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『スカーレット』武志が見つけた人生の指針 喜美子のように自身の航路を見い出せるか

リアルサウンド

20/2/13(木) 12:15

 早くも息子の武志(伊藤健太郎)が大学を卒業し、初めて二人で居酒屋で飲み交わした喜美子(戸田恵梨香)。みんなお馴染みの赤松でだ。そこで喜美子は武志から、彼女がかつて憧れていたキャンパスライフを聞き、疑似体験をさせてもらうこととなった。

 母であるマツ(富田靖子)が亡くなり、広い家に一人で暮らしている喜美子はやはり寂しそうに見える。武志が戻ってきたことで、また賑やかになりそうだと思っていたが、そうはならないのだ。連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第112話では、市議会議員になったちや子(水野美紀)が喜美子の家に一晩泊まることになった。

【写真】絵を描く武志

 武志は京都の美大を卒業したわけだが、信楽に戻ってきたのには、どうやら理由があるらしい。それは、大学で出会った先生・掛井武蔵丸(尾上寛之)が窯業研究所で釉薬の研究をするからで、武志は彼を追ってきたようだ。どんな世界でも、憧れ、尊敬できる人物がいるというのは素晴らしい。それは人生の指針となり、生きる活力の源ともなるのだろう。喜美子もこれまでに、大阪の大久保さん(三林京子)やジョージ藤川(西川貴教)、絵付師のフカ先生(イッセー尾形)、そして元夫の八郎(松下洸平)などの存在から強い影響を受けてきた。その先で、喜美子は“穴窯”という自身の航路を見い出したのだ。武志の場合は、いまようやくスタートラインに立ったというところ。母への尊敬は忘れず、すでに進むべき道を自覚しているのだから、何も心配はいらないはずだ。

 そして武志は、一人暮らしも始めるのだという。せっかく実家があるものの、やはり彼は自立心が人一倍強いのだろう。そのあたりも喜美子と似ている。彼の成長ぶりは微笑ましいが、やっと母子が一緒に暮らせると思っていたのに、一人のときの喜美子は寂しそうだ。

 そんな喜美子の家に、市議会議員になったちや子が一晩泊まることに。そこで喜美子は、大きく変わった自身の人生に思いを馳せる。かつて大阪時代では、ストッキング一足を繕って12円の稼ぎだったのが、現在は自身の作品が30万円で売れたりもしてしまう。けれども、喜美子は慢心したりはしない。気持ちはあの頃のままなのだ。いま追いかける対象のいない喜美子にとって、こうやって誰かと過去の自分を顧みてみるのは、大きな価値を持っていそうである。

 さて、いろいろとあったこの第112話だが、もう一つ大きな出来事があった。謎の女性・アンリ(烏丸せつこ)の登場である。彼女は喜美子の思い入れのある作品を30万円で売ってほしいと願い出たが、売るつもりがない喜美子は100万円でなければ売らないと吹っかけてみた。この流れは、先に述べた喜美子の“慢心”というものを試すものにも思える。しかし、喜美子は100万円が欲しいわけではなく、100万円なんて大金はさすがに出せないだろうと思ってのことである。ところが、後日アンリは100万円をポンと出してしまう……。果たして彼女は何者なのか。いまの喜美子に影響を与える一人となることは、間違いなさそうだ。

(折田侑駿)

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