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VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、ロックフェスの「物語」と「メディア性」

リアルサウンド

14/3/13(木) 18:29

 2014年5月3日から5日までの3日間、さいたまスーパーアリーナにて新たなロックフェスティヴァル「VIVA LA ROCK」が開催される。

 フェスのプロデューサーをつとめるのは、音楽雑誌『MUSICA』発行人の鹿野 淳氏。これまで「ROCK IN JAPAN FES.」「ROCKS TOKYO」など、数々の邦楽フェスの立ち上げに関わり、当事者としての立場でフェスに関わってきたキャリアの持ち主である。今回は当サイト連載「ロックフェス文化論」の特別編として、音楽シーンにおけるフェスを巡る状況、また自ら手掛けるフェスの設計思想を語るインタヴューを、前後編にわけて掲載する。

 第一回のテーマは、ロックフェスと「物語」について。「VIVA LA ROCK」の公式ページには、昨年7月の開催発表の際に「ロックフェスティヴァルの新しい物語を、どうかみなさん一緒に作って下さい」――と書かれている。では、ロックフェスにとっての「物語」とはどういうものなのか? その背景にあるフェスの「メディア性」について、語ってもらった。

フェスで大事なのは、「日程」と「場所」

――まずは「VIVA LA ROCK」を立ち上げようと考えたきっかけについて教えてください。

鹿野:フェスを自分が中心となって立ち上げるのは4つ目なんです。で、案の定、「鹿野は何があってもフェスをやりたいんだな」と皆さんから言われたりして。「チクショー」という気持ちもあるんですけど(笑)、たぶんその通り、僕はフェスをやりたいんだと思うんですよね。何故フェスをやりたいかというと、自分がやりたいフェスがまだあるから。一昨年までやっていた「ROCKS TOKYO」が内輪もめでなくなってしまったもので(苦笑)、フェスを立ち上げるチャンスが生まれたんです。そこで一緒にやろうと言ってくれたイベンターと話をしていったんですけれども、最初は野外も室内もいろんな選択肢が実はありました。そこで僕が一番こだわったのは日程だったんです。

――それは何故でしょうか?

鹿野:そもそもフェスで大事なのは、「日程」と「場所」だからです。まず、今から首都圏にメガフェスを立ち上げて、夏フェス戦線に入っていく意味合いが感じられなかった。それから他の地方、それこそ新幹線でも3時間以上かかる場所で新しいフェスを立ち上げないかという話をいただくこともありますが、フェスはやっぱりお祭りですから、その街の空気感をわかってない人間が外側から出てきて何かをやる意味合いも感じられなかった。そうすると必然的に場所も限られる。学生から退職後の方まで幅広い世代の層に向けてアジャストできる期間というのは、夏のお盆休み、年末年始、あとはゴールデンウィークしかない。で、今回、さいたまスーパーアリーナがゴールデンウィークの期間に会場を貸してくれることになりました。今後もこのフェスを続ける限り、5月の3日、4日、5日に関してはこの「VIVA LA ROCK」をやりましょうという約束を結ぶことができた。それがあって開催に至ったわけです。

――GWにさいたまスーパーアリーナで毎年行うということがまず確定したわけですね。

鹿野:さきほど話した通り、僕はフェスは場所とスケジュールが50%以上の重要さを占めるものだと思うので、そこで新しいチャンスと可能性を手に入れたところから始めました。いろんな話を聞いていると、まずアーティストのブッキングから始まるフェスやイベントも多いようですがーーつまり、このアーティストをブッキング出来たからフェスをやろうという発想ーーそれに関しては一切何もせず、開催することをまず決めました。

――会場側もフェスをやることに乗り気だったんでしょうか?

鹿野:そうなんですよ。たとえば横浜アリーナでは「WIRE」や「NANO-MUGEN FES.」が行われたりしているけれど、これまで、さいたまスーパーアリーナには地元に根づいた形で通年行われるフェスはなかったわけです。彼らのほうもそれを強く望んでいた。その気持ちが僕のところに伝わって来て、そこから話が始まった。だから、ただ単に場所を貸すだけではなくて、さいたまスーパーアリーナも自分たちのフェスとして一緒に考えていきたいという気持ちがあったんですね。これは本当にラッキーなことなんですよ。フェスにとって場所が味方か、もしくはあくまでも大家さんに過ぎないのか、この違いはいろいろな部分で大きい違いを生むんです。今回は会場とプロデュースする側が一体となっていろんなものを考えてやっていくフェスを新しく作れることになったので、それでやることにしました。

――毎年続けていくフェスをやるというのは最初からコンセプトとして決まっていたんでしょうか?

