仕事をするとはどういうことだろう。前回書いた『病院の治しかた～ドクター有原の挑戦～』に取り組んでいるときは、改めて動き続けていなければと強く感じた。同じチームで作る作品に参加したからだろうか、演じる役の成長も感じたし、自分が成長して進み続けていなければ同じ役でも演じられなくなってしまうのではないかとも思った。「現状維持は退化と同義」なんてよく言うが、それをヒリヒリと感じている今日この頃なのだ。

新しい作品に入る際には準備がいろいろあるが、そのスタートラインを常に上げておかないと置いていかれてしまう。「ああ、もうちょっとこういうことをやっておけば」的な。何をしていても思うんだろうしそれは一生続くんだろうけど、常に備え続ける必要がある。

現場よりも準備期間や帰宅してからの方が落ち込むことが多々ある。現場は落ち込んでる隙があまりないからだろうか。本気で自分のことを全否定してしまう瞬間が不意に訪れる。でもそれを見て見ぬふりしてやり過ごそうものならどんどんと落ちていくので、さらに向き合って備えると。

仕事の準備はそれぞれさまざまいろいろするのだけども、いざやるときは全部捨てて挑む。捨てるというのは無かったことにするではなく、手放すという意味で。フル装備のイメージで現場に行くんだけど、それはあくまで準備段階で出来上がった自分のベストだから。準備していたものを後生大事にしていると、あまり面白いことが起こらなかったりする傾向がある。もちろん準備しないと出来ないこともあるので準備はマスト。準備は必要と同時に手放すことを躊躇してはいけないということ。型破りと型無しの違いと近いかな。分からない人は調べてみてね。

準備をしなければ始まらない、でも身についてしまっているものが足枷になる瞬間もある。いらないものには自意識を初め捨てたいと思って捨てられるものでないことが多い。お客さんもそうだけど、現場で見ている人たちにとっても良い物じゃないと良い作品にはならない。そんな勝負の日々。

クランクインの日は何度やっても緊張する。撮影期間はひたすらに作品のことを考えられるのがありがたい。クランクアップの日はやっぱりなんだか寂しくもなる。達成感が欲しくてやっている訳でもない。どれだけやっても後悔することはある、堂々巡り。

やりたい仕事でも全部の作業が楽しいてことではない。キツい時間は長い。それでもやっぱりやりたいのには、追い込まれた先にある何かに救われているからだと思う。

今は視界が狭まっているタイミングかもしれない。そうだとしても、なにはなくとも今をやり遂げたい。そんな作品を撮っている今、またこれが終わったら何を思うのだろう。観て欲しいな、とにかく観て欲しい。現時点でもそう思う。そんな作品を、楽しみに待っていてくださいませ。

次回の更新は7月21日です。お楽しみに！

プロフィール

稲葉友（いなばゆう）

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14～’15 EX)、『MARS～ただ、君を愛してる～』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30～16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

撮影／鬼澤礼門、取材／藤坂美樹、構成／中尾巴、ヘアメイク／速水昭仁、スタイリング／添田和宏、衣装協力／ジャケット¥31,900、シャツ¥27,500、パンツ¥26,400／すべてイロコイ（イロコイ TEL:03-3791-5033）
ヘンリーネックカットソー¥4,070／ヘルスニット（ヘルスニット・ブランズ TEL:03-3833-1641）
シューズ¥23,100／スペース クラフト
ブレスレット¥26,400／ノース ワークス（ともにヘムト PR TEL:03-6721-0882）
ハット¥22,000／メゾンバース（シアン PR TEL:03-6662-5525）
ネックレス(ロング)¥27,500、(ショート)¥29,700／ともにプリュイ（プリュイ トウキョウ TEL:03-6450-5777）