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『マーダー★ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~』特集

眞形隆之(「マーダーミステリー伝道師)×桒山哲治(朝日放送テレビ)インタビュー

特別連載

第3回

21/3/12(金)

マーダーミステリー伝道師・眞形隆之(左)と朝日放送テレビプロデューサー・桒山哲治(右) 撮影:稲澤朝博

「マーダーミステリー」と新人発掘オーディションを合体させてドラマを作る! その意表をついた発想はどこから生まれたのか? その狙いと実際にON AIRされるドラマはどんな仕上がりになるのが? その真相に迫るべく、マーダーミステリー伝道師の眞形隆之氏と「M-1グランプリ」「ポツンと一軒家」などのヒット番組で知られる朝日放送テレビのプロデューサー桒山哲治氏を直撃! 「マーダーミステリーゲーム」の面白さとともに、前代未聞の新ドラマ『マーダー★ミステリー~探偵・斑目瑞男の事件簿~』の構想をたっぷり語ってもらいました。

■CHAPTER 1 企画の始まりと狙い

眞形隆之氏

── 「マーダーミステリー」に新人俳優発掘オーディションの要素をプラスした、今回の『マーダー★ミステリー~探偵・斑目瑞男の事件簿~』の企画はどうやって生まれたんですか?

眞形 最初は単純に「マーダーミステリー」を番組にしたいと思っただけなんですけど、ゲームで遊んでいる人たちをただ映しても面白くない。そんな時に桒山さんたちと話しているうちに、「M-1グランプリ」のヒリヒリした真剣勝負を「マーダーミステリー」と融合させられないかと。役者たちの演技バトルの要素を加えたら面白いものになるんじゃないかな? と考え、形になっていった感じですね。学生演劇の経験もある桒山さんも「めっちゃ面白い」ってノリノリでしたね(笑)。

桒山 いちばん最初に「マーダーミステリー」のゲームを体験させてもらったら面白かったんです。それで、この面白さを世の中の人たちに上手く伝えるにはどうしたらいいんだろう? という話し合いを続けていく中で、「真剣勝負の要素を入れてみては?」というアイデアが出て。仲よしの友だち同士ではなく、オーディションのゲームバトルを勝ち上がった7人が魅せる演技で「マーダーミステリー」をやったら、ドラマチックなストーリーが出来上がるんじゃないかなと思ったんです。

桒山哲治氏

眞形 僕は日本でいちばん大きい「人狼ゲーム」の主宰でもあるんですけど、「人狼ゲーム」はイヤな奴大会になることが多いんですよね。「オマエ、喋るな!」と言う人がいたり、すごい大喧嘩にもなって「もう、やりたくない」ってやめちゃう人もいたんですけど、僕はそれが悲しくて。その解決方法が、物語を入れることだったんです。物語を入れることによってゲームがマイルドになり、人狼だと思った相手に対しても演技で接するから喧嘩をしなくなったんです。今回はその時と逆のバターンですけど、あるものに別の何かを足すと何かしらの化学反応が起こることは分かっていて、それが今回の場合は“真剣勝負”だった。でも、「M-1グランプリ」をやった桒山さんたちじゃなかったら、この企画は成立なかったかもしれないですね。

桒山 僕の中にはワクワクしかなかったですね。番組をテレビでON AIRするだけではなく、ほかの応募者たちも熾烈な演技バトルを繰り広げる第二次選考のオーディション風景を配信したり、ゲーム化や舞台化などその後の展開も期待できて。特番の企画を考えていてもそんなにワクワクすることはないんですけど、これ、ひょっとしたら日本中で大ブームになるんじゃないの?っていう興奮を覚えたんです(笑)。

■CHAPTER 2 第二次選考も「マーダーミステリー」で演技を審査

桒山哲治氏

── 今回は第一次選考の動画審査で選ばれた70人が10組に分かれ、それぞれのチームの7人が探偵や執事、降霊術師、カメラマンなどを演じながら、その中にいる犯人を暴いていく「マーダーミステリーゲーム」そのものが第二次選考でした。選考されてみて、どんな手応えや感想をお持ちですか?

