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Perfumeが次に越えるのは“世界”への境界線? 挑戦の1年振り返りと2019年への期待

リアルサウンド

19/1/14(月) 10:00

■挑戦の連続だったPerfumeの2018年

 「挑戦」。2018年のPerfumeの活動を一言で表すと、この言葉に集約されるのではないだろうか。

 2018年の大晦日にファンクラブ限定のカウントダウンライブを横浜アリーナで開催し、そこから『NHK紅白歌合戦』(NHK総合/以下、紅白)に中継で出演したPerfume。紅白では直近の全国ツアーでオープニングを飾った「Future Pop」と「エレクトロ・ワールド」の流れを披露し、「エレクトロ・ワールド」ではリアルタイムでの映像処理を駆使して「紅白のPerfumeは何かすごいことをやってくれる」という周囲の期待に応えるパフォーマンスを見せた。

(関連:Perfumeが『SONGS』で明かした、画期的なパフォーマンスに挑み続ける理由

 また、カウントダウンライブでは2017年から続いているNTTドコモとのコラボレーションの一環(「FUTURE-EXPERIMENT VOL.04 その瞬間を共有せよ。」)として5Gや高効率Wi-Fiが活用され、会場のオーディエンスや渋谷のサテライト会場に集まった観衆とのより密なコミュニケーションが実現した。

 初の中継での紅白出場、最新の通信技術を駆使したカウントダウンライブ。これだけでも十分に大きな挑戦だが、2018年のPerfumeはそれ以外にもたくさんの刺激的な取り組みに足を踏み出している。

 2月に行われたファンクラブ限定の全国ツアー『P.T.A.発足10周年!! と5周年!! “Perfumeとあなた”ホールトゥワー』の初回公演では、セットリストをファンからのリクエストによって決定。流れを作り込んだ普段のライブとは違う、純粋に曲のパフォーマンスで場を盛り上げるステージを披露した。

 3月にはNHKホールで『This is NIPPON プレミアムシアター「Perfume × TECHNOLOGY」presents “Reframe”』を開催。MCを挟まず、3人のパフォーマンスとテクノロジーを介したステージ演出のみで1時間のライブをやりきった。

 8月にリリースされた2年半ぶりのアルバム『Future Pop』では前作『COSMIC EXPLORER』の壮大な趣とは異なる自然体な世界を展開し、そのアルバムを引っさげてのツアーでは「『Reframe』の流れを踏襲してMCなしで曲をやり続けるパートを序盤に配置」「最近のツアーでは中盤に必ず盛り込まれていたテクノロジーを前面に押し出すパートを封印」という形でライブのフォーマットの更新に乗り出した。

 またツアーと並行してTikTokへの投稿を開始。もはや「当たり前」であるゆえにあまり取り沙汰されなくなった高度なダンススキルに再度注目が集まった。この取り組みを通じて改めてPerfumeの存在を意識した人たちも多数いるのではないだろうか。

 アルバムのリリース年にグループとしての動きが活発化するのは通例ではあるが、2018年のPerfumeはその流れにとどまらないチャレンジを随所で見せてくれた。ファンとしても非常に楽しい1年であったことは言うまでもない。

■様々な境界線を乗り越える存在として

 もともとローカルアイドルを出自とし、今ではカテゴリーを横断した活躍を続けるPerfumeはこれまでも「様々な境界線を乗り越える存在」だった。2018年は前述した挑戦を通じて、グループとしてのそんな色合いがさらに強まったように思える。ここでは3つの観点から掘り下げてみたい。

(1)「テクノロジー」と「ヒューマン」

 Perfumeの代名詞になりつつある「テクノロジー」だが、チームPerfumeは「ただの新しいモノ好き」として最新技術を振り回しているわけではない。

 そんな思想がよりクリアに現れたのが、『Reframe』での「願い」のパフォーマンス。ファンがネット上に投稿したそれぞれの願いが3人の内部に取り込まれていくような映像演出は、「ファンの思いを背負って活動するPerfume」「ファンまで含めてのPerfume(=彼女たちのドキュメンタリー映画でもタイトルに冠された「WE ARE Perfume」という概念)」のあり方をよりリアルに表現するものだった。