鹿野:そもそも僕はメディアの人間ですから、一回限りの開催のフェスをやるっていう選択肢はないんですよ。一回限りのフェスをやるっていうのは、基本的には金儲けのためか、もしくはチャリティや別の目的があるものだと思うんです。メディアの人間がイベントやフェスをやるっていうことは、それはすなわち、音楽を演奏する人と聴く人、つまりアーティストとリスナーとの媒介としてフェスをプロデュースするということなんです。そして、それを物語にしていくためには、一年だけでは実現しないんですよ。何年間かかけてやらなければそういうことはできないんです。そもそも僕は、一回限りのフェスとかイベントに関わるっていうことは今までもしたことないし、これからもたぶんないと思います。

20140313-shikano03.JPG音楽雑誌『MUSICA』を発行しつつ、ロックフェスを積極的に手がける鹿野 淳氏。

2000年代前半のサマーソニックで、フェスのメディア性を実感した

――「物語」という言葉を今使われましたけれど、そもそもフェスにとって「物語」というものはどういうものだと考えているんでしょう?

鹿野:柴君はそもそも何だと思いますか?

――僕は、00年代というのは、ロックフェスがメディアになっていった時代だと考えているんです。フェスが音楽をショーケース的に紹介する場になったし、レジャーの場にもなった。そのことで、いわゆるシーンというものが可視化されるようにもなっていった。その上で、フェスにリピーターとして通う人たちが共有できるコンテキスト、その場に行くとわかる文脈が必要になった。それがいわゆる「物語」だと思います。成功したフェスにはそれが備わっていたと捉えているんですけれども、どうでしょうか。

鹿野:今話してくれたことをもうちょっと具体的に語りたいんですけど、フェスがメディアになっていってると自分が感じたきっかけは、サマーソニックだったんですよ。2000年を越えたあたりから、洋楽雑誌の売れ行きが厳しくなってきた。洋楽マーケットが衰退してきたとも感じたんですけど、その中で一番力を持っていると感じた洋楽メディアが、実はサマーソニックなんじゃないかということに気付いた。当時は、環境のフジロック、ブッキングのサマーソニックという風に言われていて。サマーソニックは都市型フェスだけあってブッキングに非常に力を入れていた。世界の洋楽シーンの動きを反映したアーティストをちゃんと呼ぶステージを用意して、その流れを見せることに力を入れていたんです。洋楽リスナーが「今年のサマソニのソニックステージに誰が出るのか?」に注目する時点で、そこが一番のメディアになってると思ったわけ。

――それが00年代前半の頃だった。

鹿野:ただ、それは洋楽シーンの中の出来事であって。邦楽の分野においては、当時自分がやっていた雑誌とフェスを比較した時に、まだ紙媒体のほうがメディア性は高いと自覚していましたね。ただ、2006、7年ぐらいから、邦楽シーンにおいても、紙の雑誌とロックフェスというものをメディアとして比べて考えたときに、パワーバランスがほぼ一緒か、むしろフェスのほうが高くなってきたという実感を、雑誌編集が一番の生業だと思っていた自分としては非常に残念ながら感じていて。ただ、その状況自体に根拠はすごくあるなと思ったんですよ。

――というと?

鹿野:当時は世の中のメディアについて、すべてネットというものを軸に語られる時代になってきた。ネットは非常に現場に近いメディアですよね、音にせよ映像にせよ。みんなが無邪気に、瞬発力を持って言葉を発することができる。それはメディアとして、空想したり妄想はたらかせたり、幻想を抱いたりさせる力を持っている雑誌などの紙媒体とは本質が違うと思ったんです。そういう新しい時代のメディアの変化と、フェスというもののメディア性が強くドッキングしたんじゃないかと思って。それをお客さんが誰よりも体感していることを2006~2007年ぐらいから感じるようになった。そこからロックフェスがメディアであるということが、開催サイドの思惑だけじゃなくて、お客さんとの共通事項になったという実感を覚えるようになりました。

――90年代後半から日本にロックフェスが根付いていく過程において、ロックフェスがメディア性を持ち得るということが、もともとの設計図の中に入っていたんでしょうか?

