左から 渡部玄一、水夏希、佐賀龍彦 撮影:源賀津己
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2019年12月に初演され好評を得た、ストーリー・コンサート『クララ-愛の物語-』が再演される。本作は、読売日本交響楽団のチェリスト渡部玄一が生み出した、クラシック演奏×朗読という構成が魅力の作品。今回、演奏は岡田愛(ソプラノ)、枝並千花(ヴァイオリン)、渡部玄一(チェロ)、島田彩乃(ピアノ)の4名、朗読はふたり(水夏希&佐賀龍彦[LE VELVETS]/伊波杏樹&渡辺大輔)で上演される。
ドイツの天才作曲家ロベルト・シューマンとヨハネス・ブラームス、彼らを愛し支えたクララ・シューマンの物語を、彼らが生み出した音楽と共に聴かせる本作について、作・演出の渡部玄一、水夏希&佐賀龍彦ペアに話を聞いた。
自分のことのようにクラシック音楽を楽しんでほしい
――最初に少し初演について伺いたいのですが、渡部さんと、初演にも出演された水さんはいかがでしたか?
渡部 音楽家の仲間も観に来てくださったのですが、「すごくよかった」と言ってくれて、その後、彼らのコンサートでも「監修してほしい」と相談されました(笑)。新しい試みの舞台様式をつくりたいと思っているので、今回再演できることも非常に嬉しく思っています。
――渡部さんは、そもそもどうしてこの作品をつくられたのですか?
渡部 クラシック音楽はどうしても「敷居が高い」と言われますよね。そりゃあ芸術作品だから奥深くはありますが、決して敷居は高くはないんだよということを伝えたくて考えたものです。この作品で、クラシック音楽も同じ“人間”がつくったものであるということを、なるべく多くの人に知っていただきたいです。俳優さんの力をお借りしながら、少しでも自分のことのようにクラシック音楽を楽しんでいただけるような機会にしていきたいです。
――水さんは出演されていかがでしたか?
水 新しい世界が開ける作品だと思いました。世界観が独特で楽しかったですし、私のファンの方は普段クラシック音楽に直接触れる機会が少ない方もいらっしゃるので、こんなふうに生演奏をホールで聴くことの楽しさや、バックボーンを知ることで音楽がより身近に感じられる楽しさを感じられたという反響をいただきましたね。
――初参加の佐賀さんはこの作品についてどのように思われていますか?
佐賀 普段クラシック音楽を聴いている時は、何となく「この曲いいな」とか「落ち着くな」というような気持ちになることがあります。この舞台では朗読が加わり作曲家の人生や気持ちを感じることによって、クラシック音楽の輪郭がよりハッキリするように思いました。今までなかった角度からクラシックに光が当たり、聴いている方にとって新鮮な刺激になるんじゃないかと思っています。
ふたりが組む価値というのを感じさせてもらえている
――今日はこれから2度目のお稽古だそうですね。
佐賀 お稽古、楽しいです。僕はシューマンとブラームスを演じるのですが、今ある資料や文書を読んで、「この曲の時には本当はこうだったんじゃないか」と勝手に想像しながらつくっています。最終的にはお客様に「どう思いますか」と問いかけられるようなところまでつくり上げたいです。
――ふたりの音楽家を演じるって、きっと大変ですよね。
佐賀 (黙って深く頷く)
一同 (笑)
佐賀 全く違う人ですからね。ブラームスはシューマンの弟子ですが、目指している音楽もやっぱり違う気がしています。だからこそ、シューマンがブラームスをすぐ認めたことを面白いと感じるのですが。先日、初めて読み合わせをしたときには、ちょっとどうしていいのかわからないような感覚になりましたね。
――そこに彼らが作った音楽が流れることで演じやすくなるものですか?
佐賀 実はまだそれを経験していないんですよ。
渡部 そこは今日これからなんです。音楽のメンバーも来て、生演奏で合わせます。
水 めちゃくちゃテンション上がるよ! やっぱり楽器から出てくる波動があるから。朗読と録音の音楽では生まれない空気感が生まれる。すごく楽しいよ。
佐賀 わ、楽しみです!
――渡部さんと水さんは再演ですがどう感じていらっしゃいますか?
渡部 僕はね、今回も水さんがいてくださることで本当に安心感がある。水さんは誠実な方で、演じるクララのこともよく調べてくださっているんですよ。そうやってまた新しくやれるのが楽しみです。
水 前回は役作りのためにクララとブラームスの手紙を読んだのですが、今回はクララの生い立ちを読んでいるんです。一般的にはあまり知られていないけど、実はすごい方なんだということがわかってきました。
渡部 クララは「名実ともに」という人ですからね。
水 しかも彼女が生きた時代って、有名音楽家がたくさんいるんですよね。
渡部 そう。1809~1811年にショパン、シューマン、リスト、メンデルスゾーンが生まれて、その何年か後にワーグナーが生まれました。みんな同世代なんですよね。そのみんなと交流があったのがクララです。
――想像しただけですごい方ですね。
水 そうなんですよ。そういう人物を演じることができるのは役者の醍醐味でもあるので、そこは楽しみたいですし、前回より深めていきたいです。
――水さんと佐賀さんはDramatico-musical『BLUE RAIN』(’20年)以来ですが、今作でのお互いの印象をお聞かせください。
水 役柄の情熱的なところや一途なところが佐賀さんとピッタリなんじゃないかと思っています。それに佐賀さんは音楽大学出身なので、クラシック音楽とも関係が深いんじゃない?
佐賀 先日思い出したのですが、大学入試のピアノの試験がシューマンの曲でした。楽譜を見て「意味がわからない」と感じたのを覚えています。モーツァルトやヴェートーベンってどこかわかりやすさがあるのですが、シューマンは弾けば弾くほどわからなくなったんですよね。
渡部 変な人だからね(笑)。
――水さんの印象はいかがですか?
佐賀 水さんは深いんですよ、一つひとつが。お芝居で「なぜ今そうされたんですか?」と尋ねたら、いくらでも話してくださりそうなものを感じます。だから今回も、水さんから生まれる雰囲気に身を任せ……人任せ。
水 あはは!
佐賀 クララとして生きてくださるので、そのまま感情を返していける安心感がありますね。
――渡部さんにもう1チームの伊波杏樹さん&渡辺大輔さんの印象もお聞きしたいです。
渡部 実はもう1チームはスケジュールの都合で、まだ稽古が始まっていないんですよ。だからドキドキです(笑)。だけど今、水さんと佐賀さんが構築していく世界を見ていると、おふたりが組む価値というのをしっかりと感じさせてもらえていますので、もう1チームもどうなるか楽しみにしています。
取材・文:中川實穗 撮影:源賀津己
ストーリー・コンサート『クララ-愛の物語-』
作・演出:
渡部玄一(読売日本交響楽団)
出演:
水夏希/佐賀龍彦(LE VELVETS)
伊波杏樹/渡辺大輔
演奏:
ソプラノ 岡田愛 / ヴァイオリン 枝並千花 / チェロ 渡部玄一 / ピアノ 島田彩乃
公演日・会場:
7月14日(水)14:00開演(Aチーム)/18:00開演(Aチーム)
7月15日(木)14:00開演(Bチーム)/18:00開演(Bチーム)
*Aチーム(クララ役:伊波杏樹/シューマン・ブラームス役:渡辺大輔)
*Bチーム(クララ役:水夏希/シューマン・ブラームス役:佐賀龍彦)
会場:彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール
チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2172881