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橋本祥平×杉江大志 1年越しで上演される舞台『デュラララ!!』は「伸びしろしかない!」

ぴあ

橋本祥平×杉江大志 撮影:曽我美芽

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昨年、全公演中止となり、2021年8月より、東京・愛知・大阪の3か所にて改めて上演中の『舞台「デュラララ!!」~円首方足の章~』。成田良悟作、ヤスダスズヒト絵による小説「デュラララ!!」は、2004年に電撃文庫(KADOKAWA)より刊行。TVアニメ化のほかコミカライズ、ゲーム化もされ、大きくメディアミックスされたヒットタイトルだ。舞台版では、主人公・竜ヶ峰帝人を橋本祥平、紀田正臣を杉江大志が演じる。昨年の中止を経て1年越しに上演される本作の見どころや共演してきたお互いの印象を聞いた。

読み合わせでもう「あ、この作品は勝ちました!」と確信しました(橋本)

――原作のアニメや小説をどうご覧になりましたか?

橋本祥平(以下、橋本) すごく不思議な感覚で、もちろんアニメなのでフィクションではあるんですけど、池袋という実在している街がモデルとなっているので、本当にあるんじゃないかと思わせる。カラーギャングなども流行っていたと言いますし、所々リアルな描写もあるので、これはフィクションなのか、リアルなのかと錯覚するような不思議な感覚に陥りました。

杉江大志(以下、杉江) 僕はアニメをリアルタイムで観ていました。僕のアニメを観たときの一番良い感想が「ああ、面白い!」なんですよ。どこがこう面白いな、と考えているよりも、全部他の感想を取っ払って、「ああ、面白い!」と思えるときが一番面白いんですけど、『デュラララ!!』はそんな作品のひとつでした。分析していくと、やっぱりミステリーとして伏線の打ち方と回収の仕方と、ちょっと哲学的でもあり、いろんな視点からの「生きるって何?」みたいなところもあって。そういうところが魅力かなと思いますね。

――昨年は開幕直前で中止になったので、すでに稽古もされていたんですよね?

杉江 そうです。もう最終稽古の2日前くらいだったので、ほぼ完成していました。

――では、稽古を通して、それぞれどんなキャラクターになっていますか?

橋本 僕が演じる竜ヶ峰帝人という役は都会に憧れて田舎から出てきた、色も何もないキャラクターで、だからこそ、何色にも染まる怖さというのは持っている役です。「よく居るよな」という普通の高校生なんですけど、ただ、知れば知るほどというか、物語が進めば進むほど、意外と……。

これは現実でもよくあると思うんですけど、普通の子が一番怖かったり、「この子何かあるよね」というものを持っているキャラクターです。今回の舞台でも周りの濃いキャラクターたちに振り回されて、最後にようやく少し色を出すみたいな。

杉江 去年の段階でも、無色で目立ちたいって言っていたよね。周りに濃い色がいっぱいあるから、色がないことで際立つ、って。色がない主人公って珍しいよね。

橋本 今回もそこはブレずにやっていけたらと思います。

杉江 紀田正臣はどういうキャラかと言われると、うーん……、(アニメで声を担当している)宮野真守さんの真骨頂ですね(笑)。

橋本 確かに(笑)。

杉江 当時の宮野さんの素敵さがギュッと詰まったキャラクターかなと思います。アニメを観ていても、紀田正臣がすごく楽しそうなのはもちろんなんですけど、その中に僕はちょっと宮野さんが楽しそうなのが浮かんだんです。そういう意味では、すごくハードルが高いなと思っていたんですけど、いざ稽古をやってみたら、「もしかしたら、俺って宮野真守さんなのかもしれないな」って思った……というのはちょっと嘘ですけど(笑)、僕は前回稽古をしていて、気持ちがわかりました。紀田正臣を演じるのは楽しいです。

橋本 でも、読み合わせの段階から、大志くんはダントツで生き生きしてたと思います。割とこれまで大志くんの役の印象って王道な主人公的なキャラクターの芝居を演じているのを見ることが多かったので、「ああ、知らない大志くんがまだいるんだ」と思って、普通に「役者さん、すげえ!」って最初に思いました(笑)。読み合わせでもう、「あ、この作品は勝ちました!」と確信しました。

