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『映画 えんとつ町のプペル』監督が語る。「家族で観て楽しめるものにしたい」

ぴあ

20/12/31(木) 12:00

『映画 えんとつ町のプペル』

2016年に発表され、60万部を突破した大ヒット絵本を映画化した『映画 えんとつ町のプペル』が25日(金)から公開になる。『鉄コン筋クリート』や『海獣の子供』などの作品で国内外に熱狂的なファンをもつSTUDIO4℃がアニメーション制作を担当し、同社で長年に渡ってCG部門に所属してきた廣田裕介が監督を務めた。

「映画のお話がくる前なんですけど、西野さんの絵本を本屋で最初に見かけたときに、妻が“ちょっとSTUDIO4℃っぽいね”って言って、僕も確かにそうだなと思った記憶があるんです」と笑みを見せる廣田監督は、この本作でこれまでスタジオが培ってきたノウハウ、テクニックを総結集して制作にあたったという。

「これまでは湯浅政明さん(『マインドゲーム』)だったり、渡辺歩さん(『海獣の子供』)だったり外部から監督さんを招いて制作することが多かったんですけど、この映画は最初から4℃で社員としてやってきた人間が監督をさせてもらう初めての作品で、社内のスタッフが集まって作っているので4℃の“純度”は高いと思います」

本作の舞台は、四方を高い壁に囲まれたえんとつ町。ここでは、あちこちに建てられた煙突から立ちのぼる煙が頭上を覆っているが、煙突そうじ屋の少年ルビッチだけは、突然消えた父の言葉を信じ、“煙の向こうには星がある”と信じている。そんなある日、ルビッチはゴミから生まれた“ゴミ人間”のプペルに出会い、この町に隠されていた謎を解き明かし、煙におおわれた町に奇跡を起こす壮大な冒険に出る。

設定からわかる通り、舞台となるえんとつ町はつねに煙に覆われているが、制作陣は、キャラクター、空間を埋め尽くす建物、煙を巧みに画面に配置しながら、物語運びやアクションの明快さを損なわない構図を作り上げていった。

「煙突から煙が出ることがわかっていたので、奥行きが出しにくいだろうし、ずっと画面上を煙が動いているとキャラクターの邪魔になることは初期の段階からわかっていました。だから、画面の要素をどこまで間引いて、画面が伝えたいことの邪魔にならないようにしていくのかを考えていきました。その一方で、えんとつ町は建物が密集している場所でもあるので密度も上げて……すべてのバランスをとることが重要でした。

またキャラクターもひとつひとつ表情や、ポーズ、動きを本当にこだわって作ったんです。無機質に見られがちなCGアニメーションをいかに親しみやすいものに見せることができるのか?に力を入れたので、キャラクターをしっかりと立たせるように画面を構成していきました」

監督が語る通り、本作のキャラクターはすべてが3DCGで描かれているが、親しみやすく、柔らかなタッチで描かれており、日本の伝統的な手描きアニメーションの持っているタッチやデフォルメの技術が活かされている。

「これまで作画のアニメーションの中に3DCGを入れ込んで、それをいかに馴染ませていくか?をやってきたので、僕らの中ではいつも“作画のようなCG”が理想形だったんです。だからこの映画でもそこを追求したいと思いました。日本の作画のアニメーションは本当に完成されていると思いますし、日本産のアニメーションの売りだとも思うので、そこは手描きだろうとCGだろうと生かしていきたい部分なんです。

これまでは手描きのアニメーションの中にCGを入れてきたので“ここはCGだな”と思われたらダメだと思ってずっとやってきたんですよ。そういう意味ではこれまで培ってきたものを全部出す気持ちで作りましたね」

監督が脚本づくりの過程で“提案”したもの

同時に廣田監督は脚本づくりの段階から製作総指揮・原作・脚本の西野亮廣と話し合いを重ねたという。

「西野さんも含めて何度も話し合いを重ねていく中で脚本が完成していったんですけど、僕が提案させてもらったのは、ルビッチと家族の関係をもっとしっかりと描きたいということでした。ルビッチの父親像、母親像がボヤけてしまうとドラマのリアリティが薄れてしまう気がしたので、その点をしっかりと描いて、同時にこのドラマの中で家族自体も成長していくようにしたいという意識がありました。

おそらくですけど、今後、作品をつくるにあたって自分が重視したいのは、“家族”だったり、その絆や成長になってくるんじゃないかなと思っています。数年前まではそんなこと気にしたことなかったんですけど、自分に家族や子供ができたことが大きくて、子供にとっての父親像や母親像をすごく意識するようになったんですよ。そのことがこの映画にも反映されていると思いますし、何よりも子供が観て楽しめる、家族で観て楽しめるものにしたいという気持ちがありました。

これまでのSTUDIO4℃の作品は、どちらかと言えば中高生以上のお客さんに向けた作品が多かったと思うんですけど、小学生だったり、もっと小さな子供でも楽しめる映画をつくってみたいと思っていたので、この映画のオファーをいただいた時には、そこが一番の決め手になりました」

本作は人気絵本が原作で、作者が自ら脚本も手がけた作品だが、完成した映画はそこにSTUDIO4℃が長年にわたって積み上げてきたテクニックやノウハウ、そして廣田監督の作品づくりにかける想いが掛け合わさり、“映画でしか味わえない”感覚が楽しめる作品になっている。

『映画 えんとつ町のプペル』
公開中
(C)西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

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