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和田彩花の「アートに夢中!」

クリスチャン・ボルタンスキー ー Lifetime

毎月連載

第19回

今回紹介するのは、国立新美術館で開催中の『クリスチャン・ボルタンスキー ーLifetime』。現代のフランスを代表するアーティストの50年にもわたる活動の全貌を紹介する、待望の大回顧展だ。ボルタンスキーは、1960年代後半から短編フィルムを発表。1970年代には写真を積極的に用いて、自己や他者の記憶にまつわる作品を制作し注目を集めた。1980年代に入ると、光を用いたインスタレーションで宗教的なテーマに取り組み、国際的な評価を獲得していく。その後も歴史や記憶、人間の存在の痕跡といったものをテーマに据え、世界中で作品を発表し続けている。

自らを「空間のアーティスト」と形容するボルタンスキーは、同展について“展覧会全体をひとつの作品のように見てもらいたい”と語る。また、“タイトルの「Lifetime」は作家自身の人生そのものを指しており、展示空間は見る人々の人生を映し出す鏡のようなものでもある”という。

そんな現代美術における重要な作家であるボルタンスキー作品と、和田さんはどう向き合ったのだろうか。

重いテーマにも関わらず
表現方法がカッコいい!

会場風景より。手前は《青春時代の記憶》(2001) 撮影:糸瀬ふみ

今回初めてボルタンスキーの作品を見ました。これまでボルタンスキーについては、「死」と「生」などを取り扱っている作家だということぐらいしか知りませんでした。だからあまり予備知識もなく行ってみたのですが……。

とにかく、単純にカッコよすぎました! ボルタンスキーは「時間」や「生」、「死」などをテーマにしているけど、それをあまり感情を込めずに見れば見るほど、作られた作品がとてもカッコいい。だからオブジェのようでもありました。意味を持った作品というだけでなく、モノであるというか……。

でもカッコいいからこそ、いろいろなものが実は今回感じ取れなかったんです。いつもだったら、そんな重いテーマであれば、絶対そこから何かしら感じたり、考えたりすることが当たり前だったんです。でもボルタンスキーの作品から、私はあまりそれを受け取ることがなかった。なので、最初は戸惑いもありましたね。

それでも、作品にはものすごく心惹かれたんです。そこが面白いなと思いました。

聖骸布をまとったような写真作品

会場展示風景。《ヴェロニカ》(1996)

会場には、映像や日用品といったいろいろなメディアを用いた作品が展示されています。その中でも私が惹かれたのは、写真を使った作品。特に写真に薄い布がかけられているもの。そこで一つ気付いたことがあって。そういった布がかかった写真作品たちを見ていると、イエス・キリストが磔にされて死んだ後、その遺体を包んだとされる布「聖骸布」を思い出したんです。特にイエスの風貌を写したと言われる、聖ヴェロニカの聖骸布やマンディリオンなどを。

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