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いま、最高の一本に出会える

アメリカ映画界を席巻中 『パラサイト 半地下の家族』現象を考える

リアルサウンド

19/12/5(木) 16:00

 先週末の映画動員ランキングは、『アナと雪の女王2』が土日2日間で動員124万8000人、興収14億4300万円をあげて、先週に引き続き圧倒的な強さで2週連続で1位に。12月1日(日)が映画の日だったこともあって、動員はオープニングの週末を上回った。累計では早くも動員338万人、興収43億円を突破。公開10日目での40億円突破は、ディズニー、ピクサーの過去のアニメーション作品の中でも最短記録。12月20日公開となる同じディズニーの『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』まで強敵となりそうな作品が現れない上に、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』とも客層があまり被らないことが予想される。いずれにせよ、この冬の映画興行はディズニー一色となる情勢だ。

参考:『アナ雪2』、海外アニメ作品オープニング記録樹立 興収255億の前作に迫る上での死角は?

 今回は日本では来年1月10日に公開されるポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』を、一足早く取り上げたい。というのも、同作は10月11日に北米で限定3館で公開されると、12万8072ドル(約1409万円)という1館当たりの今年最高興収を記録してボックスオフィスで初登場15位に。翌週、33館に拡大されてからも同じ水準でヒットを続け、ボックスオフィスのトップ10入り目前の11位まで上昇。最終的には2000万ドルを超えるという、北米における外国語映画の興行としては空前の記録が予想されている。

 『パラサイト 半地下の家族』の全米における大反響は、現在、来年のアカデミー賞にも大きな影響を与えるのではないかと言われている。日本からは新海誠監督の『天気の子』も候補作として提出されている国際長編映画賞(旧外国語映画賞。来年から名称変更)の本命中の本命と目されていた『パラサイト 半地下の家族』だが、同賞のノミネートはもちろんのこと、作品賞や監督賞といった主要賞にもノミネートされて、さらにはそこでの有力方補となるだろうとの予測が、ここにきて海外の映画メディアを賑わせている。今年のアカデミー賞ではスペイン語作品のアルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』が主要賞含む10部門にノミネートされて、最終的には監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3部門を受賞したが、どうやら韓国語作品である『パラサイト 半地下の家族』は「来年の『ROMA/ローマ』」になりそうなのだ。

 カンヌ映画祭でのパルムドール受賞に続いて、アカデミー賞の「台風の目」に。急速に進む国内の経済格差を題材にしたダークコメディーである『パラサイト 半地下の家族』がここまで世界中で受けている理由は、現在の社会情勢と無縁ではないだろう。新自由主義が加速してグローバル化が進んだ現在の世界では、韓国の社会問題はヨーロッパの社会問題であり、アメリカの社会問題でもある(もちろん、日本の社会問題でもある)。『パラサイト 半地下の家族』には韓国映画ならではの強烈なローカリズムも刻まれているが、それと同時にそこで語られているストーリーは、世界中の誰にでも思い当たるものとなっているのだ。

 ローカリズムと同時代性の高い社会的テーマ。今年公開された日本映画の「秀作」とされている作品を振り返ってみると、前者(ローカリズム)に軸足が寄りすぎていて、後者(同時代性の高い社会的テーマ)に向き合っている作品、あるいはそこで芯を食っている作品がとても少ないことに考え込んでしまう(少なくとも『天気の子』にはそのどちらもあったので、同作をアカデミー賞に提出した日本映画製作者連盟の判断は妥当だと自分は考える)。もちろん、すべての映画が海外を目指すべきだとは思わないが、特に実写映画に関しては国内作品のマーケットの縮小が年々進んでいて、その一方で各ストリーミング・サービスがグローバルで勝負のできるオリジナル・コンテンツを奪い合っている現在、その視点の必要性は今後確実に増していくだろう。『パラサイト 半地下の家族』の快挙から、日本映画界が学ぶべきことは少なくないはずだ。(宇野維正)

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