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おとな向け映画ガイド

今週の公開作品から、バラエティにとんだ3本をご紹介します。

ぴあ編集部 坂口英明
20/9/6(日)

イラストレーション:高松啓二

今週のロードショー公開は18本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』『ミッドウェイ』『窮鼠はチーズの夢を見る』の3本。中規模公開とミニシアター系の作品が15本です。今回はその中から3本を厳選して、ご紹介します。

『ソニア ナチスの女スパイ』



第二次世界大戦中のスパイ映画です。舞台は北欧のノルウェーとスウェーデン。スウェーデンはコロナ禍にロックダウンをせず、独自な対策で世界の注目を集めていますが、大戦中でも中立を維持し、北欧四国のなかで独自の道を進んだ国でした。

中立国ですから、枢軸国と連合国の両方と外交関係があり、各国の大使館も存続していました。そのため、スウェーデンは両陣営のスパイ活動の中心地となっていたのです。もちろん自国も中立を維持するべく、さかんに諜報活動を行います。その犠牲になったのが、この映画の主役、隣国ノルウェーの女優ソニアです。

ノルウェーは、『ヒトラーに屈しなかった国王』に描かれたように、1940年の4月、デンマークとともにドイツに侵略されます。数カ月は抵抗するのですが、最終的に国王はロンドンに脱出し、亡命政権を作り、レジスタンス活動を指揮します。国内は傀儡政権が形だけ存在、実質はナチスの国家弁務官が統治しているのです。

ソニア(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は、ノルウェーとスウェーデンの両国で女優活動をしています。最初は、プロパガンダ映画への出演依頼も断るほどナチスと距離をおいていたのですが、レジスタンスの罪で強制収容所に入れられた父親を救出してくれるというスウェーデンの諜報機関の約束を信じ、スパイとなりナチスへ接近します。魅惑的な彼女はやがてナチスの国家弁務官の寵愛を受けることに成功しますが、逆にナチスからもスウェーデン国内でのスパイ行為を強要され……。

時代に翻弄される女優の悲劇。派手な活劇シーンはありませんがとてもドラマチックです。華やかな芸能界を背景に、様々な組織が入り乱れ、思いもよらない展開が待っています。ラブ・アフェアもあり、エンタテインメント性の高い映画です。

『チィファの手紙』



とても繊細に、ていねいに作られています。プロデュースを『ラヴソング』などのピーター・チャンがつとめ、中国人スタッフのなかに入り、ローカライズに気を配った成果は、「外国人で初めてちゃんと中国映画を撮ることのできた映画監督」と中国の有名トーク番組の司会者が称したことでもわかります。そう、これは岩井俊二監督による中国映画なのです。

主演はジョウ・シュン(周迅)、チャン・ツィイーらと中国四大女優のひとりとよばれ、いまや人気、実力とも中国でトップといっていいでしょう。テーマは、岩井監督らしく初恋とラブレター。出世作『Love Letter』は中国でも人気のある作品ですし、独特な世界観、リリシズムにはファンが沢山います。そして、ネット先進国の中国でも、郵便による文通というのは、逆にロマンチックにうつったのかもしれません。

主人公のチィファは40代の主婦。亡くなった姉の死を伝えようと出席した同窓会で、姉と間違えられ、スピーチまですることになります。姉は美人で頭もよく、みんなのアイドルだったのです。いたたまれなくなって会場を後にしたチィファを、姉と仲のよかったチャンが追いかけます。それがきっかけで、ふたりの手紙のやりとりが始まり……。最初はスマホでアドレスを交換したふたりが、郵便での文通をすることになったいきさつは映画でみていただくとして。実は、チャンはチィファの憧れの先輩、そして初恋の人。30年ぶりに再会した男女の、めぐり逢いのドラマです。

もとは、韓国のペ・ドゥナを主演に作った『チャンオクの手紙』というショートムービー。それを長編にし、中国・日本それぞれで作ったらどうなるか、そんな発想で始まった作品。日本映画版は今年1月に公開された『ラストレター』です。

私にとっては、懐かしい中国映画の味がしました。でありながら、岩井俊二の世界、でした。

『ミッドウェイ』



真珠湾で手痛い打撃をうけたアメリカが、勢いづく日本軍の攻撃をはね返し、太平洋戦争の流れを変えたミッドウェイ海戦。それをとりあげた正統派の戦争映画大作です。あくまでアメリカが主役ではありますが、監督がドイツ出身のローランド・エメリッヒ。両国を公平な視点で描いています。製作出資しているのはアメリカ、カナダ、そして中国、香港です。

なんと、雪の清澄庭園のシーンから始まります。アメリカ軍の日本駐在武官だったレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)は、山本五十六海軍大将(豊川悦司)と会食し、ふたりで酒を酌み交わします。山本大将はワシントン駐在の武官だったこともあり、親しみをこめ「日本は石油を80%アメリカに依存している。我々を追い込まないでくれ」と英語で話しかけます。

その4年後の1941年。ハワイで太平洋艦隊の情報主任参謀となったレイトンは日本の攻撃を予測するのですが、上層部は受け入れません。アメリカ側は無防備のまま、12月7日(現地時間)、真珠湾に停泊していた太平洋艦隊が日本軍の奇襲にあいます。そこから始まった太平洋戦争。映画は翌42年6月のミッドウェイ海戦まで日米両軍を追います。

アメリカの勝因のひとつは、日本軍のミッドウェイ攻撃を予知できたこと。レイトンを中心とした、情報収集部隊の暗号解読、情報撹乱戦がスリリングです。急降下爆撃機などのパイロットたちも一方の主役。航空母艦、戦艦、駆逐艦、潜水艦と飛行部隊のバトルシーンの迫力はスゴイです。言っちゃいけないのかもですが、こどもの頃のプラモデルファンに戻って楽しめます。

真珠湾の意趣返しのように、42年4月、ドゥーリトル中佐率いるB25爆撃機16機が初めて日本を空爆します。帰りの燃料の余裕なく、爆破を終えたあとは日本を突っ切り中国大陸へ。なるほど、ここで中国の出番がありました。

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