 Perfumeが持つ人間らしさ、温かさと、それをさらに増幅させる装置としてのテクノロジー。人間性と技術を二律背反として捉えるのではなく、境界線を壊して融合させるようなPerfumeのチャレンジは、大きく言えば未来の社会のあるべき姿を体現している。

(2)「お茶の間」と「アート」

 決して簡単ではないそんな取り組みと向き合っているPerfumeだが、彼女たちが「普通の人の視線」を失っていないということはとても重要なのではないかと思う。

 相変わらずラジオやライブのMCでは肩の力の抜けたトークを展開し、年明け2019年の正月には『Eテレ60特番 Eうた♪ココロの大冒険』(NHK Eテレ)で人形劇にも興じた。

 キャリアを積んでもPerfumeは「未来志向のアーティスト」ということをことさらに誇示せず、ナチュラルにお茶の間にアクセスできる存在感を維持している。このバランス感覚は、3人のキャラクターのなせる技だろう。

(3)「女の子」と「女性」

 今年2月で3人それぞれが30歳となるPerfume。20代半ばでベテラン扱いされることも多い女性グループのシーンにおいて、いまだ一線級で活躍しているPerfumeはそれだけで前人未踏の道を歩んでいると言える。

 歳を重ねる楽しさを各所で言葉にしているPerfumeだが、パフォーマンス面においても「女の子らしさ」ではなく大人としてのしなやかさを感じさせるものが増えてきた。

 振付を手掛けるMIKIKOの「年相応がすてきで肯定したいことだというメッセージは、Perfumeのパフォーマンスを通して、伝えていきたいことの一つ」(『装苑』2016年5月号)という言葉の通り、彼女たちは「若さ」だけではない女性の美しさをその活動で表現している。

 「テクノロジー」と「ヒューマン」、「お茶の間」と「アート」、「女の子」と「女性」。対立概念になり得るものを軽やかに行き来しながら走り続けるPerfumeの存在は、ファンだけでなく同業者にも大きな勇気を与えているのではないだろうか。

■「世界」への再チャレンジ

 そんなPerfumeがいまだ明確に飛び越えられていないのが、「日本」と「世界」の境界線である。

 もちろん、世界に向けた発信を通じた成果はいろいろなところで出ている。日本国内のライブにも海外からファンが参加し、また『Future Pop』は世界20か国のiTunesエレクトロチャートで1位を獲得した。前作『COSMIC EXPLORER』もアメリカの音楽雑誌『ローリング・ストーン』の「20 Best Pop Albums of 2016」16位に選ばれるなど、作品面での評価も受けている。

 一方で、彼女たちが2014年末に掲げた「2年以内にマディソン・スクエア・ガーデンで2デイズ」という目標は残念ながら達成できず、海外戦略について何らかの下方修正をしないといけない状況にあるのもまた事実である。

 Perfumeが明確に海の向こうを意識し始めた2012年以降、世界の音楽シーンの趨勢は大きく変わった。BABYMETALやONE OK ROCKの活躍、さらにはK-POPを中心としたアジア圏のアーティストの台頭など、Perfumeの成果を飛び越えて結果を残しているアーティストもいまや多数存在する。

 「設定した目標に向かって活動規模を拡大し続ける」ことの是非はあるかもしれないが、国内で新たな価値を提示し続けるPerfumeにとって、海外での確固たるプレゼンスの獲得というのは現実的な目標でもある。そして何より、彼女たちが望むのであればその道筋を応援したい。

 今年の3月からは約2年半ぶりの北米ツアーが始まり、さらに4月には世界のポップミュージックのショーケースともいうべき『コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル』への出演も決まるなど、この春の活動はPerfumeの今後の海外戦略における試金石となる。

 先日発表されたコーチェラの出演者一覧におけるPerfumeの文字は小さく(一方で同じアジア勢のBLACKPINKはヘッドライナーに次ぐ位置づけである)、グローバルにおけるこのグループの実勢を突き付けられたような気持ちにもなる。ただ、こういった逆境こそ、Perfumeにとっては「燃えるシチュエーション」だろう。今年の夏を迎えるころに、世界中で「Perfumeやばい!」という声が広がっていることを大いに期待したい。(レジー)

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