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“日プ”&“虹プロ”人気、『愛の不時着』ヒット……韓流ブームは単発では終わらないものに 「第4次」に至るまでを解説

リアルサウンド

20/11/16(月) 6:00

 第37回目となる「現代用語の基礎知識」選のユーキャン新語・流行語大賞の2020年のノミネート語30語が発表され、その中に「愛の不時着/第4次韓流ブーム」が選ばれた。韓国カルチャーの流行を意味するいわゆる「韓流ブーム」という言葉が日本でも使われるようになってから10年以上が経つが、日本で過去どのような「ブーム」が起こってきたのかを振り返ってみたい。

 最初に日本で「韓流ブーム」という言葉が使われるようになったのは、2003年から2004年にかけてNHK-BSで放送されたドラマ『冬のソナタ』のヒットではないだろうか。当初衛星チャンネルで放映されていたが、視聴者からの人気を経て地上波で放送されるようになり、同時にヒロインであるチェ・ジウの思い人を演じたペ・ヨンジュンの熱狂的ファンダムが中高年層を中心に形成された。「ヨン様現象」としてメディアからも注目を受け、東京ドームでの単独ファンミーティングを行ったほどだった。

 続いて「第2次韓流ブーム」とメディアで言われたのが、2010年前後から起こった「K-POPブーム」である。KARAや少女時代を中心に盛り上がったこの時期の特徴は、YouTubeやmixi、黎明期のTwitterといったインターネットをベースに広がっていった点だろう。最初の韓流ブームのきっかけとなったドラマの場合、BSやCSといった有料チャンネルを中心に多く放映されていたこともありムーブメントの中心層の年齢は高めだったが、K-POPの場合は無料で動画を見ることのできるYouTubeが2007年に日本でもサービス開始されたことで、当時インターネットユーザーの中心だった20代前後の若年層を中心に広まっていった点が第一次ブームとは異なると言えるのではないだろうか。

 実際、K-POPが最初に世界的に注目を受けるようになった大きなきっかけも、一説では2007年ごろにYouTubeで流行したWonder Girls「Tell Me」のダンスチャレンジと言われている。当時のK-POPではシグネチャーポーズの入った振付のダンスに、同じ言葉を繰り返すというような反復サビが爆発的な流行を見せていたが、これらの特徴は一般人でも「真似してダンスしたくなる」要素が多く含まれていた。今でいうTikTokのダンスチャレンジのような流れがYouTubeでも過去に起こっており、KARA「Mr.」(2009年、日本語版は2010年)、SUPER JUNIOR「SORRY, SORRY」(2009年)、少女時代「Gee」(2009年、日本語版は2010年)などもYouTubeによって世界的な知名度を上げた楽曲と言えるだろう。ちょうど2000年代からSMエンターテインメントは2001年日本デビューのBoAを先陣に東方神起、YGエンターテインメントはSE7EN、JYPエンターテインメントはピ(Rain)といった本国で人気を得ていた看板アーティストをそれぞれ2005〜2006年に日本でデビューさせており、第一次韓流ブームをきっかけに韓国のエンターテインメントに興味を持った人たちだけではなく、お茶の間にまで浸透する下地はできていたと言えるのではないだろうか。以降、先述の少女時代やKARAだけではなくBIGBANG・2NE1・2PM・SHINeeなど韓国内ですでにある程度人気も知名度も得たアイドル・アーティストがこの時期から続々と日本でも活動を行うようになっていった。

 「ブーム」と言えるほどのマスコミ露出はおさまって以降もK-POPアーティストの日本進出は継続的に続いてゆき、アリーナツアーやドーム公演、日本国内の大型フェスへの出演などは珍しいものではなくなっていった。韓国のドラマもBSやCSでは毎日のように放送されるようになり、サブカルチャージャンルの一種としてのK-POPや韓国ドラマの定着と言えるだろう。これらの「安定期」を超えて「第3次韓流ブーム」というフレーズが使われるようになったきっかけは、TWICEのデビューではないだろうか。デビューサバイバルを経てデビューしたこともあり、日本のK-POPファンの間でも2015年の韓国デビュー前から大きな注目を集めていたが、ポジティブで親しみやすいイメージやパフォーマンスと「9人」という少女時代を想起させる人数でもあり、日本人メンバーを3人含む構成は、日本でも老若男女を問わず人気を集めることになった。TWICEが日本デビューした2017年は、BTSがアメリカのビルボード・ミュージック・アワードのTop Social Artistを受賞し、レッドカーペットデビューを決めた年でもある。また、韓国でのアイドル達の仕事の範囲が音楽パフォーマンスだけではなくファッションモデルや俳優としての映画・ドラマ出演、ミュージカルなどにまで範囲が広がると同時に、K-POP人気との相乗効果で各カルチャーにまで広がっていった。ハン・ガンによる小説『菜食主義者』がでブッカー賞を受賞したことがニュースになったり、『82年生まれ、キム・ジヨン』が韓国でベストセラーになってK-POPアイドルを通して日本のSNS上でも話題になったのも、2016年から2017年にかけてのことだった。

 この第3次ブームのベースになったのは、やはりスマートフォンとTwitterをはじめとするSNSから一般層への普及だろう。上記の相乗効果も、出演作や逆に出演していた俳優についてすぐに調べてファンや情報同士を繋げられるというSNSの特性によって、第2次ブームよりも早く広い拡散が可能だったと言える。メイクやコスメなどはすでに第2次ブームの頃から“オルチャンメイク”などで知られていたが、SNSならではの「コスメ垢(アカウント)」「美容垢(アカウント)」などの存在も、韓国メイクやコスメのイメージを定着させる要因にもなったのではないだろうか。

 コスメやファッション、雑貨やカフェ・スイーツなどいわゆる「韓国っぽ」いイメージは今や若年層を中心に新しい(アラサー以上には懐かしい感性でもある)かわいさとして定着しつつあり、まだ「第3次」の余韻も冷めやらない2020年に、Netflixユーザーを中心にSNS経由の口コミで人気が広がっていったのが、今ではTVの人気バラエティのパロディコントでも見かけるドラマ、『愛の不時着』『梨泰院クラス』だ。両作とも韓国でも大ヒットした作品であり、『梨泰院クラス』の場合OSTにK-POPアーティストが参加していたことで元々人気になる素地はあったと言えるが、やはりNetflixで配信されるようになった影響は大きいだろう。ちょうどCOVID-19の流行による「家で楽しめるコンテンツ」の需要が広がったタイミングもあり、スマホやSNSの普及だけではなく、有料動画配信サイトが定着しつつある時代の新しい流行の形と言えるだろう。

 直前にアカデミー賞で作品賞・監督賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』が、受賞前からSNSでの口コミの後押しを受けて大ヒットしたのも「韓国エンタメ」に対する興味の追い風になった部分もあるかもしれないが、『パラサイト』以前の2014年の『新しき世界』以降、特にSNSではファンダムと呼べるくらいの規模の「韓国映画クラスタ」が形成されていたように、すべての「韓流ブーム」はすでに単発のものではなくなっている。韓国コンテンツを日本流のやり方で取り入れたとも言える『PRODUCE 101 JAPAN』や『Nizi Project』の人気も、過去の流行やジャンル定着によってある程度のカルチャー需要のベースがあったからこそ、一般層にまで波及するパワーを持っていたのだろう。すでに「韓国カルチャー」は広範囲にサブカルチャーとしてある程度日本では定着しており、その中から一般層にまで飛び火する話題作が出た時にメディアで「ブーム」として扱われるということではないだろうか。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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