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松本潤が明かした『99.9』の妥協なき精神 第1夜に凝縮されたシリーズのエッセンスの数々

リアルサウンド

20/6/1(月) 6:00

 「99.9%有罪だとしても、そこに事実があるとは限らない」。連続ドラマで初めて刑事専門弁護士を扱った『99.9-刑事専門弁護士-SEASON I』(TBS系)は2016年4月期に放送され、2018年には『SEASON II』が制作されるなど、新感覚のリーガル・エンターテインメントとして大きな反響を呼んだ。

参考:松本潤が法廷に立ち続ける姿を観ていたい! 『99.9』深山という特別なキャラクター

 5月31日に放送された『99.9-刑事専門弁護士-SEASON I 特別編』の第1夜では、深山大翔(松本潤)と佐田篤弘(香川照之)、立花彩乃(榮倉奈々)のチームが殺人事件の弁護を引き受ける。被告人の赤木義男(赤井英和)はネットショップ「maxV」社長の塙幸喜を殺害したとして逮捕されたが、無罪を主張。法律事務所ボスの斑目春彦(岸部一徳)に促されて真相解明に挑んだ深山たちは、証言を覆すべく事件現場に足を運ぶのだった。

 今回の『特別編』では、副音声で松本、香川、榮倉の3人が撮影時の裏話を披露。『99.9』は特に3人のコンビネーションが絶妙で、随所にクスっと笑ってしまうようなセリフの応酬が散りばめられているが、その多くが『SEASON Ⅰ』の第1話の段階で出来上がっていたことがわかる。現場でのアドリブや演者のアイデアを取り入れる木村ひさし監督の手腕もさることながら、瞬時にイメージを共有する役者同士のケミストリーが素晴らしいのだ。

 話を聞くときに耳に手を添えたり、飴をあげる深山の性癖はその場のやり取りから生まれたもので、深山に振り回されっぱなしの佐田が目をむいてコミカルに怒る姿は、『SEASON II』にも引き継がれている。キャラが立っているという点では、他の出演者も負けていない。本作が俳優としての出世作になったラーメンズ・片桐仁演じる明石のクイーン「We Will Rock You」地団駄や、言い間違えをそのまま採用した藤野(マギー)の「め!」は、お笑い出身者らしい瞬発力が発揮された好例と言える。

 有罪率99.9%の刑事裁判に立ち向かう弁護士の挑戦と聞くと、悲壮感が漂うシリアスな法廷ドラマを想像してしまうが、『99.9』はそうなっていない。まったりとしたコメディとシリアスな事件ものをブレンドした本作の性格を決定づけたのがまさに『SEASON Ⅰ』の第1話だった。こうした取り組みを可能にしたのが、遊び心の中に「何がスタイリッシュかを各部が追求する」(松本)という現場の雰囲気であったことは言うまでもない。

 一方で松本が指摘するように、ディテールに妥協せず、法律監修にも万全を期したことで法廷ドラマとしても一本芯が通ったものになった。こうした硬軟自在な演出によって、無罪を実現するという一見不可能とも思える物語に説得力が生まれている。ドラマ的な諧謔とリアリティの両極を徹底して追求したことが、先の読めないスリリングな展開をもたらした。

 第1夜で無罪の決定的な根拠になったナトリウムランプについて、松本自身が嵐のコンサート演出で事前に研究していたという事実は、いかにも『99.9』らしいエピソードではある。池田貴史や岸井ゆきのら小料理屋「いとこんち」の面々、また次第に明かされる立花のプロレス趣味など『99.9』に関するネタは枚挙に暇がない。

 そういえば、後々のチームの萌芽になった『SEASON I』第1話で、生まれそうで生まれなかったのが深山と立花の男女関係で、次作にも引き継がれた“恋に落ちないバディ”という基本路線もちゃんと敷かれていた。作家のすべてが処女作にあるように、第1夜には『99.9』のエッセンスが凝縮されている。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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