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(c)2021 TIFF © A COW FILM PRODUCTION MMXXII ©Copyright 2020 PUNTORIA KREATIVE ISSTRA | ISSTRA CREATIVE FACTORY ©横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画製作委員会 © 2021 シグロ/Omphalos Pictures ©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED ©2021 HBO Pacific Partners, v.o.f Folklore is a service mark of HBO Pacific Partners, v.o.f. All rights reserved. © 2021 Mod Producciones, S.L. / La Loma Blanca Producciones Cinematográficas, S.L. / La Hija Producciones la Película, A.I.E.

第2回:水先案内人による東京国際映画祭ガイド
「ワタシはコレが観たい!」Vol.2

今年で34回目を迎える日本最大の映画祭「東京国際映画祭」がいよいよ10月30日から開幕! 市山新ディレクターによる部門の改編で、これまでにない充実したさまざまな作品が集う今年の東京国際映画祭。

特集第1回に続き、今回もぴあ水先案内人による東京国際映画祭ガイドをお届けします!

主要9部門&水先案内人によるTIFFガイドVol.1はこちら

よしひろまさみち(オネエ系映画ライター)

「アジアの未来」では東南アジアだけでなくトルコや中東の作品も! 写真はアフガニスタンから届いた『ザクロが遠吠えする頃』

注目の部門

アジアの未来ワールド・フォーカスガラ・セレクション

TIFFは、アジア映画のゲートウェイとなることが大きな役目のひとつ。それだけに、第15回TIFFで「アジアの風」と呼ばれたころから、アジア映画の専門部門「アジアの未来」に注目してきました。一言でアジアといっても、その範囲はめちゃくちゃ広く、中東から極東までをカバーするので、日本で配給のつきやすい中華圏や韓国、東南アジアだけでなく、トルコやアフガニスタンなどなかなか日本ではお目にかかれない作品に出会える部門でもあります。

その点では「ワールド・フォーカス」も注目の部門。ラテンビート映画祭の協力を得ている部門なので、スペイン・ポルトガル語圏の作品のほか、英語圏以外から各国の映画祭を巡っている注目作が集められています。ワールドプレミアの作品は少ないものの、アジアで初お披露目となる作品も多く、先取り感も味わえると思います。

先取りといえば、ガラ・セレクションは外せません。各国映画祭のなかでも三大映画祭をはじめとする映画賞レース前哨戦で注目された作品が集結するため、チケット争奪戦もこの部門が一番でしょう。日本で配給されることが決まっている作品が多いので、ちょっと待てば観られる、と思う人も少なくないと思いますが、疫病禍という不測の事態を味わって分かったとおり、予定通りに公開されるかわからない世の中。気になる作品があったら、この機会を逃さずに観るのが吉です。

ガラ・セレクション『Hand of God -神の手が触れた日-』
©2021 GENSAN PUNCH Production Committee

ワタシはコレが観たい!

『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』(ガラ・セレクション)
『Hand of God -神の手が触れた日-』(ガラ・セレクション)
『牛』(ユース)

まずは『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』。各国映画祭でめちゃ高評価のブリランテ・メンドーサ監督が、実在する義足プロのボクサー土山直純さんをモデルに描いた人間ドラマです。日本からフィリピンに渡ってプロになった土山さんの話だけに、メンドーサ監督が取り上げるのは適役。主演は国際的な活躍が期待されている尚玄さんで、バッキバキに絞り込んで挑んでいます。フィリピンと日本の合作なので、おそらく日本でも来年くらいに公開されるでしょうけど、これはまっさきに観たい作品。

そしてHBOのドラマ『ヤング・ポープ 美しき異端児』&『ニュー・ポープ 悩める新教皇』がめちゃくちゃ面白かったパオロ・ソレンティーノの最新作『Hand of God -神の手が触れた日-』も早々にチェックしたかった作品。第78回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞への期待がかかっている注目作でもあります。今、TIFFの先物買いでは一番楽しみ。

それと若者に観てもらいたい作品を集めたユース部門に「え?」と2度見した作品が。それが『牛』! 一頭の牛の生活を追うドキュメンタリーを、『フィッシュ・タンク』のアンドレア・アーノルド監督が撮る、という実験的な設定に目が釘付けです。

高橋諭治(映画ライター)

ワールド・フォーカス『ベネシアフレニア』© 2021 POKEEPSIE FILMS S.L. - THE FEAR COLLECTION I A.I.E.

