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【『スリル・ミー』キャスト対談第1弾】 田代万里生×新納慎也 ~“真実の愛”を描くおっさんずラブ(!?)ペア~

ぴあ

田代万里生(左) 新納慎也(右) 撮影:杉映貴子

「私」と「彼」、たったふたりの出演者が一台のピアノと共に繰り広げる100分間ノンストップのミュージカル、『スリル・ミー』。実際にあった衝撃的な殺人事件を題材にアメリカで生まれ、日本では2011年に初演された人気作が、2021年4月に2年ぶりに再演される。これまで様々なペアが演じてきた「私」と「彼」は、日本初演10周年となる今回もトリプルキャスト。3組のうち、まずは“伝説の初演”ペア、田代万里生(私)と新納慎也(彼)に話を聞いた。

話し合いを繰り返して作り上げた初演

──日本版オリジナルキャストのおふたりが登板するのは、2012年以来約10年ぶりになりますね。

田代 そうですね、その間ほかの作品でも一切共演がなかったので、僕は新納さんの“共演NG”なのかと思ってました(笑)。でもふたりとも、ずっと頭の隅に『スリル・ミー』のことはあって、たとえば僕が韓国に行った時に……

新納 あぁ、お土産もらった! 作品名が入ったエアポッズのカバーが、自宅のポストに入ってました(笑)。でも僕は、年齢的なこともあって「彼」役は卒業したつもりでいたので、今回のお話をいただいた時は冗談だと思ったんです(笑)。万里生が(伊礼)彼方と組んだ公演を観に行った時も、「まだやれるのに」って思っていたらすごく嫉妬しただろうけど、もう“ご隠居”みたいな気分だったから(笑)、そういうのは全くなくて。

田代 OBみたいな感じで観てたよね(笑)。

新納 そう、「良かったよ~」とか言って(笑)。だから本当、びっくりしましたね。

田代 僕は伊礼さんと組んだ時も、「次もしやる時は新納さんと伊礼さんの両方と組みたい!」って思ってましたけどね。どっちも大好きだから。

新納 いやいや…...だって19歳の役ですよ?(笑) でももちろん、またやれるのは嬉しいこと。10年近い時を経て、若い俺はこう考えてたけど今は違う、とかも出てくると思うと楽しみです。

──初演時の思い出や、印象的なエピソードなどをお聞かせください。

新納 とにかくふたりでああでもないこうでもないって、ものっすごく色んな話をした思い出がありますね。「私」と「彼」の関係性とか価値観を共有するための話し合いを繰り返したね。

田代 僕は当時まだデビューして2年くらいで、分からないことだらけだったから、新納さんからいっぱいアドバイスをいただきました。

新納 スポンジのように、って言うのかな。万里生が短い期間でぶわ~っと色んなことを吸収して成長していって、なんてピュアな人なんだ! と思ったことを覚えています。

田代 あの時は僕らのほかに松下洸平君と柿澤勇人君のペアもいて、大枠の動きだけは一緒につけてもらいましたけど、そのあとは演出の栗山(民也)さんが、ずっと僕らだけを見て作ってくださったことも印象的。忘れられない“栗山語録”がいっぱいありますね。

新納 あるある、まずはあれだよね、稽古初日の「これは究極の愛の物語です。じゃあ始めよう」。僕はその時、「そうなの? これ愛の物語なの!?」って(笑)。

田代 めっちゃドSな「彼」を作って来てたのに(笑)。

新納 そう! 栗山さんの読みの深さに、最初から驚かされました。演出も、「ここで椅子を叩いて」とか「ここで髪をかき上げて」とか、とにかく細かくて。最初は意味が分からないんですけど、稽古するうちに、そう動かざるを得ない気持ちになっていくのが栗山演出の不思議なところ。

田代 本当にそう。栗山さんの言葉は、その時は理解できなくても後になって「なるほど!」ってなることがあるから、自分なりの解釈とかは加えずに、なるべくそのまま台本に書いておくようにしてるんです。それで今日、初演の台本を見返したら、1ページ目に「演劇は時間だ」と。

新納 ……分かるような分からんような。

田代 僕もまだ分からない(笑)。でももしかしたら、こうやって考えてること自体がもう答えなのかもしれないなと思います。

「新納さんは触ってくれない」(田代) 演じる役者によってニュアンスが変わるのも『スリル・ミー』の魅力

──先ほどお話にも出た通り、田代さんは2014年に伊礼彼方さんとも組んでいますが、新納さんと伊礼さんの「彼」はやはりだいぶ違いますか?

田代 全っ然違います! まず僕との年齢差が違うし、おふたりのキャリアと個性ももちろん違う、だから視覚的にも、硬さ柔らかさ強さ太さも全部違う。それによって、僕の「私」も大きく変わります。具体的な例で言うと、伊礼さんはスキンシップが多くて、肩をガッてつかんで「お前!」とかがしょっちゅうあるんですけど、新納さんは触ってくれないんですよ(笑)。

新納 ふははは! そうだっけ?

