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TOMORROW X TOGETHER (TXT)が“魔法”テーマに表現した、アップデートされた若者像

リアルサウンド

19/11/6(水) 7:00

 BTSの弟分として今年デビューしたBig Hitエンターテイメント所属のTOMORROW X TOGETHER (TXT)が、10月21日に1stアルバム『The Dream Chapter:MAGIC』をリリースした。デビューEP『The Dream Chapter:STAR』(2019年3月)は韓国の2019年度Gaonチャートで上半期のCD売上ランキング12位に入り、米国ビルボードチャートのbillboard200チャートで140位にランクインした。今作も米国iTunesのリアルタイムランキングで1位に輝いている。

(関連:TXTの成長を支えるBTSの存在ーー“ファミリー”としての絆が垣間見える2組の交流を探る

 今作のアルバムのテーマは「魔法」。タイトル曲「Run Away」の原題は「9と4分の3番線、君を待ってる」だが、ハリーポッターの世界観を思わせる、辛い現実から逃がれて9と4分の3番線のプラットフォームから仲間だけの魔法の国に旅立ちたいという歌詞の内容だ。他の楽曲の歌詞を見ても、納得のいかない世の中のルールを変えて新しいルールを作りたいという「New Rules」、いつまでも少年でいたいという気持ちをゲームになぞらえた「Can’t We Just Leave The Monster Alive?(モンスターをそのまま生かしておいてはいけないの?)」、疲れた現実の中で君と僕の始まりのあの魔法の島を忘れないでと歌う「Magic Island」など、思春期らしい感情を描いたものばかりだ。ピリッとするようなちょっと危ない甘酸っぱい恋の刺激を味わいたいという「Poppin’ Star」、恋する気持ちをジェットコースターに例えた「Roller Coaster」、友達から好きな人へと変わる瞬間に意識する2人の身長差を表した「20cm」、自分の中の悪魔と天使が葛藤する恋心を描いた「Angel or Devil」など、恋の歌もティーンエイジャーらしさに溢れている。

 10代ならではの繊細な感情をテーマにしているのは先輩であるBTSも同様だったが、彼らが己の拳を傷つけながらもがき苦しむような反抗心や不器用で傷つきやすい青春を表現していた一方で、時に抑圧される10代を表現しながらも架空の世界への逃避や夢想の世界が現実になればいいと歌うTXTの世界観は、よりソフトでナイーブかつ現代的な強かさを秘めた若者像へとアップデートされているようだ。刺激が欲しいと歌うその「刺激」ですら「ライムレモンオレンジたっぷり」のパチパチキャンディ程度という可愛らしさと爽やかさは、どちらかといえば悪戯心をチューインガムに込めていたSMエンターテイメントのNCT DREAMや、恋のときめきを爆発のイメージで表現してみせたPLEDISエンターテイメントのSEVENTEENが初期から追求していたイメージに近い。「無害で可愛らしく、さわやかな青少年」というのはリアルというよりもファンタジー的であるが、同時に現実のTXTの姿そのものも内包している。リアリティからファンタジーへと世界観を変貌させて行ったBTSとは入り方が真逆であると言えるが、同時にBig Hitが一貫してこだわってきたであろう「少年性」はやはり健在と言えるだろう。

 また、音楽的な面ではポストパンクやエクスペリメンタル、ニューウェーブといった韓国でのニュートロ(ニューレトロ)ブームを反映したジャンルや、ディスコやファンク、テクノのようなBTSの楽曲ではあまり見られないジャンルの楽曲にチャレンジしている。K-POP定番のハウスやR&Bもトロピカルハウスや90年代末期のスローR&Bなど、より音楽シーンの流行が意識されているようだ。「Roller Coaster」では楽曲制作にメンバーのヒューニングカイが参加しているものの、基本的にスタッフが中心となって制作しているからこそのフレッシュでトレンディなバリエーションと言えるのかもしれない。今作もSlow Rabbitを筆頭にADORA・Supreme boi・パンシヒョクがメインで参加しているが、前作以上に海外の作曲家も多く、10人以上の大所帯で共同制作した楽曲が目立つ。

 先輩グループの世界的人気拡大により、デビュー時から必然的にその影響を受けざるを得ないTXTだが、今のところはかなりはっきりとBTSとの差別化を図ろうとしているのが感じられる。一方でBTSのメンバーをロールモデルとしていると語るように、BTSにも見られたカル群舞や少年性をベースにした世界観という共通項目もあり、グループと共に事務所全体のイメージも構築されつつあるように思う。BTS自身もTXTのデビューにより、後輩活動を応援したりする姿から「後輩とのケミ」という新たな魅力の一面を得たと言えるのではないだろうか。また、デビュー即アメリカでショーケースを行ったり、VLIVEなどのウェブコンテンツを積極的に更新しているのも、過去にBTSが行ってきた伝統のプロモーションスタイルである。日本では9月の『東京ガールズコレクション』で初舞台を踏んだばかりのTXT。またデビューして半年ほどだが、今後の活動や変化が気になる存在である。(DJ泡沫)

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