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ATEEZデビュー作はサウンドをローカライズ 日本のポップミュージックをアップデートする道筋となるか

リアルサウンド

19/12/14(土) 8:00

参考:2019年12月16日付週間アルバムランキング(2019年12月2日~12月8日/https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2019-12-16/)

 2019年12月16日付のオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得したのは、UVERworldの2年4カ月ぶりとなるアルバム『UNSER』。推定売上枚数は56,311枚だ。冒頭を飾る「ブーン」というレゾナンスの効いた太いベースが象徴的な、EDMやトラップを咀嚼した2010年代後半のロックを体現する意欲作。快調な滑り出しが心強い。10位のFear,and Loathing in Las Vegas『HYPERTOUGHNESS』(11,835枚)も音楽性はやや異なれどヴィジョンは重なり合う部分が多そうだ。

(関連:ATEEZ「HALA HALA (Traditional Treatment Mix)」試聴はこちら

 ほか初登場としては3位BLACK IRIS『METEOR』(23,031枚)、4位愛島セシル(鳥海浩輔)『うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 愛島セシル「☆light ☆night」』(22,855枚)、5位和楽器バンド『REACT』(16,348枚)、8位Toshl『IM A SINGER VOL.2』(14,380枚)、9位ATEEZ『TREASURE EP. EXTRA:Shift The Map』(13,113枚。以下、『TREASURE EP. EXTRA』)が並ぶ。

 ピックアップしたいのはATEEZ。2018年のデビュー以来注目を集めてきた新鋭ボーイズグループの日本デビュー作となるミニアルバムで、すでにリリースした3つのミニアルバムのいわば編集盤だ。こうした編集盤を日本独自に編むことは珍しくないが、ここで注目したいのは「どうローカライズされているか」だ。

 K-POPのローカライズについては、11月にもこの連載で取り上げた(https://realsound.jp/2019/11/post-446413.html)。既発・新曲問わず日本での活動では日本語で歌う、という不文律がK-POPにはあった。しかしその前提も崩れてきているのではないか。THE BOYZの初1stミニアルバム『TATTOO』を例にそんな話をした。

 ではATEEZの『TREASURE EP. EXTRA』はどうか。全11曲中、日本語詞は「UTOPIA」と「AURORA」の2曲だけ。それ以外は既存の楽曲をまとめただけ……かと思いきや、多くの楽曲がリアレンジされている。しかも、ミックスが違うとか、尺が短くなったり長くなったりにとどまらず、既発のバージョンにはないフレーズが加わっていたり、そもそもジャンル自体別物になっている曲もある。いわばサウンドによるローカライズだ。

 それではどこがどう変わっているのか、特徴的な例をピックアップして、「日本向けの音」とはなんなのかを推測してみよう。

 まず気になるのはストリングスだ。「HALA HALA (Traditional Treatment Mix)」では、冒頭から既発バージョンにはないストリングスが登場する。フックの部分も、もともとはトラップのビートと最低限のメロディがなぞられるだけでミニマルなビートだが、ストリングスが加わることで楽曲の持つドラマが増強されている。同じことは「Treasure(Smoothing Harmonies Mix)」でも起こっている。冒頭こそほとんど同じに感じられるが、最初のサビを超えるとストリングスが饒舌になる。

 要はメロディが薄い部分を補うようにストリングスが足されているわけだ。「Pirate King(Overload Mix)」ではエレクトリックギターがその役割を担っている。57秒ごろから登場するギターの単音リフは既発バージョンにはないし、以降聴けるギターも同様。「Illusion(Chillin’ with BUDDY Mix)」も既発のバージョンにはないボーカルチョップや、80’sのユーロビートもかくやというシンセリフの唐突な挿入がメロディの薄さを補っている。

 他に興味深いのは「Wave(Ollounder’s Bold Dynamics Mix)」や「Twilight(Classic BUDDY Mix)」だ。ムーンバートンやトロピカルハウスといったBPMがゆるやかでチルな雰囲気を漂わせた既発バージョンとはガラッと曲調を変え、前者は攻撃的なEDM系のトラップ、後者はアコースティックピアノ中心のビートレスな一曲になっている。チル寄りのビートがどちらも変更されているということは、このあたりのジャンルが日本に合わないという判断だろうか。

 もちろんこうしたリアレンジが楽曲の魅力を極端に損なうということはないし、とてもクオリティの高いサウンドに仕上がっている。とはいえ、サウンドの面白さを押し出す最小限のアレンジを抑えて、メロディで高揚感を演出する傾向がここまではっきり出るとなかなか考えさせられるものがある。と同時に、日本のポップミュージックをアップデートする道筋も見えてくるようでもある。(imdkm)

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