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洒落た歌舞伎舞踊に時代狂言、世話狂言・・・贅沢な狂言建ての歌舞伎座「十月大歌舞伎」

ぴあ

歌舞伎座『十月大歌舞伎』

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大看板から花形、若手まで賑やかな顔ぶれが揃い妍を競う10月の歌舞伎座。演目も、洒落た歌舞伎舞踊に時代狂言、抱腹絶倒の世話狂言と、バランスよく贅沢な狂言建てとなっている。

第一部
一、天竺徳兵衛新噺 小平次外伝
御家追放となった小平次は女房のおとわと故郷の小幡で暮らしていた。ところが小平次が留守の間におとわは馬士の多九郎と不義密通を。ある日、多九郎は邪魔になった小平次を殺そうと毒薬を手に入れる。三代猿之助四十八撰の内の一つで、実在の人物天竺徳兵衛を描いた物語に四世鶴屋南北『彩入御伽草子』の小平次の怪談を取り入れた歌舞伎らしい荒唐無稽さ溢れる一本だ。今回は小平次の物語に焦点をあて、早替り、幽霊の仕掛けを盛り込んでスピーディーに展開していく。

二、俄獅子

多くの人々で賑わう江戸の吉原の様子を描いた長唄舞踊だ。洒落た歌詞に合わせ、粋でいなせな鳶頭に華やかな芸者が登場。芸者や太鼓持ちが仮装をし踊りながら練り歩いた、吉原の三大行事のひとつ「吉原俄」を思わせる。江戸の廓の風情と獅子物の面白さを味わいたい。

第二部
一、時平の七笑
平安時代。左大臣の藤原時平は謀反の疑いをかけられた右大臣の菅原道真をかばうが、ついに道真謀反の証拠が。道真は時平に天皇の守護を頼み去っていくが、ひとりになった途端時平は、こらえきれずに笑い出し……。『菅原伝授手習鑑』でも敵役として描かれる藤原時平が、ここでは前半いかにも善人といった様子で登場する。ひとり肩をふるわせてさまざまな笑いを見せる場面がみどころのひとつとなる。

二、太刀盗人
田舎者の万兵衛から、黄金造りの太刀を盗むすっぱの九郎兵衛。万兵衛が騒ぎ立てるが、太刀は自分のものだと言い合う。本当の持ち主を見極めるため問答に。九郎兵衛は先に問に答える万兵衛の様子をこっそり盗み聞きするのだが……。「松羽目物」のひとつで、田舎者の万兵衛とスリの九郎兵衛のふたりが一拍ずつ遅れて踊る趣向にワクワクさせられる。

第三部
一、松竹梅湯島掛額
本郷駒込の吉祥院へ、「紅長(べんちょう)」の名で知られる紅屋長兵衛たちが木曽の軍勢から逃れてくる。一方八百屋お七は小姓吉三郎との叶わぬ恋を嘆いている。紅長はお七をつけ狙う源範頼の家来からお七を匿うため欄間へ隠してやる。だが雪の夜、吉三郎に会いたい一心で、お七は火の見櫓へ上り木戸を開けさせるために鐘を叩く。紅長は、かけると身体がぐにゃぐにゃになる“お土砂”を使ってお七の恋を助ける。この「吉祥院お土砂の場」に抱腹絶倒だ。「火の見櫓の場」ではお七が「人形振り」で吉三郎への思いの丈を表現する。

二、喜撰
桜満開の京都へ現れた喜撰法師。法師は茶汲み女お梶に見とれ二人のクドキに。ほろ酔い気分の喜撰は迎えにやってきた大勢の所化たちと賑やかに踊り庵に帰っていく。『六歌仙容彩』は天保2(1831)年初演の変化舞踊。なかでも「喜撰」は、桜の枝を錫杖に見立ててのチョボクレや住吉踊りなど、洒脱で軽やかさが人気の舞踊だ。

文:五十川晶子

『十月大歌舞伎』
2021年10月2日(土)~2021年10月27日(水)
会場:東京・歌舞伎座

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