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和田彩花の「アートに夢中!」

『写真家ドアノー/音楽/パリ』『20世紀のポスター[図像と文字の風景]―ビジュアルコミュニケーションは可能か?』

月2回連載

第56回

21/3/5(金)

『写真家ドアノー/音楽/パリ』

今回、まず最初にご紹介するのは、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『写真家ドアノー/音楽/パリ』です。

フランスの国民的写真家で、世界中に多くのファンを持つ、ロベール・ドアノー。ドアノーはパリを舞台に多くの写真を残したことで知られますが、今回は「音楽」をテーマに展示が行われています。

展覧会を見ていて一番最初に思ったのが、私がずっと見てきた19世紀の絵画に描かれた街の風景や生活が写真としてそのまま写し出されているということ。時代は違えども、街の風景が変わらないんですよね。

でもどうしても写真の方が生々しいんです。絵画は画家たちの目を通して、そのまま描かれているように見えても、ある程度作り込まれていて、実際の風景とは少し違ったりします。でも写真は目の前の風景がそのままに写っている。撮影時間や場所、シチュエーションなどは決めても、そこにある景色や日常は作り込む余地がないというか。写真は瞬間であり、ありのままのパリの姿を見せてくれます。

絵の中のパリの風景と写真の中のパリ、その違いを私は楽しむことができました。

どこか寂し気な流しのアコーデオン奏者

展示の中で興味を持ったのが、流しのアコーディオン奏者ピエレット・ドリオンと、俳優、スキー選手、登山家とマルチに活動するチェロ奏者であり、ドアノーの生涯の友人だったモーリス・バケを撮影した写真です。

ロベール・ドアノー 《流しのピエレット・ドリオン》パリ 1953年2月 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

ピエレットの写真は展覧会のメインビジュアルにもなっています。ドアノーはたくさんの「街の音楽家」の写真を残していますが、その中でもとても印象的な写真です。

あるとき出会ったピエレットにドアノーはすっかり魅了され、数日間、店から店へと移動し、流しのアコーデオンとして歌う彼女に密着し、撮影をしました。

歌う場所は下町の大衆食堂や酒場など。どの写真のピエレットも、どこか物悲しいというか、険しい顔をしています。あまり幸せそうには見えないというか。でもそこには、誰にも流されず、媚びない一人の女性の姿が写し出されているように思います。歌うこと、これが彼女の生き方なんですよね。

ただ、この表情、この流しのアコーデオン奏者としての姿だけが、彼女のすべてではないと思うんです。だからそれ以外の彼女の日常はどんなものなんだろうって、想像させられました。

チェロ奏者、バケとのコミカルなコラボレーション

ロベール・ドアノー 《蒸気の出る歩道橋》 1957年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

そしてモーリス・バケ。ここだけ展覧会の中でもちょっと色が違う写真たちが並んでいます。ある程度自然に撮られたスナップ写真のような作品とは違い、バケの写真は、シチュエーションが計算されつくされた写真ばかり。フォトモンタージュやコラージュなどさまざまな技法も駆使され、まさしく作品という感じです。

特に私が好きだったのが、《蒸気の出る歩道橋》です。

歩道橋の上にもうもうと蒸気機関車の蒸気が。その蒸気がバケを襲うような、包み込むような、なんとも言えないコメディにも思えるような写真です。

特に「蒸気」というのは、実は絵画の中にも数多く描かれてきたモチーフです。例えばマネの作品《鉄道》で描かれているのは、パリのサン=ラザール駅。そこに止まっている蒸気機関車を鉄格子越しに女の子が見つめています。でも、蒸気機関車は蒸気に覆われ、その姿は見えません。

「蒸気」というのは、1950年代頃までは当たり前にあったものなんですよね。それをマネもドアノーも同じように見て、自分の作品にしていた、というのがとても面白いことだなと思いました。

今回の展覧会で、写真と絵画とを結びつけて考えるおもしろさに気づきました。写真作品に映し出される偶然の美しさと、絵画での描かれた美しさ。媒体が違うだけで、こんなにも印象が変わるんだな、ということがわかった展覧会でもありました。

開催情報

『写真家ドアノー/音楽/パリ』
2月5日(金)~3月31日(水)、Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催
※会期中無休
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_doisneau/

2018年末から2019年春にかけて、パリの「フィルハーモニー・ド・パリ」内にある音楽博物館で開催され大好評を博した展覧会を基に、日本向けに再構成した巡回展。1930年代から90年代にかけて撮影されたパリの街角にあふれるシャンソンやジャズなど様々な音楽シーンをテーマにした作品約200点で構成される。

