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「ドライブ・マイ・カー」カンヌ会見、濱口竜介にとって国際映画祭は「よりどころ」

ナタリー

フォトコールの様子。左から霧島れいか、濱口竜介、三浦透子、ソニア・ユアン。(c)Kazuko WAKAYAMA

第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された「ドライブ・マイ・カー」のフォトコールと記者会見が、フランス現地時間7月12日に開催された。

濱口竜介が村上春樹の短編小説を映画化した本作。妻を亡くした舞台俳優・演出家の家福が寡黙な専属ドライバーのみさきと出会い、それまで目を背けてきたことに気付いていくさまが描かれる。家福を西島秀俊、みさきを三浦透子が演じ、霧島れいかが家福の妻・音、岡田将生が俳優の高槻に扮した。フォトコールと記者会見には濱口と、キャストの三浦、霧島、ソニア・ユアンが出席。この日三浦はザ・ロウのワンピース、霧島はヴァレンティノのドレスで登場した。

記者会見で製作経緯を聞かれた濱口は、原作小説を2013年に読んだと明かし「もともと知人からあなたの映画と通じる部分があるのではと言われて読みました。実際、自分が映画のテーマとして取り扱ってきた例えば『演じる』ということ。加えて、この作品で一番重要なのは『車』だと思うんですが、自分は移動空間の中で親密な会話をするということを映画でも取り扱ってきたので、惹かれるところがありました」と答える。キャスティングについては「観ていただいた方皆さんが同意してくれると信じているのですが、本当に素晴らしくうまくいっていると思います」と自信をのぞかせた。

さらに濱口は、本作のテーマである“コミュニケーション”について「言葉を使っているから、コミュニケーションができていると思ったら大間違い。というとことはありますよね。むしろ、言葉がコミュニケーションを邪魔しているという側面はたくさんあるのではないでしょうか」と問いかける。そして「自分の映画はすごくおしゃべりな映画ではあるが、言葉によってコミュニケ―ションができているというふうに描いたことは実はそんなにない気がしている。そういう考えが、この映画の中の多言語劇にもなっているんだと思います」と続けた。

会見では濱口が国際映画祭という場への思いを述べる場面も。「インディペンデントという形で映画作りを始めて続けてきた身にとっては、よりどころ。自分が面白いと思ったものを作って、それが商業的になかなか流通していかないという苦い思いを初期の段階では味わっているが、映画を作るたびに国際映画祭の方が『より多くの人に見せるべきものだ』と言ってくれることはものすごく励みになった」と感謝を明かし、「映画祭が自分に対して求めてくることがあれば、お返ししていきたいと思う」と語った。

三浦は本作の現場を「心が体の状態、とりわけ声についてくるということを感じました」と回想。音や声にこだわった濱口の演出を振り返り「『相手の心を動かす声を作る』ということに時間を使わせてもらっていたので、そういった声を自分でも聞いているうちに、自分自身の心も動いてくるのだと」と話した。

また霧島は、濱口組で行われる“感情を入れない本読み”に当初は戸惑ったという。それでも「普段撮影に入るとき、何かを“しよう”としてしまうんですね。何かしようしようという気持ちが先に出てしまうことがあるというか、演技をしてしまうというか。感情を入れない本読みを重ねていく中で、だんだんそれがフラットに、自然の流れに持っていけるというか、自分の中にとても静かな何かが流れ始めるのを感じました」と自身の変化を語った。

「ドライブ・マイ・カー」は8月20日に東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。第74回カンヌ国際映画祭はフランス現地時間7月17日まで開催される。

(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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