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鈴木拡樹がフランツ・カフカの生き方から学んだこと 「マイナスから考えるのは悪いことではない」

リアルサウンド

19/9/12(木) 8:00

 「変身」「審判」などで知られる小説家フランツ・カフカが、なぜか現代の東京で生活しあらゆる事象に絶望するというコメディドラマ『カフカの東京絶望日記』。今年4月からYouTubeにて無料配信されていたが、9月12日よりMBS「ドラマ特区」枠にて、新エピソードとともに地上波放送される。

 フランツ・カフカ役で主演を務めたのは『刀剣乱舞』シリーズや、アニメ・舞台『どろろ』などで活躍する人気俳優・鈴木拡樹。今年は、『映画刀剣乱舞-継承-』で主演を務め、手塚治虫の同名作品を50年ぶりにアニメ化した『どろろ』(TOKYO MXほか)にも声優として参加するなど、舞台を中心に幅広い活躍を見せている。

 鈴木にとって、本作は地上波ドラマ初主演。撮影エピソードや自身の演技との向き合い方、そして今後に活動についてまで話を聞いた。

■「滑稽さを大事にできたら」

ーーYouTube配信から始まった本作ですが、地上波ドラマになると聞いた時はどう感じましたか?

鈴木拡樹(以下、鈴木):1話を撮っている時に地上波ドラマ化したいねという話があったので、ついに現実になったなと。地上波分の全6話も撮り終わりまして、今は「よし、この作品で地上波に挑戦だ!」という気持ちで、あとはどう編集されてどんな反響が生まれるのか楽しみです。

ーー地上波ドラマ初主演となりますが、「主演」に挑む心境は?

鈴木:「地上波初主演」という言葉だけ聞くと、ちょっとだけ不安にはなってくるんですが……。でもすごく楽しく撮影もできましたし、いいものが完成し、多くの方に楽しんでもらえるんじゃないかなと。まずは毎週続けて全話観ていただいて、時間的には短いですし、さらっと観られる作品でもあるので、一挙まとめて観ていただける機会もあったら嬉しいですね。

ーーカフカの絶望スイッチが入ると、鈴木さんの演技も身振り手振りが大きくなったり絶叫したりと、オーバーになりますね。

鈴木:今回、作品を通して挑戦した部分や勉強になった部分がとても多かったんです。その中で一番難しかったのは、今おっしゃっていただいた絶望スイッチの部分でした。目の前が真っ白になるくらいの勢いでやらせてもらいましたけれど、映像作品ですので、1回で終わりではなく、リハも含めて何度も繰り返しそのシーンを撮るので。そういう意味では、大変さはありましたね。後半になってくると、もはや自分が何を言っているのかもよくわからない状況に追い込まれまして……(笑)。

ーーここまで振り切った演技をすることはなかなかないですよね。

鈴木:普段はやらないことですからね。舞台上では絶叫したりはあるんですけど、あそこまで解放的になることもないので。心地よくもあり、こうやって大きな声で発言するのはストレス発散になったり、いい側面もあるかもなとは思いましたね。だからと言って、みなさんにやってくださいというわけでもないんですが(笑)。

ーー場所は選んでいただいたほうが良いかもしれませんね(笑)。

鈴木:でも、自分の意見をはっきりと伝えることはとてもいいことだと思うので、そこはおすすめしたいです。

ーーセリフまわしも独特ではありませんでしたか?

鈴木:カフカさんの考え方、感じ取り方は文学的で、それは言葉にも出ていますよね。キャラクターとしても面白いなと思います。自分が持っていない表現を役を通して獲得することができました。

ーー鈴木さんはこれまでの役のイメージもあってか、ゆったりしていて、どんと構えているような印象がありまして。

鈴木:それは半分正解で、半分違っています(笑)。ゆったりはしていますが、どんとはしていません(笑)。

ーーカフカも絶望スイッチが入っていない時は飄々としていますね。

鈴木:カフカさん、スイッチのオン・オフが激しいですよね。その切り替えは芝居においても意識していたところです。絶望スイッチが入ってわーっと喋って、絶望に絶望を重ねるほど、相手にとっては響くものがあって、その滑稽さを大事にできたらと。そこは作品の大きなテーマでもあり、これを成し遂げなければという目標でもありました。だからこそ日常面はよりコメディっぽく、カフカさんが持つ魅力が出るのかなと。

■「完成した映像を見て、ひとしきり笑いましたね(笑)」

ーー絶望しているカフカから周りが希望を感じる、というのは演技においても説得力が求められるのかなと思いました。

鈴木:そうですね。カフカはただ感情のままにぶつけているだけなので、僕はそれがどう相手に響くか分解して、セリフひとつひとつも考えています。でも結局はやってみないとわからなく、直球でやってみるしかなかったというのが本音ですかね。人は千差万別ですから、考えすぎても狙い通りにいくかはわからないので、そこは視聴者のみなさんに委ねたいです。

ーー作品では猫ブームやSNS、承認欲求などがテーマになっており、現代の東京に来たカフカが困惑し、絶望スイッチが入ってしまいます。鈴木さん自身は、それらのテーマはどう受け止めましたか?

鈴木:完成した映像を見て、ひとしきり笑いましたね(笑)。きっとSNSなどに没頭している人たちはハッと気付かされますよね。僕自身もたまに違和感を感じることもありますよ。単純に、パソコンやSNSなどの機械系が苦手で使いこなせていないというのもありますが、一応SNSをやってはいても、なぜそこまでどハマりする人がいるのかはよくわかっていないです(笑)。ただ、そういう考え方だからこそ見つかることもあるんだと思います。

ーーカフカは相当偏屈ですが、ご自身と共通点は?

鈴木:物事をまずマイナスから考えるところですね。マイナスを見つけることによって、プラスに変えていきたいというのがあって。もしかしたらこういうことがあり得るかもしれないという可能性を考えて、それを避けるための方法を考えることが性格のベースになっていると思います。

ーーそれは芝居においても同じですか?

鈴木:そうですね。芝居においても納得いくまで考えてみようとするのは、そういうところからきていると思います。マイナスから考えるのは悪いことではないと思いますね。

ーー舞台を中心に、映画・ドラマ、そして声優など、活動の幅も広げていますが、新しいことに挑戦する時はワクワクするのか、それとも不安が強いのか、どちらでしょうか。

鈴木:半々くらいですかね。「用意スタート」と言われる前までには不安の要素は限りなくゼロにしておきたいとは思っています。実際にやるまでは不安で、放送されるとようやく気持ちが楽になるんですけど、それまでが地獄です(笑)。映像作品は、後から確認できるからこそへこむこともあります。自分のイメージと違ったり、もっと画角を把握していたら表現も変わったのかなとか。そういうところで勉強になったりするので、あながちへこんだからと言って悪いわけでもないと思いますが、その瞬間はただただ厳しい顔をしています(笑)。

ーー今後の活動についてはどう考えていらっしゃいますか?

鈴木:役者としての僕の考え方としては、舞台の魅力を知ってこの世界に足を踏み入れた身なので、舞台を主軸にしたいなとは考えています。ただ、幅広くやっていくことは自分の財産にもなるし、新たな発見もあるので、その先でふいに自分の道が見つかると良いのかなと今は思っています。(取材・文=若田悠希)

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