Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

20歳になった「さくらしめじ」がお芝居と歌で魅せた有観客ライブ「会えなかった時間が僕たちの歌を深いものにしてくれた」

ぴあ

『春しめじのお花しin 中野サンプラザ』 撮影:鈴木友莉

続きを読む

フォークデュオ「さくらしめじ」が4月4日(日)、『春しめじのお花しin 中野サンプラザ』を開催した。1部では『おふたり編』、2部は『おなかま編』として行われた本公演の第2部をレポートする。

この約1年の間、多くの配信ライブを行ってきたさくらしめじ。有観客でのライブは久しぶりだということに加えて、今回は「お芝居と歌」によるステージという新たな挑戦をするということで自然と期待は高まる。

ステージには中央に大きな木がそびえたつほか、ブランコに滑り台、ベンチ。どこかの公園だろうか。そしてステージの真ん中には「きのこ」がどこか意味ありげに存在感を放っている。

定刻を迎え、暗転すると、ピアノのメロディと共に「しあわせのきのこの話って知っている?」とさくらしめじの話す声が聞こえる。
きのこに向かって幸せを送ると、とってもきれいな花を咲かせる、その花を見ると、幸せになれるらしい……という話だ。

ステージ中央にあるきのこはどうやらその「しあわせきのこ」のようだ。ステージ上に登場し、きのこを見つけた田中雅功と髙田彪我はどうすれば花を咲かせることができるのか思案する。幸せなときのことを思い浮かべて念を送ってみるが変化はない。公園に遊びに来たお仲間たち――コスプレをしたバンドメンバーや、客席にいるきのこりあん(さくらしめじファンの総称)に協力してもらうも変わらずだ。

幸せなときのことを思い浮かべるって何を思い浮かべていた? と彪我に向かって問いかける雅功。彪我「そんなの決まってるじゃん。こうやって雅功と歌ってるときのことだよ」雅功「マジで?ほんとに?僕も全く同じことを考えてた!」と声を弾ませるふたりに思わず客席からも拍手があふれ出す。

雅功「よかったら一緒に歌いませんか? 目の前にこんなにたくさんのお客さんがいるんだし!」彪我「みなさんが歌っていいよ、って言うなら歌いますよ!」雅功「みなさん盛り上がれる準備はできていますか?」と2人に応えるように、会場からは割れんばかりの拍手が。そうして始まった1曲めは『えそらごと』。ギターを手に歌い、跳ね、客席にも手拍子を促し、空気を高めていく。ギターを置き、タオルを手にした2人が続けて歌い出したのは『Bun! Bun! BuuuN!』。客席にもタオルが揺れ、風を作り、会場内には一体感が生まれていく。雅功ははしゃいだようにすべり台に上り、彪我も笑顔でタオルを回す。少し遠のいていたライブの空気感を思い出させてくれるようだ。

2人の仲が険悪に……

そんな2曲目が終わったところで、きのこが何やら楽しげな音を発する。「歌によって幸せが届いたのかもしれない。もっと歌えばきのこに幸せが届くんだ!」という彪我。

雅功がきのこに歌いかけるようにして『風とあるがままに今を歩こう』がスタートさせる。そんな雅功に倣うようにして彪我もきのこへ歌を届ける。続いて演奏されたのはドラマ『高嶺のハナさん』の主題歌も決定した『ストーリーズfeat.ひらめ』。きのこに寄り添うようにして背中合わせにして座り、歌う2人の姿はどことなく優しい雰囲気を放っている。そのまま『だるまさんがころんだ』へ。距離がありながらも、2人向かい合って歌う様子は微笑ましく、ほっこりとする。

これだけ温かな曲が送られたのだから、きのこも何かしらの反応を示すだろうと思われたが、期待は外れる。「そもそも幸せってなんなんだ?」と深い話をし始める雅功。幸せって自分たちが何かわかっていないと届けられることができないんじゃないか? と思案する雅功をよそに彪我はきのこに話しかけているばかりで雅功の話は聞き流してしまっている。それがきっかけで2人の仲は険悪に……。

