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KREVA×亀田誠治がテンポの秘訣を解説 曲調を一瞬で変える“BPMマジック”とは?

リアルサウンド

13/11/1(金) 20:31

 音楽プロデューサーの亀田誠治がJ-POPのヒット曲を分析するテレビ番組『亀田音楽専門学校』(NHK Eテレ)の第5回が10月31日、23時25分より放送された。

 同番組は、亀田が校長、小野文惠NHKアナウンサーが助手を務め、毎回さまざまなアーティストがゲスト出演する全12回の教養番組。今回のゲスト講師にはラッパーのKREVAが登場し、亀田とともに「七変化のテンポ学」について講義した。

 KREVAは会場に、ヒップホップ・ミュージシャンには欠かせない様々な機材を用意。ブレイクビーツの発展に大きく寄与したサンプラーの名機、AKAIのMPCや、CDや音楽データでのスムーズなDJプレイを可能にしたPioneerのCDJ、世界中のクラブで使用される最高峰のDJミキサー、PioneerのDJMなどの立派な機材に、小野は興味津々。KREVAが軽くスクラッチをしてみせると、小野は「おぉ~」と目を丸くした。

テンポが曲にイメージを与える

 今回の講義のテーマである“テンポ”とは、同じ感覚で刻まれる基本的なリズムのこと。このリズムが早いか遅いかで歌の印象は大きく変わってくる。スタジオでいくつかテンポの違う曲を聴くと、人は早い曲の時は縦に、遅い曲の時は横に“ノる”傾向があることが判明。亀田はこの現象を「テンポが曲に与えるイメージ」であると説明し、「たとえば『涙そうそう』でも速く歌うと激しい印象になってしまう。その曲に一番合ったテンポを設定してあげることが大事」と補足した。

 続けて、テンポを数値化したBPM(Beats Per Minute)について解説。BPMとは、1分間に何拍打つかを表した数値で、たとえばBPM60なら1分間に60拍、時計の秒針と同じテンポであると説明した。さらにaikoの「カブトムシ」はBPM74、GLAYの「誘惑」ならBPM181であることを明かし、亀田は「BPM90以下はバラードゾーン、BPM120以上はパワーゾーン。バラードゾーンではしっとりとかキュンキュンとか、悲しみとかいうイメージ。パワーゾーンでは元気とかワクワクといったイメージがある」と語った。

 小野が「バラードの定義はなんですか?」と亀田に訊くと、亀田は「亀田式バラードの定義はBPM90以下。僕の中でのバラードはテンポで決まります。BPMが早くなると一拍の長さが短くなります。そうすると、一拍に込められる情報量が減るんですね。逆に曲のテンポが遅いと、歌手が一拍に込められる情報量が多くなる。ということで、BPMを曖昧にして、実際の現場で音楽を作る時に『もっとしっとり』と指示を出しても、曖昧な音楽にしかならないんですね。曲に適したテンポをしっかり設定しないと、表現しきれないんです」と、テンポによって印象が変わる理由を説明した。

 KREVAが「校長のパワーゾーンを教えてください」と、“亀田節”の核心に迫る質問をすると、亀田は「めっちゃ秘密やで」と苦笑いをした後、「僕は135くらいが好きですね」と明かした。対してKREVAは「僕は138です」と話し、二人の感覚が近いことが判明。また、バラードゾーンに関して亀田は「絶対83。まずは83から作り始める」と、亀田式バラードの秘訣まで語った。

BPMを変えると歌の印象はどう変わる?

 続いては、曲のテンポを落として演奏すると、どういった変化が現れるかを実践。まずは米米CLUBの「浪漫飛行」を、BPM137から115に落として演奏。小野は「曲が優しくなりました」と感想を話した。さらに、宇多田ヒカルの「First Love」をBPM90から80に落として演奏。かなりスローになった曲に対し、亀田は「僕はこのテンポじゃ歌えません」と歌うのを止めた。なぜ歌えなくなったかについて、亀田は「先ほど一拍の音が長いと、たくさんの情報を込めれると話しましたが、長すぎるとあまりにトゥーマッチで、息切れしてしまうんです。もしこの曲を本当に80でやりたいのであれば、言葉をもっと詰め込んだりとか、いろんな工夫をしなければならない」と話した。続けて「パワーゾーンとバラードゾーンをきちんと把握して、ベストなBPMを発見すること。それが名曲を生む秘訣。テンポは曲の土台なので」と、テンポの重要性を改めて強調した。

BPMマジック

 亀田はさらに、BPMを活用した秘伝のテクニックを紹介。小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」を例に、BPMが一定にも関わらず、パワーゾーンからバラードゾーンに突然変わったように聞こえる手法=BPMマジックについて解説した。同曲は、サビでは一小節の中に4拍のドラムが入っているが、平歌に入った瞬間、一小節のドラムが2拍になっている。すると、BPMは同じでもゆっくり聴こえるようになるという効果が生まれるのだ。また、拍の数が少なくなるため、そこに込められる情報量が多くなり、歌詞にスポットライトが当たる効果もあるという。

 小泉今日子の「潮騒のメモリー」の場合は、上記とは逆のパターンが使用されている。すなわち、曲の途中で泊の数が倍になり、元気な印象に変わるのだ。亀田はこのテクニックを「倍テン」と呼び、バラードゾーンとパワーゾーンを一曲の中に入れることによって、感情の振れ幅を表している、とした。

KREVAが選ぶテンポが絶妙な名曲

 KREVAはテンポが絶妙な曲として、久保田利伸 の「Love Reborn」を紹介。BPM64の同曲を「バラードゾーンの中でもかなり遅いほうだと思うんですけど、遅さを感じさせない。遅いことを気づかせずに聴かせるのが絶妙なテンポ感だなと思います」と評した。亀田は「グルーブの中にいろんな息遣いが見えるんだよね。(中略)久保田さんには、おいしく聴かせられる自分の中の絶対的なBPMっていうのがあるんでしょうね」と付け加えた。

 続いては、亀田が初めてスピッツと作ったという「さわって・変わって」をセレクト。BPM136の同曲は、例の「倍テン」が効いた一曲だ。KREVAは「この速さがあってこその『さわって・変わって』だと思うんですけど、倍テンによってさらに弾けている。良い速さに設定されている」と、そのテンポ感を称えた。

 最後にはBPM142、Y.M.Oの「君に胸キュン。」を選び、「すごく速い曲なんだけど、速い曲を聴いているなっていう感じにはならないし、ちゃんと言葉も入ってくる。今の時代のスピード感にも合っている気もする」と、1983年発表の同曲を再評価する姿勢を見せた。

 講義の終わりには、亀田がベース、KREVAがボーカルを務めるスペシャルバンドで、Y.M.Oの「君に胸キュン。」を演奏。BPMマジックや声のエフェクトなどで大胆なアレンジし、テンポの妙を伝える演奏となった。

 亀田は総括として「テンポは曲にさまざまな表情をつける重要なファクター。特に日本人は行間とか間を大切にする民族なので、ひとつの音符にどれだけ込めるかっていうところは大事。今度、音楽を聴くときはどうしてこのテンポなのか、気にして聴くといいかもしれませんね」と締めた。

 『亀田音楽専門学校』、次回11月7日の放送では「韻をふんだっていいんじゃない」というテーマで、引き続きKREVAがゲスト出演する予定だ。
(文=編集部)

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