田代 そう、だから「私」の「触ってください」っていうセリフの意味が変わってくる。伊礼さんだと「いつも触ってくれるのに今日はどうして」で、新納さんだと「1回でいいから触って」っていうニュアンスになるんです。

新納 ああ~。それはでも、栗山さんが求めるものの違いもあると思うけどね。僕は栗山さんから、「『彼』は一歩足を踏み出すことにも手を動かすことにも何か目的がある人」って言われていたから、自由に動くことなんてとてもできなかった(笑)。

田代 確かに。栗山さんのダメ出しからして違うくらい、演じる役者によって全然違う『スリル・ミー』になるところもまた、この作品の面白さなんでしょうね。

唯一無二の個性VS醸し出される貴族感

──お互いが思う、役者としての魅力を教えてください。

田代 何だろう、もう唯一無二すぎて(笑)。だって新納さんみたいな人って、ほかにいないじゃないですか。

新納 確かに、「新納さんみたいになりたい」って言われたことないね、言われたいのに(笑)。

田代 いや、思ってもなれないから(笑)。新納さんは個性の塊のような方。しかも、個性的すぎてカンパニーに馴染まないみたいなこともなく、むしろムードメーカーとしてみんなを引っ張っていってくださるんです。あと観客としてよく感じるのは、ここぞという時の、劇場まるごとグッて抱え込むような力。迷いなくできる勇気というか、確信を持って演じられるところは、本当にすごいなと思います。

新納 ええ~? ありがとう(笑)。万里生はやっぱり、醸し出される“貴族感”だよね。この人、絶対育ちがいいんだろうなって思わせるような役は、僕にはどうあがいてもできない。それは本人の人柄でもあって、この人はピュアさが隠せないんですよ(笑)。ビジュアル撮影をしていた時も、「何そのポーズ!」「面白い!」とかずっと言っていて(笑)。

田代 新納さんに会えて嬉しかったんです!(笑)

新納 僕は役者には、どんな汚れ役であっても品が必要だと思ってるんですけど、万里生にはそれが最初から備わっていると思います。あとはやっぱり、安定した歌唱力。ミュージカルでは“喋るように歌う”ことが求められることもありますけど、譜面通りに歌ったほうが得というか、伝わりやすいことも多い。万里生はさすが、そのチョイスの仕方が天才的だなと思いますね。

初演時とはまた違うふたりの『スリル・ミー』を 「どうか優しい目で観てください(笑)」(新納)

──そんなおふたりの今回の「私」と「彼」に、自分たちで“〇〇ペア”と名前をつけるなら…...?

新納 ……“おっさんずラブ”ペア(笑)。

田代 やめてよ!(笑) 観ていただいたら、年齢は全く気にならないと思いますから。

新納 はい、めちゃめちゃ若作りしてやります(笑)。“おっさんずラブ”じゃないなら……まあ“出戻り”だよね。“チーム出戻り”(笑)。

田代 いやいやいや(笑)。“真実の愛”ペアでお願いします!

──素敵です(笑)。では最後に改めて、待ちわびていたお客様にメッセージをどうぞ!

新納 この作品にしても『エリザベート』にしてもそうなんですけど、僕は初演を立ち上げて、その作品が“ドル箱”になった頃にはもういない、っていう目によく遭うんです(笑)。作品が有名になると、初演のメンバーって美化されていくもの。「すごかったらしい」とか聞くたびに、「そうでもないんだけど、まあ答え合わせする日は来ないだろうから、美化されておいたらよろしい」って思ってたんですけど(笑)、その日がやってきてしまった。美化されたものを越えなきゃいけない、というプレッシャーを感じているので……どうか優しい目で観てください(笑)。

田代 僕はそうですね、新納さんとまた組めること、“共演NG”ではなかったことが(笑)、まずはとにかく嬉しくて。僕と新納さんが出会ってからの10年間、ずっと一緒にいたわけではないけれどお互いアンテナを張り合っていたことが、幼なじみの「私」と「彼」としての関係性に滲み出たらいいなと思います。もちろん舞台上の僕らが“新納さんと万里生”に見えてほしくはないんだけど、僕らの中にしか生まれない呼吸だったりリズム、目線だったりがあると思うから、初演の時とはまた違う僕らの『スリル・ミー』を、ぜひ楽しみにしていてください!



取材・文:町田麻子 撮影:杉映貴子

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次回、キャスト対談第2弾・成河×福士誠治ペアの記事は1月8日(金)公開予定!

ミュージカル『スリル・ミー』
原作・脚本・音楽:Stephen Dolginoff
翻訳・訳詞:松田直行
演出:栗山民也
出演:田代万里生(私役)×新納慎也(彼役) / 成河(私役)×福士誠治(彼役) /松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)
ピアニスト:朴勝哲 落合崇史 篠塚祐伴

【東京公演】
2021年4月1日(木)~2021年5月2日(日)
会場:東京芸術劇場シアターウエスト
チケットは3月9日(火)より一般発売予定
※記事初出時から一般発売の日にちが変更になりました。

【群馬公演】
2021年5月4日(火)・5日(水)
会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/index.php

【愛知公演】 
2021年5月15日(土)・16日(日)
会場: ウインクあいち大ホール
https://www.nagoyatv.com/event/

【大阪公演】
2021年5月19日(水)~2021年5月23日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
http://www.sankeihallbreeze.com/

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