桒山 殺人事件が起きるまでのプロセスとそれぞれの人物のキャラクターや設定がよくできていたから、どのチームも魅力的でした。中でも(筆者が見せてもらった)このチームの7人はそれぞれ自分の役割を理解して、見せ場をちゃんと作っていたから、笑いあり、涙ありのドラマチックで華やかな内容になっていたと思います。

眞形 正直、見ていて面白いチームと面白くないチームがあるんですけど、いまのは面白い回でした。なぜ面白いかと言うと、演技がちゃんとできている人や演技をしている時間が長い人が多かったから。逆に、つまらないチームの人たちはゲームをしちゃっていて、それぞれの役の秘密や嘘などの情報を開示しない。秘密のままだと話が動かないから退屈だし、ボードゲームをただやっているだけになってしまうから、そんなものを見せられても別に面白くないんです。

桒山 面白くないチームは明かされる真実が後半の4分の1に詰まっちゃうことも多いんですけど、いまの回は前半でも中盤でもバランスよく真実が分かる展開になっていたから惹きつけられました。

眞形隆之氏

眞形 ウイルスじゃないですけど、ゲーム、ゲームしているような人がひとり入ると感染して、チーム全体がゲームしているような感じになる。逆に演技が多いチームは、そのいい流れに乗ってほかの人たちの面白い芝居も引き出すことになるんです。

桒山 7人の中に1人か2人、「マーダーミステリーゲーム」の経験者がいた方が話の展開が早い印象がありましたね。

眞形 そうですね。初めてやる人はどのタイミングで何をしたらいいのか分からないから、動きが遅い。「マーダーミステリーゲーム」慣れしている人はやっぱり勘がいいのか、予め用意してあるヒントが書かれたカードも自分のリズムでパパパッて取りに行くし、無駄な動きをしない。そこの差はあると思います。

大事なのは理解力と瞬発力、そしてもう一度見たいと思わせる演技力

二次審査の様子

── おふたりは、演者のどこにポイントを置いて見ていらっしゃったんですか?

眞形 単純にこの人は面白いのか、面白くないのか? この人をもう1回見たいと思うのか? ということですね。それと、もうひとつは理解力。理解してない人は時間を使っても、素っ頓狂なことをずっと言い続けるだけになる。別に犯人が誰なのか言い当てられなくても、間違っていてもいいんです。見たいのは、その人がどんな演技をしてくれるのか? なので。でも、芝居のピントが合っている人と合っていない人は、やっぱり見ていれば分かるんです。

── 7人が何人かに分かれて“密談”をするところでも、その人のスキルが試されますね。

眞形 そうですね。上手く話を持ちかけられない人や先に話しているふたりの輪の中に入っていけない人もいて。そこではコミュニケーション能力が分かるし、さっき言った“面白い人”に繋がるんですけど、誰と喋っても面白い人は実際にいます。ここでも「マーダーミステリーゲーム」をやっていた人とやっていない人の差はあるかもしれないけど、やっている人は話の引き出し方が上手いし、話に入るタイミングが見えている。しかも、上手い人はタイミングを計るのではなく、瞬発力でポーンって入っていけるんです。

二次審査より、密談の様子

桒山 僕も瞬発力と言うか、機転が利くかどうかが大きいような気がします。その役を生きていればちゃんと返せると思うんですけど、理解力がなかったり、瞬発力がないと“この状況は何だ? 分からない、分からない”ってなってリアクションがとれなくなってしまう。そういう意味では、叩けば響く、何が起きても打ち返せる能力が要求されると思います。

眞形 いまの回で降霊術師を演じた女性も、ガヤの上手さが好評価のポイントでした。「オマエは〇〇だ」って言われた時に「何で私なの?」って上手く返していたけれど、それが瞬時にできるのは物語にちゃんと入っていて、ほかの人の話を聞いているから。台本がないのにちゃんとツッコミができるその能力を、僕は評価してあげたいですね。

桒山 台本があると先の展開が読めるけど、今回は実際にON AIRされる番組にしてもインプロビゼーション(即興芝居)の要素が強いので、瞬間瞬間に生まれる質のいいアドリブを重視したコンテンツになればいいなと考えています。

眞形 例えば「ちゃんと聞いてくださいよ!」って立ち上がるだけでも見え方が全然違うのに、やってない人もいるんです。「いいですか、聞いてくださいね」って動きながら言うだけでも印象が変わるのに、それができない人もいる。そこにはその人のセンスが如実に表れると思います。

どんなに上手な芝居にも勝てない“素”のリアクション

二次審査の様子

── 演技経験がある人とない人でも、そこは変わってきますね。

眞形 芝居をやっている人とお笑いの人はちょっと強いと思いました。アドリブが効きますから。逆に見た目は綺麗でも芝居ができない人やアドリブが効かない人はさっきも言ったように情報を隠してしまうから話が転ばないし、爆笑したり、号泣しちゃうような展開にはならない。“ここで、これを言った方がオイシイよね”とか“これを言うと、役の立場は不利になるけれど、面白い見せ場になるよね”という感覚が素人にはないんです。そこが大きな違いです。

