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立川直樹のエンタテインメント探偵

クラシック音楽祭『BBC Proms』に登場したジャズ作編曲家・挾間美帆は日本のシーンに正しい音楽的刺激を与えて欲しいアーティストだ!

隔週水曜

第38回

19/11/27(水)

挾間美帆(作編曲家・ジャズ室内楽団m_unit主宰)/『大和証券グループpresents BBC Proms JAPAN 2019~Prom3(プロム3)/JAZZ from America(ジャズ・フロム・アメリカ)』

毎回、ひとつの曲がどうやって生まれたかを関係者のインタビューや現地取材なども交えて構成する素晴しい音楽番組『SONG TO SOUL』(BS-TBS)が1時間から半分の枠になってしまった。放送日も日曜の夜11時から火曜の同じ時間帯に移り、平日なので落ち着かない気分で、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの『ノー・ウーマン、ノー・クライ』の回を観るが、リタ・マーリーや、歌の中に出てくるジョージィのインタビューなどが最高に人間味があり、やはり30分は短いと残念な気持になった。BSにもどんどん中波の音楽のような番組作りのノリが忍びより、おもしろい食の探訪番組なども変化を余儀なくされている。

それは日増しに飾りの要素が強くなっているライヴ・コンサートのシーンについても言えること。だからイギリス発、世界最大のクラシック音楽祭『BBC Proms』の日本初開催にあたって『ジャズ・フロム・アメリカ』と題して用意されたグラミー受賞のギターヒーロー、アカデミー賞のコンポーザー/アレンジャー/ピアニスト、ブラジルを代表するコンポーザー/シンガーが奇跡のリユニオンを果たしたリー・リトナー&デイヴ・グルーシン・ドリーム・バンド・フィーチャリング・イヴァン・リンスのライヴに加え、ニューヨークを拠点にインターナショナルに活躍し、注目を集めている日本人ジャズ作曲家、挾間美帆が実力派ミュージシャンがそろった自身のバンド“m_unit”を率いて登場した11月1日夜のオーチャードホールは、3時間近く“いい音楽”で満たされ、満員の観客は心の底から本物の音楽家たちに拍手を贈ったのである。来年の10月24日には再びオーチャードホールでニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・アシュレイ・ボーダー率いるダンサーによるジャズ&ダンス・プロジェクトの日本初演が決定している挾間美帆の指揮者としての才能と魅力も中々のもので、日本のシーンにも正しい音楽的刺激を与えて欲しいアーティストだと思う。

『大和証券グループpresents BBC Proms JAPAN 2019~Prom3(プロム3)/JAZZ from America(ジャズ・フロム・アメリカ)』

“本物”の力は凄い。井上尚弥・バンタム級決勝、ワタリウム美術館『フィリップ・パレーノ展』

井上尚弥

そして刺激と言えば、11月7日にさいたまスーパーアリーナで行われた団体の枠を越え、トップ8選手で世界一を決めるトーナメント・ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)のバンタム級決勝で、WBA・IBF世界バンタム級王者、井上尚弥と世界5階級制覇王者のノニト・ドネアの試合は、最上級のエンタテインメントだった。18戦18勝16KOという戦績で、これまで早い回にKO決着で勝利を重ねてきて、一度も顔に傷を負ったことのない井上が2ラウンドで初めての出血。「10代の頃からの憧れで目標」「ドネアを倒した先にこれまで本人が見たことのない景色がある」「世代交代を成し遂げるだけだと思っている」と語る井上は、「世代交代には俺という大きな壁がある」と言葉を返したドネアと12ラウンド戦い、判定で勝利し“世界一”の勲章を手にしたが、剣豪小説のようなその試合は解説者が口にした「討ち合いだけがボクシングじゃなく、技術を競い合うのもボクシング」という言葉が示しているようにあらゆる意味でレベルが高いものだった。翌日、会った何人かの人ともこの試合の話になり、やはり“本物”の力は凄いと実感した。

リアリティー・パークの雪だるま, 1995
Courtesy the artist and Esther Schipper, Berlin
Photo (C) Philippe Parreno

それはエンタテインメント全般について言えることで、世界的にも注目を集めている森永邦彦のANREALAGEのコレクションの見せ方も、ワタリウム美術館で11月2日からスタートした(来年の3月22日まで)、フィリップ・パレーノの展覧会『オブジェが語りはじめると』も、山沢栄子の写真展も“手の仕事”の極致と表現するにふさわしいもので、“見る時間”の大切さということを強く感じたのである。

『ティーンスピリット』の試写を観てから、東京都写真美術館の山沢栄子展の特別内覧会に出かけ、翌日は午後1時から『パリの恋人たち』『ラスト・クリスマス』『オルジャスの白い馬』と試写3本立てを仕事と並行してこなせるのもそれがあるからだろう。そして6時から始まった『オルジャスの白い馬』の掛け値なしの素晴しさ。疲れも何も吹き飛んでしまったが、この続きは水先案内で書こうと思う。

作品紹介

『SONG TO SOUL One piece of eternity ~永遠の一曲~』

BS-TBS
※毎週火曜23:00〜23:54、または23:30〜23:54に放送。(23時から放送の場合は1時間、23:30から放送の場合は30分に短縮)

『大和証券グループpresents BBC Proms JAPAN 2019~Prom3(プロム3)/JAZZ from America(ジャズ・フロム・アメリカ)』

日程:2019年11月1日
会場:Bunkamuraオーチャードホール

WBSSバンタム級決勝 井上尚弥vsノニト・ドネア

日程:2019年11月7日
会場:さいたまスーパーアリーナ

『フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると』

会期:2019年11月2日〜2020年3月22日
開館時間:11:00~19:00(毎週水曜は21:00まで延長)
休館日:月曜日(11/4、12/30、1/13、2/24は開館)、12/31~1/3は休館
入館料:大人1000円 / 学生(25歳以下)800円
会場:ワタリウム美術館(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6/Tel:03-3402-3001)

『山沢栄子 私の現代』

会期:2019年11月12日~2020年1月26日
会場:東京都写真美術館

『オルジャスの白い馬』(2019年・日本=カザフスタン)

2020年1月18日公開
配給:エイベックス・ピクチャーズ
監督:竹葉リサ/エルラン・ヌルムハンベトフ
出演:森山未來/サマル・イェスリャーモワ/マディ・メナイダロフ/ドゥリガ・アクモルダ

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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