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BiSH、CDのみでリリースした初ベストアルバムが首位に 危うさすらも“確固たる居場所”にしてきた活動の軌跡

リアルサウンド

20/7/18(土) 10:00

参考:2020年7月20日付週間アルバムランキング(2020年7月6日~2020年7月12日)(https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2020-07-20/)

 2週間前、初週で10万枚を記録したSEVENTEENの『Heng:garae』。先週も余裕で首位をキープし、今週も7位にランクイン。累計セールスはすでに14万枚を突破しました。BTSに続くK-POPスーパーグループの躍進を気に留めつつも、今週はうって変わって、バンドの作品が多いチャートになります。

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 2位はMrs. GREEN APPLE『5』、3位TUBE『日本の夏からこんにちは』、5位ハルカミライ『THE BAND STAR』。これらはすべて1万枚を超えるセールスなので(ミセスに至っては5万枚に届きそうな数字!)、世代を問わず、相変わらずバンド作品が強いJ-POPの傾向が伺えます。さらにチャート下位に目を向けてみればOfficial髭男dismが今なおランクインしているのがすごい。ヒゲダンの『Traveler』、実は発売以来40週に渡ってずーっと10位~20位圏内を推移し続けているんですよ。リリースは昨年秋ですが、トータルで考えても、今年一番売れたアルバムのひとつと断言できそうです。

 そして1位はBiSH『FOR LiVE -BiSH BEST-』。こちらも“楽器を持たないパンクバンド”を謳っているので、バンド作品、と括っていいでしょう。基本はエレキギター/ベース/ドラムスで構成されたサウンドが多いし、疾走感や激しさ、ネガティブを原動力とする反骨パワーを押し出した楽曲が多数。反骨、なんていう言葉が今の音楽シーンでどれくらい有効なのかはわかりませんが、ミセスやヒゲダンが“バンド形態のポップス”を軽やかに鳴らしているのに対し、“ステレオタイプなくらい本気のロック”を体当たりでやっているのがBiSHなのだと思います。

 ただ、その“ステレオタイプ”が、本人たちの信じたものなのか、大人がやらせているものなのか。時に炎上も上等と言わんばかりの活動に対して賛否両論あるかもしれませんが、BiSHはまさに存在そのものがセンセーショナルなのであり、「BABYMETALのように完璧な世界観ではないが、BiSHの危うさとハラハラ感がたまらない」という層にとっては強く深く突き刺さるものがあるのでしょう。

 そんな彼女たちが初めて1位になったことが、何かの転機を感じさせます。『FOR LiVE -BiSH BEST-』はグループ初のベストアルバムで、収益の全額は新型コロナウイルスのために営業自粛を余儀なくされている全国ライブハウスに寄付されるとのこと。ファン一人ひとりにCDショップへ足を運んでもらうためにも配信は一切ありません。「全国のライブハウス、CDショップに微力ながら力になれないか考えました」。こんなオフィシャルサイトの言葉も誠意に溢れたもので、BiSHらしい/らしくないの判断はさておき、まずは協力しようじゃないか、という気持ちにさせられます。結果セールスは4.9万枚。正攻法で手にした、初の週間アルバムランキング1位なのです。

 こちらが慣れてしまった面もありますが、「PAiNT it BLACK」や「プロミスザスター」など代表曲をまとめて聴くとBiSHは言うほど異端でもない、よくできたロックグループだなと思わされます。パンクとメタルの荒々しさを最大限咀嚼しつつ、ドラマティックな泣きどころに落としていく展開の巧さ。メロディはポップで爽やかだけど、ちょっと投げやりだったり、舌足らずだったり、ハスキーだったり、個々のボーカルが入れ替わることで聴き流せない棘を残していく。現体制になってすでに4年近く。“ハラハラさせる危うさ”も、続けることで板につき、そのまま愛すべき個性になったわけです。

 もちろん、Disc-2に収録された「遂に死」みたいな曲はSlipknotに肉薄するノイズと阿鼻叫喚が溢れていますが、そこも含めて驚かない。むしろ「あぁBiSHだねえ」とフツーに納得できる。時間をかけて、彼女たちが“過激なことをやらされてる感”を“自分たちの確たる居場所”に変換していけたのだと思います。続いて来週に出る3.5枚目のアルバム、そのセールスにも期待しておきます。(石井恵梨子)

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