このコラムで、たびたび私がイラッとした話を紹介していますけど、振り返ってみると、30代の頃だったら許せたり見過ごせていたことが、40歳を超えてから、いちいちイライラしたり、引っかかるようになった気がします。本当に些細な事だったりするので、我ながらうんざりすることも。

特に「今日、疲れてんなぁ」とか「なんか気持ちが上がらないなぁ」っていうバッドコンディションの時こそ、イライラする沸点が低いようで。

例えば、あまり眠れず、関節が痛む日なんて特に。朝8時半くらいに仕事の現場へ行くとするじゃないですか。その楽屋には、マネージャーとスタイリストの女の子が先に来ているのですが、朝だからか、ドンヨリと誰も一言も喋らないまま時間が過ぎていくことが。

それぞれがパソコンやスマホで何かしているようなんですが、この時点でイラッ。「少しは気を使って喋りかけたりすればいいのに」とか「私から話さないと話さないつもり？　そっちがその気なら、こっちだってダンマリですから」と謎の対戦モードに入ってしまい。

結局無言タイム継続で、最終的には、耐えられなくてテレビをつけてとりあえず無言を脱出するんだけど。いや、誰も何も悪いことはしてない訳ですよ。それぞれのやるべき事をやってるだけなんで。

でもね、思うんです。マネージャーが、朝8時からパソコンに向かってメールのやり取りをしているのを見て「こんな朝早くから、返さなきゃいけないメールなんてあるか？　豆腐屋さんとやりとりしてんのか？」って。間違いなく「仕事してます」アピールだと思うんだけど。

でも、この事を違うマネージャーに話してみたところ「とりあえず、文面を作っておいて、良い時間になったら送信するんじゃないですか？」と。納得しつつも、「朝からそんなにがむしゃらに仕事しなくても。ブラック企業なのか？」って思ってしまいます。

で、その後、みんなで別の現場へタクシーで移動することがあるのですが、マネージャーもスタイリストの子もタクシーに乗り込んだ途端、頭をガクッと下げてすぐに寝落ちしてしまい。もう意味が分からないです。

よっぽど忙しいのかしら？　私の知らないところで、無茶苦茶働いているのか？　それとも夜遊びでもしてんのか？　これまた、別に車の中で和気あいあいとお喋りしたい訳ではなくて、私からすると意味不明過ぎてイラっとなっちゃうんです。

いや、おかしな事を言っているのは自覚してます。だって、早朝楽屋で、仮にキャッキャキャッキャと盛り上がられても困るし、そのテンションで話かけられても迷惑だし。だから正解はないんです。

でもここ最近は、49歳と言う年齢なのか、多少は、以前より「イラッ」が少な目になってるような気が。マネージャーが朝からパソコンをカチカチやっていても「良いよ、仕事アピールだとしても、やる気を見せるっていいことだよね」と思えたりすることも。まぁ、間違いなく、こちらがコンディションが良い時に限りますがね。

イラっとして、ネチネチした悪い気持ちを持ち続けるのが、本当に無駄な時間でしかない訳ですから。なるべく穏やかに、人に対して優しい眼差しを向けられる人でありたいです。

それには、まずは私がある程度幸せだというグッドコンディションであることが大事。グッドコンディションとは、身体が健康で、仕事が充実していて、素敵なパートナーがいて、綺麗な家に住めて、美味しいお酒が毎日飲めて……

うーん、なかなかの欲深さです。

欲が止まらないうちは、イラッが止まらないのかもしれません。

構成・文：松田義人（deco）

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/