海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔
クリント・イーストウッド
連載
第2回
─── 前回はジェームズ・キャメロンのお話をお伺いしましたが、今回はクリント・イーストウッドです。ちょうど、彼が監督&主演した『運び屋』が公開されたばかりですよね。
これを撮ったときは87か88歳で、監督&主演はキツくないかと思ってしまいますが、さすが御大、疲れ知らずでちゃんとこなしている。というか、もはや“演技している”という感じじゃなくって、ジでやっているとしか思えない(笑)。
─── 実在した90歳のドラッグの“運び屋”のお話で、イーストウッド自身がそのじいさんを演じている。
『グラン・トリノ』以来ですよね、監督&主演を兼ねるのは。私が彼に初めてインタビューしたのはその『グラン・トリノ』のとき。めちゃくちゃ緊張しましたよ。実施する前も彼の過去のインタビューやドキュメンタリーを観たり読んだりして、かなり予習をした。それでも芸歴が長いからフォローしきれてないのは分かっていて、すごく不安でしたね。
でも当人は、驚くほど温和で礼儀正しいじいちゃん。年のせいもあるだろうけど、小さな声で訥々と喋り、こちらの質問の意図をしっかりくんだ答えを返してくれるんです。すぐに緊張がほぐれましたね。それに、年をとってもとても魅力的!
─── 『運び屋』でも、女性にモテモテのシーンがありましたよね。
そうそう。“現役”であることをさりげにアピールしているところが微笑ましい(笑)。実際、イーストウッドは女性関係が華やかで、いろんな女性とつきあったり結婚したり離婚したりしている。
これまで演じたキャラクターでもっとも自分に近いのは? と聞いたら「自己分析するタイプではないから分からないが、すべてのキャラクターに“自分”が投影されているだろう」と言いつつ「でも妻は、『マディソン郡の橋』の主人公に似ているといつも言うんだよ」とテレながら言う。“いつも”というのがすごくないですか?(笑)
『マディソン郡の橋』の主人公は、孤独を抱えたカメラマンで、運命の人に出会い、その想いを心に秘めたまま人生を送るという選択をする人ですからね。奥さんにとっては究極のロマンチストに見えたんでしょうね。
─── そう見えませんでしたか?
ロマンチストかは分かりませんが、そうやってテレるところなんて女性心に響くでしょ? しかも、別れ際に「サンキュー」とお礼を言うと無言なんですよ。どうしたのかと思ったら、しばらくして「ありがと」と日本語で返してくれた。「ありがとう」という言葉を思い出そうとしていたんだなーって。そういうところ、やっぱり素敵だと思いましたよ。