── チームの振り分けによって、ポンテンシャルが低い人と組むことになる可能性もありますよね。

桒山 それもあると思います。組み合わせの妙ですね。

眞形 でも、組んだ相手が悪くても魅せられる人はいるんです。要は自分のワールドまで作れちゃう人。そういう人は強いですね。

桒山 例えば犯人役の人が、明かされたある真実によって固まってしまうくだりがありましたが、番組として放送する時には、そういう表情を1カット入れるだけで彼の動揺が伝わるし、深みに繋がる。視聴者も真相が分かったときに“だから、彼はあのとき、あんな表情をしていたんだ!”と腑に落ちると思うんですよ。

眞形 これが普通のドラマと違うのは、誰かの告白によって状況が一変するところです。ある人物の秘密や嘘が明かされたときに、どんな人間でも“素”になることが多い。その“素”のリアクションには、どんなに芝居が上手い役者さんも勝てないですよね。もはや芝居じゃない。そのタイミングやリアクションの大きさが、「マーダーミステリー」をベースにした今回の番組を観たときの面白さになると思います。

■CHAPTER 3 どんな番組になるのか!?

眞形隆之氏

── ON AIRされる実際の番組は105分の尺のようですが、どんな構成になるのでしょう?

眞形 最終的に残った7人が新たに用意した「マーダーミステリー」の設定の中で与えられたそれぞれの役になりきり、犯人を暴いていくドラマを放送します。今日観ていただいた、第二次選考の模様やメイキングなどは配信や別番組で放送できればいいなと考えています。

── 視聴者も7人のプレイヤーと一緒に犯人が誰なのか探りながら観ていく感じになるんですか?

桒山 犯人が分かった上で、殺人の動機は? 凶器は何? というミステリーで後半は引っ張っていく形になると思います。物語の起伏をどうつけたらいいのか? 視聴者を引っ張るにはどうしたらいいのか? ということに関しては番組スタッフとこれから詰めていくんですけど、どこで犯人を明かすかに関して、すごく悩んでいますね。

── プレイヤーが何組かに分かれて密談をするシーンはどんな風に見せるつもりですか?

桒山 例えば3チームに分かれた密談がそれぞれ5分だとしても、すべて見せると15分になってしまうので、明かすところと明かさないところは編集で調整します。

決勝戦は神戸の洋館を舞台に、よりリアルなセットで

桒山哲治氏

── 決勝選は第二次選考のような会議室ではなく、神戸の洋館を使って撮影するそうですね。

桒山 そうです。実際にある洋館の大広間に集まってもらって、撮影します。

眞形 大広間のほかに密談をする場所を3つほど用意し、カメラの位置を決めて撮っていきます。

桒山 カメラマンが映り込まない形で撮れるようにしようと思っています。

── 決勝戦でも、リハーサルはせずにカメラをいきなり回し始めるんですか?

桒山 リハはしないです。7人それぞれの秘密や役割などは事前に綿密に打ち合わせをしますけど……。

眞形 絶対にやってもらわなきゃいけない行動ややってはいけないことなど、決めごとは事前に再度チェックして臨んでもらいます。

桒山 あと、決勝戦では第二次選考のような物の名前を書いたカードではなく、実際に小道具を用意したり、遺体が本当に倒れている状況を作って、よりリアルな緊迫感が出るようにします。

眞形 芝居そのものは、ぶっつけ本番が面白いと思うんですよ。大広間に入ってくる時の7人の“うわ~緊張してきた~”みたいな空気はやっぱり普通のドラマとは違うと思うので、そこはクローズアップできればいいですね。

生瀬勝久ら審査員も加わってナンバーワンを決定

ABCテレビ『マーダー★ミステリー~探偵・班目瑞夫の事件簿~』

── 今回、“スター発掘”というオーディション的な側面もありますが、その次世代スターはどうやって選出するんですか?

桒山 探偵・斑目瑞男役の劇団ひとりさん、その助手・村城和兎役の剛力彩芽さんに加え、審査員として、俳優の生瀬勝久さん、『おっさんずラブ』の瑠東東一郎監督、『ドクターX』の内山聖子プロデューサーにお願いしていて、皆さんに芝居がいちばん印象に残った人や物語の展開に大きく寄与した人の中から、ナンバーワンを選んでもらおうと思っています。

── 審査員は決勝戦だけを観てジャッジをするんですか?

桒山 そうです。第二次選考などは見せないつもりです。

── 劇団ひとりさんを起用された理由は? 「マーダーミステリー」をやっていたんですか?