雅功が「彪我はなんでも人任せなんだよ!」と怒れば彪我は雅功を「周りを見ずに突っ走ってばかり」と非難をする。「もう一回言ってみろよ!」と雅功は彪我の胸倉をつかみ、一触即発の空気に! 先ほどまであんなに仲良く歌っていたのに、雅功は「お前の顔なんか2度と見たくない」と言い、彪我は黙って姿を消してしまう。さくらしめじの歌がみんなを幸せにし、その幸せパワーできのこに花が咲かせる……という単純な話ではないのだ。

歌なら気持ちが伝えられる

一度ステージから立ち去った2人はエレキギターを手に再び登場し演奏したのは『たけのこミサイル』。歌の最中もケンカは収まらない。言葉だけではなく、ギターの音、互いの歌声で殴り合っているようだ。圧倒されたかのように、シンと静まり返る客席。声を発することは禁じられた公演だが、それさえも演出のひとつのように感じられる。

ひとり、ステージに現れた雅功は強がりを言う。「ひとりのほうが気楽だな」しかし、そんなのは本心じゃない。静かな中野サンプラザに、雅功の小さな寂しい言葉が響く。本当はケンカをしたいわけじゃない。謝るきっかけさえあれば。

後から姿を現した彪我も何か言いたげだ。でもうまく言えない。

「言いたいことはきっと似たようなことだよね」と彪我。「じゃあ、歌わない? 歌だったら伝えられるかと思って」。

言葉の代わりにギターのどこか物悲しい音色が響く。『またたび』だ。彪我のギターに雅功のギターの音色が重なる。音に少しずつ温かみが戻ってきたような気がする、のは2人の演技に魅せられているからだろうか。そして『別れた後に僕が思うこと』。別れた恋人への想いを歌った曲だが、今は雅功と彪我の「謝りたくてもうまく謝れない気持ち、すれ違う気持ち」を表現しているかのようだ。切なげに雅功が歌い上げる「好きだよ。ありがとう。ごめんね」。2人に必要な言葉が、歌の中にはあった。

2人の仲直りには『My Sunshine』。夜明けを現すような照明の色が会場を彩り、2人を、客席を照らす。ようやく向かい合い、2人で「一緒に歌う楽しさ」を嚙みしめる。そして、青々と葉を茂らせていた大きな木には、ピンク色の花が咲き誇る。

2人で歌うのが一番!

「2人でギターを弾いて2人で歌っているときが一番だわ」と雅功が言えば彪我も「だね」と微笑む。そして「大好きなみんなもいるし」と笑顔で客席を見回した。

雅功が伝えるのはこの1年の葛藤と愛だった。

「会いたくても会えない日がずっと続いていて。でもそんな中でも時間が止まっていたわけじゃない。僕たちの中でもみんなの中でも、ちゃんと時間は流れていて、歌いたい、会いたいけど会えないっていうその時間が僕たちの想いをもっともっとつなげてくれたんじゃないかな、って思ってる。みんなでまた笑って会える日、僕たち、みんながずっと信じてくれていたからこそ、今日こうやって会えたんだよね」。

最初の「そもそも幸せってなんだろう?」の解答でもある。一度失いかけたことによって、大切なものは何か改めて実感する。それはこの1年を多くの人が感じていたことなのかもしれない。

そして雅功が「ふたりでここにいるみんなに向かって今一番歌いたい歌を思いっ切り歌いたい!」として本編ラストにさくらしめじが演奏したのは『会いに行こう』。会場はピンク色の照明で照らされ、ステージ上には色とりどりの紙吹雪、いや、花びらが舞う。

2人となり合わせで歌い切ると、会場は温かな拍手で包まれた。そんな拍手に答え、深々とおじぎをする2人。客席に小さく「せぇの」と言いながら「ありがとうございました」という2人の仲の良さそうな様子に演技だとわかっていたが、思わずホッと胸をなでおろしたきのこりあんも多いのではないだろうか。

そんな2人の歌声を、ギターをもっと聞きたい、と暗転するとすぐにアンコールの手拍子が響き始めた。

アンコールに応えて再びステージに登場したさくらしめじの衣装にも桜が彩られていた。「この手拍子のアンコールも久しぶり」と雅功が笑顔をはじけさせると彪我も大きく頷いた。