注目の部門

コンペティションワールド・フォーカスガラ・セレクション

国際映画祭の“顔”というべきメイン部門のコンペティションに注目するのは当然のことだが、新しいプログラミング・ディレクターが就任した今年はなおさら多くの作品をチェックしたい。まるで東京フィルメックスのようなアジアの辺境を舞台にした作品が複数あり、ヨーロッパはわずか、北米の作品にいたってはゼロというセレクション。そうした地域の偏りは気になるが、解説を読むと“そそられる”作品はかなり多い。

出品作のクオリティが安定しているため、毎年真っ先にチェックしている部門がワールド・フォーカス。しかし今年はどうしたことか、昨年比で作品数が半減しているではないか! それでもアレックス・デ・ラ・イグレシアの新作『ベネシアフレニア』、『ペトラは静かに対峙する』の脚本家クララ・ロケの監督デビュー作『リベルタード』など、鑑賞意欲を刺激される映画がずらりと並んでいる。

昨年までの特別招待部門はメジャー作品の“プレミア試写会”といった感じで素通りしていたが、新部門のガラ・セレクションは看板だけでなく中身も一新された。ジェーン・カンピオン、アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作など、話題性と作家性を兼ね備えた充実のラインアップだ。

コンペティション『ザ・ドーター』© 2021 Mod Producciones, S.L. / La Loma Blanca Producciones Cinematográficas, S.L. / La Hija Producciones la Película, A.I.E.

ワタシはコレが観たい!

『ザ・ドーター』(コンペティション)
『ベネシアフレニア』(ワールド・フォーカス)
『テロライザーズ』(ワールド・フォーカス)

スリラー&ミステリー好きとしては、このジャンルにおいて先鋭的な快作を次々と生み出しているスペインからのコンペ出品作『ザ・ドーター』は見逃すわけにはいかない。しかもこの映画、恐ろしさと美しさが深遠なレベルでせめぎ合っていた異端的怪作『カニバル』(2013)のマヌエル・マルティン・クエンカ監督、久々の新作ではないか!

スペインからもう1本。アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の『ベネシアフレニア』は、何と往年のジャーロ映画の様式で撮り上げたホラーだとか。かなりコテコテの作風で鳴らす鬼才だけに、ひょっとするとコメディなのかもしれないが、ブラックな社会風刺も盛り込まれているであろうストーリーも面白そう。

台湾映画『テロライザーズ』は、第19回フィルメックスで鑑賞して鮮烈なインパクトを受けた『幸福城市』のホウ・ウィディン監督の新作。通り魔事件を発端とする若者たちの青春群像劇とのことで、これまた不穏なスリラーの匂いが漂う。もしや、英語題名がまったく同じであるエドワード・ヤン監督作品『恐怖分子』(1986)の現代バージョンというべき内容なのだろうか。ぜひとも確かめてみたい。

平辻 哲也(映画ジャーナリスト)

アジアの未来『誰かの花』©横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画製作委員会

注目の部門

コンペティションアジアの未来Nippon Cinema Now

映画祭は新たな才能のショーケースで、出会いの場だ。今年は日比谷を中心に開催されるため、有観客での開催となれば、その出会いも濃厚になるはず。

まずは映画祭の顔、コンペティション部門。これに注目しないのは失礼。例年通り、釜山国際映画祭と近い日程で行われるため、作品集めには苦労したと思われる。全てがワールドプレミアとはいかなかったようだが、市山尚三・新プログラム・ディレクターの手腕には大いに期待。どんなカラーを打ち出してくれるか。

「アジアの未来」はアジア圏の新鋭監督によるコンペ。こちらはすべてがワールドプレミア。惜しくもコンペには届かなかった秀作が集まっているのだろうと想像する。

「Nippon Cinema Now 部門」は例年、良質な国産インディーズが集まり、地方映画祭での上映にもつながっている。来年、花開く新人・新鋭の作品をいち早くチェックしておきたい。

TIFFシリーズ  フォークロア・シリーズ2『あの風が吹いた日』
©2021 HBO Pacific Partners, v.o.f Folklore is a service mark of HBO Pacific Partners, v.o.f. All rights reserved.