鹿野:それに関していうと、まず97年のフジロックが日本の現代ロックフェスの始まりになっていますが、フジロックはイギリスのグラストンベリー・フェスティバルという、非常に不自由で、だからこそ自由を感じる牧場でやってるフェスをモチーフにしていました。当時の日本で、ベックとレッド・ホット・チリ・ペッパーズとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとザ・プロディジーとエイフェックス・ツインが一緒に来て、しかもそこにTHE YELLOW MONKEYとザ・ハイロウズと電気グルーヴとボアダムズが出て、それが2日間で行われるなんてことは考えられなかったんですよ。洋楽のアーティストが10人顔を並べるだけで異常な事態だった。まずフジロックがそれをやったことが0を1にした瞬間だったわけだから、そこにはメディア性も何もない、ただただ夢が実体になった瞬間でした。そして今度は2000年にクリエイティブマンがサマーソニックを立ち上げた。サマーソニックは、イギリスのレディング・フェスティバルというものをモチーフにして、都市型のフェスとして差別化した。99年には邦楽だけでフジロックみたいなフェスをやりたいということで、ライジングサンが始まった。そういう、いろんな固有の理由があってフェスが始まっているんです。

メディアこそがフェスをやるべき、という設計思想

――ロック・イン・ジャパン・フェスティバルはどうでしょうか。鹿野さんは立ち上げメンバーとして構想段階から関わってきたわけですが。

鹿野:ロック・イン・ジャパン・フェスティバルに関しては、ロッキング・オン社がやっているわけですが、自分たちジャーナリストや音楽メディアという、お客さんと同じ目線でライヴを体験する人間ーー同じような交通手段で、同じような場所で見る人間がフェスをプロデュースすることに必然性があるんじゃないか?と思って始めたフェスティバルです。イベンター会社がやるフェスというのは、つまりは「ステージの裏側にいる人たち」がやるフェスなんですね。実際にコンサートやライヴの現場では、イベンターの多くの方は皆さんステージの裏側にいる。ステージ裏のプロなわけです。しかし、フェスというものはお客さんが主役であると開催側が言う。ステージ上のスターだけが主役ではないと。ならば、お客さん側のプロも必要だと。つまり、プロデュースする側がお客さんと同じ目線でいるということをフェス側が体現すべきだと。それを素晴らしい形で成功させたのがロック・イン・ジャパンですよね。

――フェスティバルを作ることもメディア活動の一環、延長上であるという意識も、最初からあったわけでしょうか。

鹿野:それは当然ありました。そうでなきゃ出版社がフェスを開催しないし、そこにアーティストも出演しないですよ。メディアこそがフェスをやるべき存在なのではないかという、このイデオロギーがあったからこそ、出版社が堂々とフェスを始めることができた。いまだに僕が自分で次々とこうやってロックフェスを開催している理由もそこにあるんです。

――その上で、ロックフェスというものに「物語」が必要だと考える理由はどういうところにあるんでしょうか。

鹿野:さっき話したように、2006、7年くらいから、ロックフェスがメディアであるということを、来てくれる人が自然体で考えるようになりました。言ってみれば、邦ロックという言葉があったり、4つ打ちの踊れるロックが日本のロックの主流になっているのは、フェスから生まれて来たブームですよね? そういうことが起こるようになってきたんです。ならば、こちらとしてはフェスというメディアのあり方をさらに考えていかなければいけない。ロックフェスは毎年開催するのが前提なので、つまりは毎年来てほしいわけですよ。出演者が誰であれ、毎年フェスに来てほしいんです。それにあたって考えなくちゃいけないことは、ローカリズムと、物語性。この二つが一番大事だと僕は考えています。例えば東京でやるにしても、「VIVA LA ROCK」のように埼玉でやるにしても、その場所のローカリズムがある。それが何なのかを試行錯誤して見つけて、お客さんに提供する。そこで地元の音楽祭としての位置づけをちゃんと浸透させるのが一つ。これが、フェスがそこの場所で長生きする、最大の秘訣だと思うんですよね。それとともに、惰性でなく毎年このフェスに来てもらうための固有のストーリーを作らなくちゃいけない。僕はそれがロックフェスというメディアが作る物語というものなんじゃないかなと思うんです。

――特に邦楽系のロックフェスにおいては、バンドやアーティストが成り上がっていく、小さなステージから人気を獲得していくのを体験するというところにストーリー性が生まれていると思っています。特にここ数年はそこにゲーム的な構造が生じているのではないかと僕自身は考えているのですが、どうでしょうか。
(参考:「”ゲーム化”する夏フェスで、Perfumeはいかにして勝ち上がったか」

