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『私の家政夫ナギサさん』で描かれた様々な“決断” 新たな呪いの発動も

リアルサウンド

20/8/5(水) 10:20

「立派なお仕事ね。家政夫/家政婦さんって」

 家事によって、家族が救われるということ。家事代行サービスが、誰でもできる雑用ではなく、プロフェッショナルの仕事であること。それを、最も家事に苦手意識を持ち、専業主婦である自分に劣等感を持っていた母・美登里(草刈民代)が明言することで、大きな呪いがひとつ解けた瞬間のように見えた。

参考:趣里、『私の家政夫ナギサさん』で欠かせない立ち位置に たくましく生きる唯の姿

 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)第5話。メイ(多部未華子)とナギサさん(大森南朋)は、メイの父・茂(光石研)の還暦祝いパーティーをキッカケに、3年も意地を張り合っている母・美登里(草刈民代)と妹・唯(趣里)の再会をもくろむ。

 秘密の作戦を思いついたメイは、とっさにナギサさんに耳打ち。すると、ナギサさんも自分のアイデアもコソコソと提案。「部屋に2人しかいないのに」と笑い合うシーンは実に微笑ましく、2人の相性の良さを感じさせる幕開けとなった。

 メイの作戦とは、還暦祝いのパーティーにナギサさんのアシスタント家政婦として唯を実家に潜入させること。サングラス&マスクで変装はバッチリ(?)。さすがに美登里も存在に気づくも、やはり自分からは折れるなんてゴメンだと言わんばかりに知らんぷりを決め込む。

 だが、思い出の味を再現したナギサさんの料理に、懐かしい写真たちが次々と出てくるムービーに、意固地になっていた美登里の心が段々と解けていく。そして、ナギサさんからアシスタント(の唯)も、家事に役立つ数々の専門資格を取得していることを聞くと、その勤勉さを褒め、間接的に“今の唯を認めている”という意思表示をするのだった。

 さらに茂の口から、なぜ美登里が「仕事も家事も両立できる女性になれ」と言い続けるようになったのかという事情が語られる。かつて茂が入院し、収入面でも、家事の面でも不安な思いをさせてしまったこと。以来、もし娘たちが結婚して、一家の大黒柱に“もしも”の事態が起きても、自分のように不安なく生きていけるように。そんな気持ちから、つい厳しく育ててきてしまったのだ、と。

 結果的に美登里を嫌われ役にさせてしまったと頭を下げる茂。すると美登里は「嫌われ者だった?」と明るく返す。メイも「“やればできる”が呪いの呪文だった」と素直に話すと美登里は「何よ、呪いの呪文って」と、その言葉がメイを追い詰めていたことを初めて自覚する。そして、美登里は唯の家族を呼んで「どれだけ強情かを伝えないと」と言って、笑いを誘うのだった。

 この風通しの良さこそが、現代女性たちの呪いを解くカギなのかもしれない。家事とは、炊事、洗濯、掃除などの作業を通じて、家族にとって居心地のいい空間を作り出すことそのもの。ならば、家族のうち誰がそれらを手がけてもいいはず。なのに、いまも女性だから家事をしなければという感覚にとらわれている人が少なくない。

 性別やポジションではなく、家の中を快適にするのは、その家に集うメンバーみんなのミッションだ。そして、まるで家族の問題は、散らかった部屋と同じ。放置してしまうと、どこから手をつけたらいいのかわからなくなる。

 だから、もし自分で片付ける方法がわからなくなってしまったら、プロを頼ってみるのも一つの手。整頓されてお互いの表情がよく見えるようになったら、自分の思いを素直に伝えるのだ。心に決めたことを告げるのは、とても勇気がいる。もちろん、その発言でまた家の中は散らかることになる。それが、生活をするということなのだから。

 そして、第5話で印象的だったのは「決断」というフレーズだ。特に今回はメイの周囲にいる“おじさん”たちが次々と決断をしていく。副支店長の松平(平山祐介)は栄転を受け入れ、馬場(水澤紳吾)は育休取得を決め、そして茂も先陣を切って思ったことを言える家族を作ろうと宣言する。さらに、ナギサさんもメイに過去を明かすことに……。

 決断の先には、新しい世界が待っている。時間は不可逆。もう決断前の世界には戻れない。ナギサさんに、メイが就活で落ちた大手企業のMR経験が発覚したことで、2人の関係はどう変化するのか。非常に楽しみな展開だ。

 また、メイ自身も結婚についての決断を真剣しなければならないタイミング。美登里と唯の確執が解消された途端、今度は「次はメイね」の呪いが発動してしまった。人生は決断の連続であり、呪いとの戦いには終わりがなさそうだ。家事に終わりがないようにしんどい毎日だが、それでも悔いなく生きるためのヒントがきっとあるはず。来週もナギサさんの笑顔に癒やされながら、一緒に整理をしていこう。

(文=佐藤結衣)

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