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DEAN FUJIOKA『シャーロック』OP曲の“心地よいスリル” サウンド面の聴きどころを解説

リアルサウンド

19/11/4(月) 12:00

 俳優と歌手、それぞれの立場で着実に地位を築きつつあるDEAN FUJIOKA。現在放送中の月9ドラマ『シャーロック』(フジテレビ系)では、謎めいた犯罪コンサルタント・誉獅子雄=シャーロック役で主演を務めており、何をしでかすか分からない豪胆さと鋭い推理力を合わせ持つ役柄を好演している。

(関連:『シャーロック』主題歌「Shelly」から読み取る、DEAN FUJIOKAとR&Bの可能性

 そんな『シャーロック』のオープニング曲に起用されているのが、DEAN FUJIOKA自らが歌う「Searching For The Ghost」。劇中、DEANの“描く”アクションでもってドラマタイトルが映し出されたのち、〈君の名はmystery〉という印象的なフレーズを我々視聴者に浴びせてくるあの楽曲だ。エンディングを飾る主題歌「Shelly」と共に12月発売のEP『Shelly』に収録されることがすでにアナウンスされているが、それに先駆けて配信でのリリースが決定。全貌解禁を待ちわびていたファンにとってはこれ以上ない福音となった。

 ちなみに筆者は先日、「Shelly」とR&Bの因果性を探る記事を執筆した際にも僅かながらこの「Searching For The Ghost」に言及したのだが、まず特筆すべきはやはり、怪しさ満点の歌詞だろう。「Searching For The Ghost」は、本稿執筆段階で主だった解説や情報が公開されていない。よって、まさしくドラマの内容よろしくミステリアスな状態にあるのだが、あえて推察をメインに話すとすると、それは劇中で起こる陰惨な事件と獅子雄の対峙そのものを表しているように感じる。次から次に舞い込んでは真実を隠してしまう謎に翻弄される宿命を背負った獅子雄。その破滅的な構図をまるで冷笑するように、はたまた執拗に追い込むかのように“張り詰めた独白”は加速していく。〈もう逃げ場はない〉〈祈りも呪いも意味ない〉といった絶望すら想起させるフレーズも楽曲の緊張感をいっそう高め、聴き手に心地よいスリルを運んでくれる。

 また、こうしたトーンは、獅子雄自身が内面で密かに抱える罪への興味・関心をも華麗に示唆してみせる。事件の解決のみならずバイオリンやボクシングまで抜群なセンスでこなし、誰がどう見ても万能なキャラクターである獅子雄だが、天才であるがゆえの“危うさ”はすでに劇中でも顔を覗かせ始めている。今後の放送では彼のパーソナリティにも焦点が当たっていくはずなので、「Searching For The Ghost」の詞世界が放つ不穏な空気が生々しさを帯びて迫ってくるとしたら、おそらくその時だろう。

 サウンドは、エレクトロを下敷きにしたこれまた閉塞感漂うもの。鈍いシンセベースが主体を担う中、低音を押し出したDEAN FUJIOKAのボーカルが虚ろに谺する。昨今のK-POPにも通じる野性味あふれるタッチだが、DEANの過去のキャリアを顧みてもここまでやさぐれたナンバーは初めてのこと。「Shelly」を淀みのない楽園とすれば、「Searching For The Ghost」はさしずめ冷たい廊下が横たわる暗闇の監獄といったところだろう。個人的には、サビ前に突如として訪れる静謐たるブレイクや、悪魔の咆哮を具現化したのであろう終盤のおどろおどろしいサウンドエフェクトも相まって、かのドラキュラを真っ先に思い浮かべた。『モンテ・クリスト伯 —華麗なる復讐—』(フジテレビ系)、そして『シャーロック』と、西洋の小説を題材にしたドラマで高貴な佇まいを見せるDEANだけに、そのイメージをたぐり寄せてしまったのもある種の必然なのかもしれない。

 この「Searching For The Ghost」や「Shelly」が収録されるEP『Shelly』には全5曲が収録。「Made In JPN」は現在、情報番組『サタデーステーション』『サンデーステーション』(ともにテレビ朝日系)のエンディングテーマとしてオンエア中。「Searching For The Ghost」から一転してリラックスしたムードを湛えており、東京の喧騒の中で日々もがく人々にしばしの休息をもたらすようなメッセージ性の強いナンバーに仕上がっている。R&Bやシティポップのエッセンスを感じさせるのびのびとしたサウンドは、水曜日のカンパネラやiriらの楽曲を手がけるTokyo Recordings所属のクリエイター・Yaffleによるもの。

 Billy Joelの名曲「Honesty」を彷彿とさせるスケール感のあるバラード「Chasing A Butterfly (feat. Nao Matsushita)」では、DEANと同じく役者と音楽家の顔を兼ね備える松下奈緒がボーカリストとして参加。二人が出演する映画『エンジェルサイン』の主題歌で、ドラマティックかつ美しいハーモニーが聴き物だ。さらに、中国のアーティスト・GONGを客演に招いた「Send It Away (feat. GONG)」も収録。歌詞の大半を中国語が占めており、マルチリンガルであるDEANの本領発揮が窺える。そしてこの楽曲でもやはり、コンテンポラリーなR&B/ヒップホップを追求。彼の”時代を噛み砕くエネルギー”がこうも芳しいと、今後の作品にも大いなる期待を禁じ得ない。

 「Searching For The Ghost」をはじめ、スタイリッシュな楽曲が軒を連ねるニューEP『Shelly』。DEAN FUJIOKAに新たな魅力を見出す絶好の作品になることは今の時点から明白なので、自由な発想で味わってみてほしい。ひとまず『シャーロック』のいち視聴者としては、ドラマの展開に呼応していくであろう「Searching For The Ghost」の行く末を楽しみに見守りたいと思う。

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