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タイムスリップしたような古き良き薫りが味わえる ミュージカル『マイ・フェア・レディ』ゲネプロレポート

ぴあ

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』より 写真提供/東宝演劇部

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1963年に、日本で初めて翻訳上演されたブロードウェイ・ミュージカルとして知られる『マイ・フェア・レディ』。1990年より長らく主人公イライザ役を当たり役とした大地真央が卒業後の2013年、G2翻訳・訳詞・演出による新演出版が誕生し、2018年公演では当時宝塚歌劇団を卒業したばかりだった朝夏まなと、大地イライザの大ファンだったという神田沙也加の二人がイライザ役を務めた。3年後の今年、同じ朝夏&神田のWキャストにより、2009年以来となる帝国劇場公演が実現。初日を控えて行われたゲネプロのうち、朝夏・別所哲也(ヒギンズ教授役)・寺西拓人(フレディ役)出演回を取材した。

物語の舞台は20世紀初頭のロンドン。言語学者のヒギンズは、紳士淑女に花を売っている貧しい下町娘のイライザを見かけ、その激しい訛りに興味を持つ。自分なら、6か月以内にイライザを宮殿の舞踏会で踊る貴婦人に仕立てて見せる、と豪語するヒギンズ。その場の思い付きだったが、花屋の店員になりたいイライザが翌日ヒギンズの家を訪れたことにより、猛特訓の日々が幕を開ける。奮闘の末、ついに正しい発音をマスターしたイライザを、ヒギンズは上流社会の社交場であるアスコット競馬場へ連れて行くのだが――。

イギリスの階級社会を皮肉ったところのある原作戯曲(バーナード・ショー『ピグマリオン』)とは、結末が違うこともあって元々味わいの異なるミュージカル版だが、日本で、しかも今上演されるとあって、見どころは物語よりも音楽やステージング、何よりキャストのパフォーマンス。生のオーケストラや大がかりなセットがクラシカルな雰囲気を盛り上げる演出には、“ミュージカルの殿堂”たる帝国劇場がやはり良く似合い、タイムスリップしたような古き良き薫りが味わえる。

朝夏と別所の生き生きとした演技が、瑞々しいラブストーリーとしても、イライザとヒギンズそれぞれの成長物語としても楽しめる舞台を生んでいた。また、浦井健治や平方元基らが演じたことで若手ミュージカル俳優の登龍門的な役となった、フレディに初めて挑んだ寺西も好演。シルクハットを爽やかに被りこなし、イライザへの一途な想いを楽しそうに表現して魅力的だった。

それにしても、本作と言いシアタークリエで公演中の『グリース』と言い、どちらも映画版が広く知られる作品だが、東宝はなんと映画化に先駆けて翻訳上演を実現している。また間もなく大阪公演が始まる『オリバー!』も、日本初上陸は東宝が1968年に招聘したブロードウェイ・キャスト版であり、その慧眼と行動力には驚かされるばかり。日本ミュージカルの礎を作った東宝の功績に思いを馳せながら観劇する、というのも一興かもしれない。

取材・文:町田麻子 写真提供/東宝演劇部

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』
2021年11月14日(日)~2021年11月28日(日)
会場:東京・帝国劇場 ほか、地方公演あり

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