ワタシはコレが観たい!

GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)(ガラ・セレクション)
フォークロア・シリーズ2『あの風が吹いた日』(TIFFシリーズ
『誰かの花』(アジアの未来)

『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』は、東京国際映画祭の常連で、特集上映も組まれたフィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサ監督作。フィリピンに活躍の場を求めた実在のボクサーをモデルにした人間ドラマ。主演の尚玄らが監督に企画を持ち込み、実現。コロナ禍での撮影だったため、監督がフィリピンからリモート演出したとのこと。ワールドプレミアとなった釜山国際映画祭では40分の持ち時間で、観客からの質問が止まらなかったと聞いている。

フォークロア・シリーズ2『あの風が吹いた日』は、歌手の松田聖子が監督したHBOアジアのオムニバスホラーシリーズの1本。そのミスマッチに惹かれたが、ホラーというよりも、ファンタジーのよう。ただ、ストーリーは松田本人の実体験が基になっているというから興味深い。

『誰かの花』は、横浜のミニシアター「横浜シネマ・ジャック&ベティ」30周年記念作。映画を製作する映画館には北海道・函館のシネマアイリスなどの前例もあるが、映画館が見せたい、作りたい映画はどんなものか、興味津々。ストーリーも配役も魅力的だ。

水上賢治(映画ライター)

コンペティション『ヴェラは海の夢を見る』©Copyright 2020 PUNTORIA KREATIVE ISSTRA | ISSTRA CREATIVE FACTORY

注目の部門

ワールド・フォーカスアジアの未来コンペティション

映画祭の醍醐味のひとつは、やはり世界から集められた映画が一気に楽しめること。個人的には、あまりなじみのない国の映画、すでに周知された名匠よりも新たな才覚のある監督、日本では無名もその国ではよく知られた、もしくは才能を秘めた俳優たちに出会えることを楽しみにしている。

「ワールド・フォーカス」は毎年楽しみにしている部門。世界の国際映画祭で脚光を浴びた作品や、日本でのまだ公開が決まっていない世界の最新映画が並ぶ。世界の映画祭で注目を集めた映画が基本のラインだが、コンペティションではかかりづらい尖った作品や意欲的なテーマに挑んだ作品など、意外な掘りだしものに出合う可能性も大。今年も期待している。

「アジアの未来」は全作品がワールド・プレミアでこの場が世界初お披露目。例年以上に多彩なアジアの新人監督が顔を揃えている印象を受ける。

「コンペティション」は、2000年に映画祭「東京フィルメックス」を立ち上げ、ディレクターを務めてきた市山尚三氏が、古巣といっていい本映画祭に戻ってプログラミング・ディレクターに就任。どんなカラーが打ち出されるのか期待したい。

『親密な他人』(Nippon Cinema Now) © 2021 シグロ/Omphalos Pictures

ワタシはコレが観たい!

『よだかの片想い』(アジアの未来)
『ヴェラは海の夢を見る』(コンペティション)
『親密な他人』(Nippon Cinema Now)

もはや男女で分けて考える時代ではないが、個人的に、ここ数年、女性監督たちの眼差しの先に世界はどう映っているのかに興味がある。ということで女性監督の作品に注目。

『よだかの片想い』は、長編連作映画『蒲田前奏曲』の一編「行き止まりの人々」で#metooを主題にセクハラ問題に向き合った安川有果監督が、ここにきてドラマや映画で存在感を増している松井玲奈とともに、顔にアザのあるコンプレックスを抱えた女性を通して、どんなヒロイン像をいまの時代に映し出すのか、期待が高まる。

