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乃木坂46、“個の強さ”で体現したアンダーの歴史 岩本蓮加座長の『アンダーライブ』を振り返る

リアルサウンド

19/11/1(金) 13:00

 乃木坂46の『アンダーライブ2019』が10月10・11日、千葉・幕張イベントホールで行なわれた。今回の公演では、アンコール時の「乃木坂の詩」を除けばセットリストはすべてアンダー楽曲で構成されている。それだけに、現在の彼女たちが表現できることの奥行きを、グループのデビューから今日までに蓄積されてきたアンダー作品を介して提示するようなライブになっていた。

参考:乃木坂46 岩本蓮加、北野日奈子や寺田蘭世らから継いだセンターの重責 アンダーライブへの期待

 4段に分けられ、高さを効果的に使ったステージ上でのダンスパートに始まり、岩本蓮加センターによる「狼に口笛を」、鈴木絢音がセンターを務める「自惚れビーチ」でライブは幕を開ける。今夏の全国ツアーでは客席全体を使ってのペンライト演出が行なわれていた「滑走路」も、ここでは寺田蘭世を中心にオーソドックスに楽曲を伝えるようにパフォーマンスされる。

 乃木坂46が歩んできたキャリアのなかで生まれるアンダー楽曲の名作にも、現在のメンバーによって新たな光が当てられてゆく。次のブロックで阪口珠美がセンターを務めた「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」では、阪口特有のエモーションの伝え方によって、従来の同楽曲とはまた異なるニュアンスがもたらされた。アンダー楽曲としてのクラシックが時を経て継承されてゆくプロセスがこうした瞬間に浮かび上がる。

 アンダー楽曲のみを軸にした表現の広がりは、続く少人数ユニットによるブロックでも展開される。「自由の彼方」は、中田花奈と和田まあやの1期生ペアによるデュエットとして披露され、2人の存在感が示される。続く「My rule」ではスローなアレンジでスタートしつつ後半で通常アレンジへと移り変わり、一曲のうちに緩急を織り交ぜてみせる。同曲ではオリジナル発表時の参加メンバーは寺田のみ、他は当時アンダー楽曲に参加していなかった3期生でユニットを構成し、アレンジの妙とともに大きくメンバー編成の印象を変化させた。他方、その寺田がオリジナルでセンターを務めていた「ブランコ」は今回、同じ2期の鈴木と渡辺みり愛がユニットを組み2人の声で歌い繋いだ。グループとして楽曲を伝えるための手段を豊かに持っていることが、このブロックではいくつものかたちで見えてくる。

 後半、それぞれストリングスバージョン、アコースティックアレンジで披露された「君は僕と会わない方がよかったのかな」「初恋の人を今でも」などを挟み、「新しい世界」からライブは最終盤に入ってゆく。アンダーライブがこうした大会場でドラマティックなクライマックスを構築できることはすでに過去のいくつもの公演で実証済みだが、初のアンダーセンターを背負う岩本を中心に今回も同様の盛り上がりを体現し、本編ラストの「~Do my best~じゃ意味はない」までを披露した。

 乃木坂46のアンダーライブは、その時々のアンダーメンバーたちの矜持を映し出す場として存在してきた。本編だけでなくアンコールも「乃木坂の詩」以外はすべてアンダー楽曲で構成したこの公演のセットリストをみれば、今回もそうしたプライドを誇るようなものにも思える。

 けれども今回のアンダーライブはメンバー構成にせよ楽曲のアレンジや披露の仕方にせよ、より余裕を持ってアンダー作品のアーカイブを現在形で示しているような趣がある。アンダーの矜持を示すこと以上に、ライブ全体を通しての作品としてのスケールや懐の深さこそがみてとれた。

 それは、ひとつには3期メンバーそれぞれまでを含めて、各人が中心を担える強い個を手にしつつあるためだ。今回、ライブ全体のセンターである岩本はもちろん、フロントやセンターが楽曲によってさまざまに分担されてゆくなかで見えたのは、いまやアンダー楽曲・アンダーライブのみによって、乃木坂46という組織がもつ表現の幅広さをその都度提示できるということだ。

 もちろん、これはアンダーライブが単に新しくなってゆくだけのことではない。たとえば、渡辺がセンターを担う「風船は生きている」が披露されれば、その背後には2017年の東京体育館でのアンダーライブの軌跡が立ち上がってくる。そうした歴史の重なりは、アンダーライブが開催されるたびに鮮明になる。他方で、現在を紡いでゆく彼女たちが、かつてとは異なる強さ、異なるカラーを示し続けることもグループにとっては不可欠である。参加メンバーそれぞれが楽曲の中心を背負いながら、いまや巨大な人気コンテンツとなったアンダーライブを成立させている。まだ見ぬ未来の歴史を描き続けるためにも、アンダーメンバーそれぞれが今公演のような強い個であることは重要である。(香月孝史)

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