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THE ORAL CIGARETTES 山中拓也の発言に込められた意図 全国ワンマンツアー初日公演を見て

リアルサウンド

18/10/2(火) 16:00

 9月18日、THE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)の全国ワンマンツアー『Kisses and Kills Tour 2018』がZepp Tokyo公演よりスタートした。4thアルバム『Kisses and Kills』のリリースに伴う同ツアーは、ライブハウスシリーズとアリーナシリーズに分かれており、半年に及ぶ。

 ここ最近のオーラルといえば、フェスや大型イベントへの出演が続いていて、大会場で演奏する機会が多かった。その反動だろうか。この日の彼らは「アリーナでは絶対出ない雰囲気がある」と語りながら、あるいはアルバムタイトルに引っ掛け「“Kiss”の本来の意味は“同化する”らしい」という話をしながら、オーディエンスを積極的に煽っていた。また、山中拓也(Vo/Gt)が時にフロアに乗り出すようにして歌っていたり、あきらかにあきら(Ba/Cho)がコーラス用のマイクごと前方に移動してから演奏していたりと、メンバーはフロアからの熱気を直に浴びようとしているよう。そうして終盤では煽らずともシンガロングが発生。山中が「あはは、ホントバカだね!」と、飾らない言い方で喜びを伝えていた。

 今回のツアーはライブの構成および演出にあるテーマが設定されている。そのテーマ自体がライブの中核を担っているため詳述は控えるが、ここでは山中のMCでの発言を2つ取り上げながら、そこに込められた意図を掘り下げていきたい。

 まず1つ目は、『Kisses and Kills』収録曲には「人間の感情を大切にしましょう」と歌っている曲が多いのだという話。その喜怒哀楽を色濃く伝えるためか、かなり振れ幅の広い内容となっていた。途中、山中が思わず笑い出したあと、ポロッとこぼすように「楽しい」と言っていたことが印象に残っている。オーラルは東京でツアーの初日公演を行ったことが今までにも何度かあったが、そのたびに観てきた身としては、確かに、これまでで最も肩の力の抜けた初日だったように思う。激しい曲は激しく、柔らかな曲は柔らかく、完全に振り切ったようなパフォーマンスができていたのは、きっとそれゆえであろう。そこに初日特有の勢いが掛け合わさることにより、ステージもフロアも一緒になって、たがが外れたようなテンションになっていったのだ。

 そして2つ目は、「感情なんて表裏一体」という言葉。この日は、音源とは大幅に異なるアレンジで披露された曲があったほか、セットリストに関して「このタイミングでこの曲が登場するの?」と思うような意外性の感じる采配があった。サウンドの調子や演奏シーンが変わるだけで、耳に馴染んでいたはずのあの曲が全く違うもののように聴こえてしまう。この現象は先に引用した言葉「感情なんて表裏一体」のメタファーともいえる。

 観る側からすると、自分の価値観を抉られるような思いのする場面が何度もあった。演る側からしてみたらおそらく、肉体的にも精神的にも消耗するようなハードな構成なのだろう。彼らはオーディエンスへ「各々が思うように自分の感情を持って帰ってもらえたらと思います」という風に伝えていたが、それはステージに立つメンバー側も同様。『Kisses and Kills』というアルバムをトリガーとし、どれだけ奔放な演奏ができるかどうかーーということが本ツアーにおける鍵になっていきそうだ。それを踏まえて考えると「めちゃめちゃのびのびと、自由にやらせてもらってます」と話していたこの初日公演は、良いスタートダッシュになったのではないだろうか。ツアーは来年3月17日・横浜アリーナ公演まで続いていく。

(写真=Viola Kam(V’z Twinkle))

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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THE ORAL CIGARETTES オフィシャルサイト

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