『ヴェラは海の夢を見る』は、コソボと北マケドニアとアルバニアの合作映画。コソボのカルトリナ・クラスニチ監督のデビュー作になる。男性優位社会に抗う女性を描いた一作とのこと。東ヨーロッパに位置するコソボで生きる女性にどんな生きづらさがあるのか目を向けたい。

『親密な他人』は、優れたドキュメンタリー映画を発表するとともに、『ハリヨの夏』など劇映画も手掛ける中村真夕監督の新作。主演は近年、さまざまなタイプの母親役を演じ分けている、黒沢あすか。行方不明になった息子の帰りを待ち続ける母親役で、どんな狂気と子どもへの愛情を体現しているのか、見届けたい。

中谷祐介(ぴあ編集部)

ワールド・フォーカスではカンヌのカメラ・ドール受賞作『ムリナ』なども!©Antitalent_RTFeatures

注目の部門

コンペティションアジアの未来ワールド・フォーカス

映画祭の醍醐味を感じる瞬間、それは“短い説明文、少ない情報を頼りに観た映画が“会心の1作だった時”ではないでしょうか?  事前に情報のある映画、誰かのすすめる映画ではなく、自分で発見したと思える映画。

今年のコンペ部門はバフマン・ゴバディ、ブリランテ・メンドーサなど人気監督作もありつつも、未知の作品も混ざっており、何が見られるのか楽しみです。長年に渡って東京フィルメックスを担当してきた市山尚三さんが東京国際映画祭に20余年ぶりに帰還しており、フィルメックスのファンはそこかしこに“市山さんカラー”を感じることができるのではないでしょうか?  すべて世界初上映の作品が揃った“アジアの未来”、カンヌのカメラ・ドール受賞作、ヴェネチア映画祭のコンペに出た作品など世界基準の映画が並ぶ“ワールド・フォーカス部門”も一定レベルの映画が楽しめることは間違いはないものの、何が飛び出すのかは……。上映が始まってのお楽しみ。勘とフォースを頼りに何を観るか考えるのも映画祭の楽しみのひとつです。

今年は当日券も販売されるようなので、ハズせない作品を前売り券でおさえつつ、空いた時間で当日券で観た映画が今年のマイ・ベストワン作品に! そんな奇跡が訪れる、かも。

コンペティション『四つの壁』©MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED

ワタシはコレが観たい!

四つの壁(コンペティション)
復讐は神にまかせて(ワールド・フォーカス)
ベネシアフレニア(ワールド・フォーカス)

『亀も空を飛ぶ』『ペルシャ猫を誰も知らない』など名作連発のバフマン・ゴバディ監督の新作『四つの壁』は映画ファン必見になるでしょう。上映日がどちらも平日か……。

『復讐は神にまかせて』はロカルノ映画祭で金豹賞を受賞したので何となくタイトルだけはチェックしていましたが、このタイミングで日本上陸!  エドウィン監督作は過去の東京国際映画祭で『動物園からのポストカード』『舟の上、だれかの妻、だれかの夫』などが上映されていますが、観客の予想外の展開やビジュアルを仕掛けてくる監督なので楽しみ。撮影は黒沢清監督や沖田修一監督作品も手がける芦澤明子さん。こちらも気になります。

そして名作『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』や『スガラムルディの魔女』のアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の新作『ベネシアフレニア』も気になる! 公式サイトの説明文を転記しますよ。「ヴェネチアを訪れたスペイン人観光客が次々と殺害される。その陰には街を外国人から取り戻そうとする秘密結社の存在があった……」。このストーリーだけで観たくなりません? 血が流れる予感しかしない!イタリアのホラー/ミステリーのジャンル“ジャッロ映画”へのオマージュというのも映画ファン的には気になるポイントではないでしょうか。

開催概要

第34回東京国際映画祭

期間:2021年10月30日(土)~11月8日(月)

会場:シネスイッチ銀座(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷、日比谷ステップ広場、東京国際フォーラム、TOHOシネマズ 日比谷(千代田区)ほか

※映画祭公式サイトにて、メルマガ会員向け抽選販売、先行抽選販売に続いて、10/23(土)に一般販売開始。詳細はこちら

(c)2021 TIFF

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