杉江 楽しかったよね。とってもハマり役みたいなものをいただいたということです(笑)。有り難いことです。

普通さを演じられる橋本祥平は帝人のハマり役(杉江)

――今回、キャスティングを見たときにとてもハマり役だと思いました! 橋本さんはもちろん、杉江さんは飄々とした雰囲気がもう脳内再生できるというか。

杉江 みんなハマり役ですね。ヘイヘイ(=橋本)も。帝人をやれる人って少ないと思うんだよね。ヘイヘイの魅力って不思議だなと思うんだけど、ふとした時はアーティスティックでカリスマ性があるんですよ。でも、またふとしたときは、ただの普通の人なんですよ(笑)。それってなかなか共存するものじゃなくて。

それこそ、何かの作品で主役を張るような子って、やっぱり普段からどうしても何かエネルギッシュだったり、パワフルだったり、アーティスティックだったり、普通の人ではない魅力みたいなものがずっと漏れていたりするんですけど、それをスッとなくせる役者なんですよ(笑)。それで、その奥にふんわり見える何とも言えない庇護欲をかき立てる……、みんなが好きになる気持ちがわかりますよ!

橋本 いやいやいや(笑)。

杉江 だから、帝人をやれる人って少ないと思うんですよね、普通さを演じられる人が。それがハマり役のポイントだなと思っています。

橋本 でも今回に関してはやっぱり帝人が活きるのは、紀田くんが暴れれば暴れるほど活きるんです。その爆発力って大志くんはすごくて。台詞とかは同じなんですけど、通し稽古をやっていても毎回別物だったんですよ。それが、毎回新鮮でもいられる。主に(福島雪菜演じる)園原杏里と3人で行動していることが多いんですけど、キャラとしても実際のキャストでも割と同じバランスの3人だなと思っていて。

杉江 わかる、そうなんだよね(笑)。

橋本 大志くんがお芝居面でも引っ張っていってくれているし。

杉江 普段も俺ばっかり喋るしね。

橋本 そこがやっぱり助かっています(笑)。僕と福島さんのふたりは割と人見知りなので。救世主です(笑)。

――今回、座長は橋本さんですよね?

橋本 でも、何もしていなかったですし、座長とは思っていなかったです。

杉江 ヘイヘイの座長は、「よしやるぞ!」タイプじゃないんです。「大丈夫ですか?頑張りましょうね!」というタイプの座長なんですよ。これであっという間にヘイヘイにコロコロっと転がされて、みんな一生懸命頑張っちゃう。

橋本 この世界に生き残るためには、気に入られてなんぼなんで(笑)。いつの間にか染み込んだものが取れないだけなので。

杉江 ヘイヘイのこと嫌いな人いないよ。

――橋本さんは手先も器用ですよね。バルーンアートもプロ並みですし。

杉江 すごいよね、仕事になってるもん(笑)。

――先日『ARGONAVIS the Live Stage』にも出演されていましたが、ずっとステージ上でドラムを演奏されていて、いつ練習しているんだろう?と思いました。

橋本 時間は、いっぱいあります……。

杉江 ドラムは何もやっていないところから?

橋本 ほぼゼロから始めました。音楽も僕はご縁ないだろうなと思っていて、知識がないところから始めたんですけど。

杉江 あ、何かずっとドラムスティック持ってたよね! 稽古じゃないところでいつか会ったときに、「ドラムやるの?」って聞いて。

橋本 たぶん始めたての頃だったと思います。

杉江 やっていたのを思い出しました。時間はあるんですって! 「時間は見つけるものだ」ってことでしょ? カッコいいね~! すごいな! 1日3時間睡眠とか?

橋本 いや、めっちゃ寝てますね(笑)。

杉江 そして、見せないんですよ、それ(努力している姿)を。それがすごいよなぁ。だって、ヘイヘイが朝しんどそうに挨拶しているのを見たことがないですもん。

橋本 めっちゃ寝てるんで(笑)。大志くんも割と常に同じテンションなイメージありますけどね。

杉江 人と会ったら勝手に元気になるので! 僕は楽しくてしょうがないから、しんどいとはあまり思わないですね。

アニメで印象的なシーンはけっこう再現されています

――これまでも共演されて、一緒の時間を積み重ねてきてお互いの印象の変化などはありますか?

