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瀬戸康史、天性の“人懐っこさ”を発揮 『まんぷく』神部役で物語を動かす

リアルサウンド

18/11/7(水) 6:00

 NHKの連続テレビ小説『まんぷく』。11月1日から登場した瀬戸康史は、戦争によって仕事も家も唯一の家族である母も亡くし、生涯孤独となった青年・神部茂を演じる。11月5日~11月10日に放送の第6週から始まる萬平(長谷川博己)の新しい事業において、重要な役割を担う。

 瀬戸はこれまで、舞台、テレビドラマ、映画と幅広く活躍してきた。演じる役柄によって、雰囲気をガラリと変える瀬戸。作中では明かされないキャラクターの背景までも感じさせる演技が魅力的な俳優だ。

 『透明なゆりかご』(NHK総合)では、それぞれの事情を抱えた妊婦たちと向き合う産婦人科の院長を演じた。冷静沈着な医師でありながら、妊婦に対し誰よりも強い誠意を見せる姿が印象的だ。

 『海月姫』(フジテレビ系)では、”女装美男子”の鯉淵蔵之介を演じ、クラゲオタクな主人公の人生をガラリと変える重要な役割を担った。可愛らしい洋服に身を包む瀬戸の美しさも魅力的だった。

 映画『寝ても覚めても』では、主人公の初恋相手と同じ顔をもつ男の同僚・串橋を演じた。串橋は、今どきのドライな青年だ。自分がかつて追っていた夢を追う女性に辛辣な態度をとるシーンでは、夢を諦めた彼の生々しい嫉妬心が表現され、若者特有の鬱屈とした感情を感じられた。

 『まんぷく』で瀬戸が演じる神部は、戦争によって仕事も金もなくなり、主人公・福子(安藤サクラ)の姉の香田家で盗みを働こうとする。しかしその初登場シーンから、神部が決して根っからの悪人ではないことが伝わってくる。生きるために仕方なく盗みを選択した神部。「警察だけは堪忍してください」と頼む神部の目に悪意はない。その後空腹で倒れ、福子たちにすいとんを食べさせてもらうシーンでは、いたって普通の青年の顔に戻り、彼本来の姿が見えてくる。瀬戸が神部を演じるとき、印象的なのはその目だ。神部のどこか憎めない部分を悪意のない人懐っこい目で演じる。

 瀬戸が神部の人懐っこいを丁寧に演じることで、彼の起こす行動に嫌な雰囲気は一切感じられない。神部は、盗みに入った彼を許した萬平と福子に恩返しすることを決意。盗みに入った翌朝には、誰に言われるでもなく香田家の掃除をはじめ、次の日には再び香田家にやってきて子供たちの家庭教師を名乗り出る。この行動は字面だけ見ると強引さが感じられるかもしれないが、朗らかな笑顔を見せる神部の姿に不穏な空気は皆無だ。初登場してからすぐに物語に溶け込み、福子たちの家族の一員のようになる神部。その姿に図々しさを感じないのは神部のキャラクターを理解し演じている瀬戸の影響も大きいだろう。

 公式インタビューで瀬戸は「戦争の経験はもちろんありませんが、極限の状態にあったら、堕ちるところまで堕ちても不思議ではない」と、戦争によって何もかも失い「盗み」を選択せざる得なかった神部の心情を理解しているようだった。そのうえで、押しかけるように香田家に転がり込んだ神部について「そのままずっと居座るって、すごいですよね(笑)」と語る。しかし瀬戸は、居座ることができる神部の人なつっこさを「たくましい人間力」と評し、演じるうえで大切にしていると話した。(NHKドラマガイド『まんぷく』パート1参照 )

 役柄の背景を理解し、役柄の長所を尊重するような姿勢を見せる瀬戸。そんな彼は、新しい役柄や体験したことのない演出に対して柔軟な考えの持ち主のようだ。第6週からはじまるストーリーでは、萬平の塩づくりに関わるキャラクターが多く、ひとりひとりに演出をつけるのが容易ではないようだ。しかし彼はその環境に対して「やりがいを感じる」と答え、「台本に書かれていない『間』をどう埋めるのか。エチュード(即興劇)をしているみたいで楽しいですね」と話している。

 演技に対して常に真摯な態度を見せる瀬戸。あらゆる役に対し柔軟な瀬戸だからこそ、全力で2人に恩返ししようとする神部が起こす行動に期待が高まる。新たな発明を試みるため泉大津に向かう萬平と福子にとって、神部が重要な人物となるに違いない。(片山香帆)

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