『20世紀のポスター[図像と文字の風景]―ビジュアルコミュニケーションは可能か?』

次に紹介する『20世紀のポスター展』は、とにかく、こんなにポスターって面白いんだ! ということを知ることができ、楽しくて仕方ない展覧会でした。

1910年代〜20年代のヨーロッパで生まれ、芸術・デザインに革新をもたらした「構成主義」は、特にビジュアルデザインの領域において、図像と文字を幾何学的・抽象的な融和のもとに構成しようとする特徴的な表現様式をもたらしました。そして数々のアーティストやデザイナーが時代を超えて共有したのがこの「構成主義」です。

今回の展覧会は、その「構成主義」が、ポスターという作品にどのように影響を与え、そしてポスターがどのようにして世に送り出されてきたのか、ということを、歴史的な背景もふまえそのプロセスを追っていくものです。

シンプルで心地よい造形の美しさ

テオ・バルマー《写真100年展/バーゼル工芸博物館》 1927年

いま皆さんが街中でみかけるようなポスターと、このポスターを比べてみると、その情報量の違いに驚くのではないでしょうか。現代のポスターは、入れなければいけない情報がたくさんあり、それが一つでも欠けるとダメ、ということが多いですよね。

確かにそれはとても重要なことではありますが、この当時のポスターというのは、必要最低限の情報すら入っているかどうかもわからないようなポスターばかり。なんのポスターなのかも、一見するとわからないんですよね。これが展覧会のポスターなのか、コンサートのポスターか、というのも。でもそれが反対に心地よくて、私はこのシンプルさと、造形の美しさが好きだなって思いました。

20世紀に近づくにつれて、いろいろな技法が駆使され、いまのポスターに近づいていくわけですが、今回展示されていたポスターの多くは、写真や絵を使わずに文字や線、記号のようなものだけで画面を構成しています。そういう造形のあり方も面白いんですよね。

時代の空気を映し出す、ポスター芸術の在り方

ただ、このシンプルで一見わかりにくいポスターがあったからこそ、現代のビジュアルデザインの基礎が作られ、いまのポスターが生まれた、ということがよくわかる展覧会でした。時代を追っていくごとに、いま私たちが見ているようなポスターが生まれていきます。そういった流れを追うことができる展覧会です。

ポスターがどう生まれ、どう進化してきたのか。なかなかそういったことって、美術の歴史のなかで語られることが少ないような気がします。ポスターは芸術なのか?という考えもあるからなのではないでしょうか。でも私は、ポスターは美術の歴史を語る中でとても重要な要素である、ということを今回の展覧会で学びました。

しかも東京都庭園美術館でのポスター展というのがとても新鮮です。

ジャン゠ブノワ・レヴィ《マルクトブラット/無料広告新聞》 1989年 ⓒJean-Benoit Levy (AGI/AIGA), Studio AND (www.and.ch), Photo : Alexandre Genoud

そして、ポスターの存在とはどういうものなのか、ということを考えさせられました。

ポスターは、存在自体が絵画よりずっとオープンです。人の目に触れる街中に当たり前にあり、お金を出して見るものではありません。そこに貼られたりしているだけで、コミュニケーションを生むという、ある意味稀有な存在です。

そしてまさしくこの展覧会で示されたように、時代の空気感をそのまま映し出す芸術品でもあると思います。そしてその空気感はみんなが共有しているもの。だからこそ、ポスターってとても重要だと思うんです。

時代や、文化的背景は違っても、どの国でもポスターは作られています。その国々によって、ポスターの誕生の仕方も、ポスターで何を見せるのかも、何もかもが違います。今回はヨーロッパを中心としたポスターのあり方を見ましたが、もっとポスターの存在を意識して、自分の国のポスターのありようも考えていくべきなのではないかな、とも思いました。

開催情報

『20世紀のポスター[図像と文字の風景]―ビジュアルコミュニケーションは可能か?』
1月30日(土)~4月11日(日)、東京都庭園美術館にて開催

1910~20年代のヨーロッパで、芸術・デザインに革新をもたらした“構成主義”。図像と文字を幾何学的・抽象的な融和のもとに構成しようとした、ポスター芸術におけるこのデザインの潮流を、竹尾ポスターコレクション(多摩美術大学寄託)で紹介する。

構成・文:糸瀬ふみ 撮影:源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。アートへの関心が高く、さまざまなメディアでアートに関する情報を発信している。

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