鹿野:いや、それに関しては、柴君が言ったようなゲームという感覚で僕はやってないですよ。あなたも編集をやっていた方だからわかると思うんですけど、たとえば音楽雑誌の編集者がいいなと思う新人を見つけた、そしたらそのバンドに売れてほしいと思うし、そのバンドが売れる努力を自分がするし、それがユーザーとジャストなポイントで当たったら、自分のメディアとユーザーとアーティストが固有の関係を生みますよね。これはビジネスとしても、批評精神としても、最高の結果を生むわけじゃないですか。それをフェスでやってるだけです。

――なるほど。

鹿野:だから、そこにはゲームという余興の感覚がないっていうことは、まず強く言いたい。少なくとも自分にとってフェスで毎年お客さんと綴り合っていく物語は、とてもシリアスなものです。あと、もっと現実的なところで、なんで邦楽フェスが物語を作らなくちゃいけないのかというと、フェス毎に出演するアーティストが似てしまうからです。邦楽フェスのブッキングの対象がアイドルなどを含めて広がってきたにせよ、フェスに出たい側とフェスという現場が似合う音楽ジャンルには限りがある。これだけ全国で沢山のフェスが行われている以上、そして島国であるからにして海外のアーティストを呼ぶにはコスト面を含めてた難題が沢山ある以上、アーティストが似てしまうのは仕方ないことでもあるわけですよね。そうなった場合に、ブッキングだけではない魅力をフェスとして作らなければ楽しんでもらえない。それがインフラであり、プロデュースであり、フェスのストーリーをちゃんと作るということであるわけなんです。
(後編【「ロックのマーケットを再構築したい」鹿野 淳が新しいロックフェスで目指すものは?】に続く)

(取材・文=柴那典)

■ライブ情報
『VIVA LA ROCK』
開催日:2014年5月3日(土・祝)、5月4日(日・祝)、5月5日(月・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

<5月3日出演者>
ACIDMAN / THE ORAL CIGARETTES / KANA-BOON / KEYTALK / キュウソネコカミ / くるり/ go!go!vanillas / SiM / SKA SKA CLUB / dustbox / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / NUBO / Northern19 / the band apart / BIGMAMA / The Flickers / BLUE ENCOUNT / MY FIRST STORY / and more

<5月4日出演者>
赤い公園 / ウカスカジー(桜井和寿&GAKU-MC) / エレファントカシマシ / 音速ライン / クリープハイプ / ゲスの極み乙女。/ SHISHAMO / スガシカオ / それでも世界が続くなら / 高橋優 / the telephones / 東京カランコロン / ドレスコーズ / パスピエ / Base Ball Bear / THE BAWDIES / UNISON SQUARE GARDEN / LAMP IN TERREN / and more

<5月5日出演者>
きのこ帝国 / サカナクション / Suck a Stew Dry / [Champagne] / SPECIAL OTHERS / cero / tacica / Czecho No Republic / Nothing’s Carved In Stone / HAPPY / ハルカトミユキ / フィッシュマンズ / The fin. / plenty / BOOM BOOM SATELLITES / 星野源 / POLYSICS / 森は生きている / LEGO BIG MORL / and more

・チケット情報
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※クレジットカード決済となります。

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【Pコード】
一日券:215-700
5/3・4〜 2日券:780-718
5/4・5〜 2日券:780-720
3日券:780-719

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一日券:215-700
5/3・4〜 2日券:71062
5/4・5〜 2日券:71063
3日券:71064

※チケット代のほか、各種手数料が必要になります。

『Getting Better Presents “VIVA LA ROCK PARTY”』

・VIVA LA OSAKA
開催日:2014年4月19日(土)
会場:TRIANGLE(大阪府)
OPEN & START 22:00

<出演者>
DJ:片平実(Getting Better) / 鹿野淳(MUSICA)/ w.NON, saki, 小村幸男
VJ:nao

・VIVA LA NAGOYA
開催日:2014年4月20日(日)
会場:cafe domina(愛知県)
OPEN & START 17:00 / CLOSE 22:00

<出演者>
DJ:片平実(Getting Better) / 鹿野淳(MUSICA)/ w.NOIRI, DCO, takumi, 栃沢康博
VJ:dragthink

・VIVA LA TOKYO
開催日:2014年4月26日(土)
会場:下北沢CLUB Que(東京都)
OPEN 23:30

<出演者>
Special Live:LAMP IN TERREN
DJ:片平実(Getting Better) / 鹿野淳(MUSICA) / 神啓文(Free Throw) / 西村道男(Nur.)
VJ:waY

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