杉江 ヘイヘイはずっと大人なんだけど、俺が初めてヘイヘイと一緒にやったときよりも、ずーっと大人になったから、見えてきたヘイヘイの良さはたくさんあるな。それまでは、逆に見えなかった。最初は、「器用にこなすし、器用に人と話すな」と思ったんです。それが、一緒に居るにつれて「それも頑張っているんだな。そういうのをたぶん、外に言ってほしくないんだな」とわかるようになりました(笑)。

実はひとりが好きというのも、初めて聞いたときはすごく意外だったけど、そう思って見ると「ああ、確かにな」と思う(笑)。だから、頑張って何かをやっている姿を見ると、より愛おしくなってくる。「頑張ってるな、俺も頑張らなきゃ」と思いますね。

橋本 もう稽古場で楽しそうにしていたら、大志くんの目には「こいつ、頑張ってるな」と映ってるのか、と思えてきちゃいますね(笑)。

――杉江さんの印象は?

橋本 大志くんは、割と僕と同じだなと思うところがあって。めちゃくちゃ優しいんですけど、たぶん今でも心の底には「若いヤツには負けねえぜ!若い芽は早く摘まないとな」と思っていると思うんです。僕もそれは思っているので(笑)。ただ、年々、柔らかくなっているというか、年下の子に接するときとか、歌のお兄さんなのかな?って思う瞬間があって。

杉江 あははは! すごい柔らかくなったね(笑)。

橋本 すごい柔らかいんですよ(笑)。たぶん、出会った頃よりも断然今のほうが話しやすいし、接しやすいし、それは年々そうなっていて。でも、根っこの部分はもちろんちゃんとある。優しさが膨れ上がっていますよね。

――今は歌のお兄さんで、出会った頃はどのようなイメージだったんですか?

橋本 出会った頃もだいぶ優しかったと思うんですけど、昔はすごい尖っていたと聞いていて。もちろん、そこの尖りは大事だと思いますし、僕も譲れないところは譲らないつもりではいるんですけど、そこのバランスや、刀の抜刀、納刀のコントロール含めて、素敵な大人だな、と思います。

杉江 ありがとうございます。

橋本 でも最近、俺と話すときも歌のお兄さんになってるって思うんですよね(笑)。

――今作は毛利亘宏さんの演出ですが、昨年の稽古の段階ではどんな演出でしたか?

橋本 毛利さんらしく、近代技術を使いすぎない演劇的な表現で、舞台装置とかがいっぱい動いていました。

杉江 でっかいのがいっぱい動いてたね。あとは、やっぱり『デュラララ!!』の「これどうするの?」みたいなものが、出来ちゃってます!

橋本 出来てますね。

杉江 稽古が始まる前に「これ、どうするの?」と思っていたことが解消されたんです。一番気になっていたのは静雄の看板なんですけど、ビジュアル撮影のときに、すでにありました! 看板あったわ!と思って(笑)。

橋本 そこ解決してましたね。稽古段階でポストを投げると言っていて、でも実際に飛ぶのは劇場からになるので、僕らもまだ見たことのないものばかりです(笑)。(※取材時は劇場入りする前)

――本番では本当に池袋の街中にあるものが飛んだりするんですね!?

杉江 そうですね、飛んでいきます(笑)。これだけ聞いたら、『デュラララ!!』を知らない人は「何のこっちゃ!?」となるけど、知っている人はワクワクするね! 楽しみにしていてください。

――アクションなどもあるのかな、と思いますが。

杉江 アクションもちょこちょこあります。でもまだ、話の流れ的に戦うところがあまり多くないから。もし、この先になったら、もっと戦うことが多くなるけど……。

橋本 そうなんですよね。スタッフさんなど超一流な方たちが集まっていて、アクション監督は舞台「刀剣乱舞」も担当されている栗田政明さんなんですけど、今のところやり足りないんじゃないかと心配になります。

杉江 あははは!

橋本 こんなに贅沢な使い方していいのかな!?って。いや、本当に(笑)。振り付けも本山新之助さんですし。本当だったら、もっとミュージカル系とか。栗田さんもガッツリ殺陣ものとかやっている方なので、ものすごい贅沢!

――ダンスもあるんですか?

