のスキャン7(Scan 7)の新作が『Between Worlds』(Deeptrax)。グルーヴィでファンキーで叙情的なオールドスクールデトロイトテクノの最高峰。この心地よさに抗えるテクノファンは少ないでしょう。バイナルと限定100枚のCD、及びDLのみで、ストリーミングはない模様。(bandcampでの試聴はこちら

 アンダーワールド(Underworld)は昨年11月から毎週木曜日にWeb上で新曲を映像つきで発表する(つまり毎週新曲のMVを公開する)プロジェクト『DRIFT』をやっていますが、その総まとめとなるCDが『DRIFT Series 1』(Smith Hyde Production/Beatink。現在までに発表されている全曲の音源と映像、さらに未発表曲を加えてCD7枚とブルーレイをセットにしたボックスセットが『Drift Series 1Box Set)』で、そこからさわりだけ抜粋してCD2枚に凝縮したのが『Drift Series 1 – Sampler Edition』(いずれも11月1日発売)。アンダーワールドの集大成であり、新しい境地の開拓であり、かつ隠された一面をすべて明らかにするような楽曲の数々。彼ららしいトランシーなダンストラック、アシッドなテクノ、チルなアンビエントや音響エレクトロニカ風なもの、叙情的なバラード、40分を超える大作など驚くほど多彩です。全体にダークなトーンのミニマルなテクノが多いのは古いファンとして嬉しいところ。

 すべての曲と映像は彼らの公式サイトや各ストリーミングサービスで聴けます。(Underworld / Drift 公式サイトはこちら)

  FKAツイッグス(FKA twigs)の衝撃的だったデビューアルバム『LP1』から、なんと5年ぶり新作『MAGDALENE』(Young Turks/Beatink  11月8日発売)。「胸が張り裂けるような悲痛」「私が最も醜くて混乱していて壊れてしまっている時に、このアルバムを作った」と彼女自身がコメントするように、かつてなくエモーショナルでディープなフィーリングに満たされた1作。どちらかといえば感情的というよりは理知的でスタイリッシュなアート性が身上のアーティストだけに衝撃的。MVもヤバすぎです。

FKA twigs – home with you
FKA twigs – holy terrain feat. Future
FKA twigs – Cellophane

 今月はアンビエントアルバムでいくつか秀作があります。坂本龍一のリミックスで知られるLAのブライアン・アレン・サイモンとシャンタル・チャドウィックによるデュオ、ペトラ(Pétra)の1stアルバム『Aunis』(Injazero Records)。ライヒ的なミニマリズムによるディープなモダンアンビエントです。聴くうちフッと意識が遠ざかる感じの夢幻的なサウンドスケープは、どこまで行っても果てのない深海に潜るような感覚。

 ベルギーのデュオ・Suumhowの2作目『Secuund』(n5MD)。こっちはちょっとIDM〜エレクトロニカ寄りのアンビエントで、ビートは鋭くインダストリアルなノイズも聴けますが、叙情的でメロディアスな上モノとの対照が劇的で美しい。一番近いのは初期のボーズ・オブ・カナダ(Boards of Canada)やオウテカ(Autechre)、エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)でしょうか。

Suumhow – Bora Bora (Official)
Suumhow – Secuund \\: Official Trailer

 最近注目の集まる日本のアンビエントミュージックシーンから2枚。2006年のデビュー以来さまざまなレーベルからアルバムをリリース、ミックス〜マスタリングエンジニアとしても君島大空や元ちとせ、岡田拓郎等を手がけ注目を集める畠山地平の『Forgotten Hill』(Room40)。同レーベルからの5作目ですが、今回は奈良の明日香村の古墳や王墓を訪れインスピレーションを受けて制作されたという作品。深いリバーブの中にいつまでも反響し続ける淡いギターの音色が本当に美しいアンビエント〜ドローン。さまざまにイマジネーションが広がるアルバムです。素晴らしい。

Chihei Hatakeyama – Forgotten Hill

  兵庫出身の米村研吾によるソロプロジェクト、スリープランド(Sleepland)によるアルバムが『Out Od Hue』(Spekk)。冬のベルリンやアウシュビッツ強制収容所を訪ねた時の体験からインスピレーションを受けて制作したそうで、モジュラーシンセとギター中心に作られたドローン音響は、生と死の狭間で揺れ動く不穏でダークで荒れ果てた心象風景を映し出します。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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