彪我は「バンドでライブをするのは1年半ぶりぐらい? 本当に久しぶりで。それに久しぶりの中野サンプラザ。会場も嬉しいですし、バンドで編成でできるのも嬉しいですし実は中野サンプラザでバンドをやるのがひそかに夢だった」と充実した表情を見せると、雅功も「わかります!」と大きくうなずき、2人で微笑み合う。そして「みなさんのおかげです、ありがとうございます!」とファンに向けて感謝の気持ちを伝えた。

また、雅功は「中野サンプラザ自体に思い入れがある」と語る。「中野サンプラザで(ワンマンライブを)やるのは2回目なんですけど前回のときもめちゃくちゃ楽しくて最高のライブができました。でも僕の中では『もっとできたな』というのがちょっとあって。今回は1部、2部と通して最高だった。みんなの顔も久しぶりに見られて、僕たちのやりたい歌をいっぱいやれてこうやってしゃべりたいことをいっぱいしゃべれて、という環境があるのはすごく嬉しくてありがたいなと思います」と感慨深げに、想いを込めて、客席に向けて伝えた。

また、さくらしめじの口からはこれからについてのたくさんのお知らせが行われた。ひとつは7月16日に、Zepp DiverCityでワンマンライブ開催決定のこと。さらに彪我の次期朝の連続ドラマ『おかえりモネ』への出演、『ストーリーズ(feat.ひらめ)』のドラマ主題歌決定、さらに雅功の「プリ小説byGMO」で連載中の小説『302の音』について……とこの1年の歩みの成果を現すように盛り沢山だった。特に、Zeppでのライブは昨年中止になった分思い入れが強い。「やりたくてやりたくてやりたくて仕方がなかったzeppでのワンマンライブがようやく実現する」とふたりからの強い気合いが感じられた。

雅功は本編での自身との言葉と重ね合わせるように「本当に長かったな、と。みんなとこうやって顔を合わせる日まで本当に長かったな、と。今、心から思っています」と語った。「でも、この時間があったから僕たちはもっともっと強くつながれたんだな、と思います。あの時間が僕たちの歌をもっともっと深いものにしてくれた。僕たちは高校を1年前に卒業しているんですけど、こうやってみんなで集まって笑って、過ごしていける一瞬一瞬をこれからも作っていきたい。高校を卒業するときらめきがなくなるよね、みたいな話を友達がしてるんですけど、そんなことはないんだぞ、とステージに立ってこれからも叫び続けたいなと思います」という雅功の言葉から始まったアンコール1曲目は『青春の唄』。「夢を夢で終わらせないように全力で踏みしめていこう」という歌詞はさくらしめじのこれまでであり、これからを現しているのかもしれない。

そして、ライブは最後の曲へ。

『みちくさこうしんきょく』では雅功が客席に向かって「みなさん、立ってみますか!」と呼びかける。彪我も客席に向かって楽しげに歌う。曲に合わせて手を振る会場、さらに雅功は「声には出せないけど、心の中で歌って!」とステージのギリギリのところに立ち、客席の『声』に耳を傾ける。「大丈夫、ちゃんと聞こえてるから!」と客席からの声に笑顔をはじけさせた。

「また、会いたいよ、顔見たいよ、という人は7月のzeppで会いましょう。またみんなで盛り上がって楽しんで、完全燃焼しましょう!楽しみにしていください!」と再会を約束した。

お芝居と歌で見事に自分たちの世界観を表現し、新たな魅力を見せつけた。きのこりあんとの絆を再確認し、次の約束もしたさくらしめじ。彼らはまた次の舞台でさらに大きくなった姿を魅せてくれるに違いない。

-SET LIST-

1. えそらごと
2. Bun!Bun!BuuuN!
3. 風とあるがままに今を歩こう
4. ストーリーズ
5. だるまさんがころんだ
6. たけのこミサイル
7. またたび
8. 別れた後に僕が思うこと
9. My Sunshine
10. 会いに行こう

ENCORE
12. 青春の唄
13. みちくさこうしんきょく

取材・文/ふくだりょうこ、撮影/鈴木友莉

アプリで読む