眞形 ひとりさんは「マーダーミステリー」を知らなかったですね。

桒山 でも、番組の主旨を伝えたら面白がってくれて、企画に乗ってくれたんです。

眞形 ひとりさんはパッと即興でやるのが得意な芸風で、文章も書ければ映画監督もやっている。そういうマルチな活躍をしている人はほかにも何人かいますけど、中でもひとりさんは知名度もトップで、この人が参加している番組なら観てみたいなと思わせるところがありますよね。

桒山 視聴者目線で、どこをどう楽しめばいいのかというラインづけをしてもらうのに適任だと思ったんです。

眞形 ひとりさんならツッコミや毒舌も面白いものになるだろうし、嫌味にならない。そこでバチッと決まったんです。

視聴者だけでなく作り手たちも驚かせることができる番組

── どんな番組になりそうですか?

眞形 俳優やタレント、芸人などではない一般の人が活躍できる番組が少なくなって、最近は売れている人だけをキャスティングする無難なものばかりになっています。僕らの番組は、そういうものとは違い、一般人のガツガツした感じやヒリヒリ感があるものになると思います。しかも、僕らが二次審査に選んだ7人はどの組もそれぞれ人間的に面白いし、瞬発力があって、光るものがあった。そこから決勝戦に選ばれた7人がひとつのステージに上がってバトルをしたらどれだけ面白いものになるのか!? そこでは視聴者だけではなく、ほかの作り手たちも“お!”っと驚かせることができると自負しています。

桒山 作り手の僕らでさえどうなるか分からない展開の面白さもありますね。

眞形 設定はあるけれど、台本はないから予定調和にならないんです。さっき言ったヒリヒリした感じとは違う、先が見えないゾクゾク感と何が起こるんだ? というワクワク感が同居した面白さと言うんでしょうか(笑)。7人のプレイヤーが作り上げていくドラマを観て泣いたり、笑ったり、何、この感情が揺さぶられる不思議な感じは?ってなるところが僕らの番組の醍醐味だと思っています。

■CHAPTER 4 番組に期待していること、未来の展望

眞形隆之氏(左)×桒山哲治氏(右)

── 桒山さんは数々のヒット番組を手がけてらっしゃいますけど、面白い番組になり得る鉱脈を発見する秘訣みたいなものはあるのでしょうか?

桒山 ガチガチのヒットメイカーではないので毎回模索なんですけど(笑)、企画の主旨を聞いたときにムチャクチャ胸が躍るものは特番も絶対に成功するんです。ほかのディレクターに聞いてもたぶんそう言うと思うんですけど、さっきも話したように、そのときめきが今回の「マーダーミステリー」は強かったんですね。しかも、僕が実際にゲームをしてからON AIRまでに1年半の時間を要したことになるんですけど、ひとつの番組に1年半もかけることなんてなかなかないし、それだけ万全を期しているので、面白くなるのは間違いない。面白がり方もちゃんと伝えられて、配信でもバズって、ブームの火つけ役になれたら嬉しいですね(笑)。

眞形 この企画をいろんなところで話すんですけど、どこに行っても100パーセント「面白い」って言われるんです。だから、企画は間違いなく面白いんだなと勝手に思っていて(笑)。あとは、それをどう仕上げるのか? にかかってくるわけですけど、僕らは面白いものをずっと作ってきたし、面白いものを作ってきた人間が作る面白いものは絶対に面白い! と思っています。

ジャンルの垣根を超えて参加できる番組になれば

── 思い描いているその先の展望は?

眞形 番組が2回3回と続いて、“俺も出たい!”と思う人が増えたらいいですね。何千人、何万人もの人たちが“この番組でチャンスをつかみたい!”という想いで応募してきてくれたら、もっとスゴいバトルが観られますから。

桒山 今回は応募者が251名でしたけど、それぐらいの人数の人たちが「マーダーミステリー」のオーディションに参加したら、すごいブームになると思います。

眞形 個人的には一般の人だけでなく、プロの俳優もお笑いの人も、2.5次元の俳優や声優もみんな参加して、戦えばいいじゃん! と思っていて(笑)。将来的には、その中から、いちばん面白いのは誰だ!? を決めるような番組を作りたいし、それを僕は観たいんですよ!

取材・文:イソガイマサト 撮影:稲澤朝博

番組情報

『マーダー★ミステリー~探偵・班目瑞夫の事件簿~』

3月19日(金)深夜1時34分~ ABCテレビにて放送。ネット配信も予定

番組公式サイト:https://www.asahi.co.jp/mudermystery/
番組公式Twitter:@MadarameMisuo
眞形隆之公式Twitter:@newmagata

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