橋本 ダンスシーンという感じではないです。

杉江 オープニングアクトみたいな感じですね。

――本当に贅沢なスタッフさんですね。

橋本 本当に贅沢です!!! 粗がないと思います。あと、アニメで印象的なシーンはけっこう再現されています。

杉江 取材とかだと、良いラインのハードルを用意しようと思うけど、今回はおおいに上げていこうと思います(笑)。それくらい自信があります。

さらにすごいものを作っちゃうよ!という僕たちの気合を感じてほしい

――原作は、帝人が変化を求めているところから始まりますが、おふたりは何か変化を求めていることはありますか?

杉江 常に……! 僕は最近“生きてるってなんだろうな”と本気で考えたり、“なんでこの仕事をしてるんだろう?”とか、そんなことを考えるきっかけがあったんですよ。自分はこの仕事を頑張っていると思うんです。楽しいから頑張っているんですけど、じゃあ何で楽しいのかな?とか、この仕事をやるエネルギーの根源って何かな?と考えたときに、たぶん僕がここに飛び込んだ理由は“刺激が大好きだから”。

いわゆる普通と言われる生き方がつまらないと思ったから、この世界に飛び込んだと思うので、変化は常に求めています。逆に言ったら、仕事自体が一つひとつ作品ごとに変わっていくことが一番の変化で、杉江大志としては、常に自分のお芝居と向き合って今できることを整理して、次にできるようになるべきことを見据えて向き合って変化していきたいなと思っています。

橋本 もちろん、芝居面などでどんどん変化していきたいなと僕も常に思っているんですけど、それと比例して「あまり変わりたくないな」という自分もいて。

杉江 素敵だね。

橋本 歳を重ねていくにつれて、大人の階段を一段ずつ上っている気がして。でも、なんか根本とか、人に接するときとかは、昔のままの自分でありたいなと思っていて。それでも、現場によっては変に大人な対応をしてしまいそうになる自分を「やめろ、やめろ」と言い聞かせてやっているんですけど。技術面ではもちろん変わりたいですけど、中身は40歳までこの感じでいられたらなって思います(笑)。でも40歳でこれってヤバいですかね?

杉江 40歳までそれでいけたら、40歳から後もいけると思う。40歳になったことないからわからないけど(笑)、いけそうな気がする。少年のまんまの40代の人とかもいるしね。確かに、ヘイヘイは変わらないままでいてほしいな。

橋本 ちょっと変わりたくないな、と思いますね。

杉江 老けたくないよね、心も体も。

――では、最後に楽しみにしている方のハードルをさらに上げるようなメッセージをお願いします!

杉江 1年越しの『デュラララ!!』の舞台を上演できて本当に嬉しく思っております。皆さんの中に1年待っていた間に膨らんだ想いがたくさんあると思います。それを全部持って劇場に来てください! 皆さんの用意したハードルをすべて飛び越えてみせましょう! 帝人、ラブ(笑)!

橋本 最終稽古をやってから1年も時間があったんです。その完成したところから、さらに肉付けをしていくので、もう伸びしろしかないです! ここからやることは、ブラッシュアップしかないんです! 

杉江 1年前に細マッチョは出来上がったので、ここからプロテインを飲んでボディビルダーみたいな体(作品)を作りたいと思います(笑)。

橋本 ボディビルダー世界選手権、優勝目指して頑張りたいと思います(笑)! 割とお客さんの「これどうするんだろう?」と疑問に思っていることは演劇の力で表現していると思うんです。お客さんの楽しみにしてくださっている期待をそのまま劇場に持ってきてほしいですし、この1年間我慢してきたものを純粋に爆発させる役者の力というのを見てほしいなと思いますね。作品自体は完成しているので、それプラス、約1か月くらい稽古があるとなったら、これはもう去年できていたものよりも、さらにすごいものを作っちゃうよ!という僕たちの気合いを感じてほしいです。

取材・文:能一ナオ 撮影:曽我美芽



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舞台『デュラララ!!』
上演中~8月22日(日)
会場:日本青年館ホール、名古屋文理大学文化フォーラム(稲澤市民会館)大ホール、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
★千秋楽公演(8月22日13:00・17:00)ライブ配信あり。詳細は公式サイトにてご確認ください。
https://durarara-stage.com/?from=lower

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