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『JIN-仁-』の綾瀬はるかは時を経た2020年の救世主? 国民的女優となった節目の作品に

リアルサウンド

20/5/2(土) 10:00

 再放送が話題を呼んでいる名作ドラマ『JIN-仁-』(TBS系)。今作は、ヒロインを務める綾瀬はるかにとっても大きなステップアップとなった作品で、綾瀬演じる咲の健気で切ない姿に、放送から10年以上経った今でも大きな反響を呼んでいる。

 JIN-仁-第1シーズンが放送されたのが2009年、綾瀬が24歳のとき。2007年に『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)で干物女のナチュラルな演技でブレイクしてから、映画『ICHI』、『ハッピーフライト』、『おっぱいバレー』など、2008年~2009年は立て続けに映画で主演を務め、人気絶頂のタイミングでの出演となった。『JIN-仁-』を境に、誰かを支える役や母親役など、女優としても懐の深い大人の役を与えられる役者になっていき、好感度No.1の国民的女優という確固たる地位を築いていく。作中でも明治維新で新しい時代を迎えるように、役者としても『JIN-仁-』は綾瀬にとっての時代の節目となる作品と言える。

 綾瀬は、2000年の高校1年生・16歳のときに、ホリプロスカウトキャラバンで審査員特別賞受賞をきっかけに芸能界に入り、2001年にドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)で女優デビュー。ただ、特に女優になりたい目標があったわけでもなく、デビュー当時は3年やってダメなら広島に帰ろうと決めていたという。

 そんな綾瀬の役者人生の転機となったのが、2004年のドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(以下、『セカチュー』)(TBS系)。原作本を読んで感動した綾瀬が、初めて心の底からやってみたいと思ってオーディションに臨んだ作品だ。白血病のヒロインを演じるために髪を剃り、体重を7キロ減らし、この作品をやりきったら辞めてもいいという覚悟でアキ役に全てを捧げて取り組んだという。そうした見た目の部分の工夫だけでなく、喜怒哀楽を全力で演じる綾瀬の姿が、青春を目一杯生きたアキに見事に重なり、視聴者に感動を与えた。2018年の『サワコの朝』(TBS系)で綾瀬は、「夢や目標があって(女優を)始めた訳じゃないから、目の前にあるものに全力投球だった」と当時を振り返り、髪を剃ったことに関しては自ら「剃ってみたい!」と語ったというエピソードも披露。7キロ痩せた後に、回想シーンを撮るから体重戻せと言われ4日で戻すなど、ロバート・デ・ニーロやクリスチャン・ベールのような鬼才俳優たちさながらの逸話の数々を笑顔で話していた。

 以前、大河ドラマ『八重の桜』に主演した際のコメントで「私にとっての『ならぬこと』は、手を抜くこと」と答えていたり、負けず嫌いの体育会系で、できないことが悔しくてホテルに帰って1人で泣くこともあったという綾瀬。奇しくも最後の覚悟で挑んだ『セカチュー』が、根っからの体育会系気質と役者魂を覚醒させることになったのだ。また、『セカチュー』の脚本家である森下佳子は、後に『白夜行』(TBS系)、『MR.BRAIN』(TBS系)、『JIN-仁-』、『わたしを離さないで』(TBS系)、『義母と娘のブルース』(TBS系)など、綾瀬とのタッグで様々な名作を生み出している。森下との出会いが、綾瀬の引き出しを開けていき、女優として成長させたといっても過言ではないだろう。

 そんな綾瀬が、人気・実力共に、役者として一つのピークを迎えたときに出演した『JIN-仁-』。綾瀬演じる橘咲は、タイムスリップしてきた現代の脳外科医・南方仁(大沢たかお)が居候する橘家の長女で、奇跡のような仁の医療に立ち会ううちに、仁に心惹かれていき、公私にわたり仁を支えていく。

 この役もひたむきな強い女性で、医療に携わっていくことに対し情熱的であり、仁が打ち明ける未来や医療だけでなく、仁に好意を持つ花魁の野風(中谷美紀)のことも笑顔で全て受け入れていく懐の深さを持つ。ただ、恋には不器用で、直接仁には好意を見せず、やがてそれに気づいた仁に告白されるも、未来から来ていること、仁に他に思う人がいることを知っているからこそ、断るという切ないシーンも。仁が悩み、泣いているときでも、笑顔で背中を押していく。その支える女性の強さ、仁を人として愛する姿勢が、本当に健気でカッコいいのである。

 演技としては今までの集大成のような作品であるが、これまで男性に思われ、綾瀬中心に物語が動く役柄が多かったことを考えると、本作での相手を支える側に立つ役柄は新境地だったように思う。後に綾瀬が大河ドラマ『八重の桜』で演じるモデルの新島八重は、いつも誰か人のために一生懸命働く姿から「生き方がハンサム」と言われる歴史的人物だが、その役に抜擢されたのも、咲の人を思いひたすら支える強さを見事に表現したからこそだろう。

 さて物語は、いよいよ坂本龍馬の生死に関わる問題に直面する。歴史を変えないためにもそのまま放置するのか、医師として目の前の命を助けるのか、究極の選択が待ち受けている。そして、一度は断った仁と咲との関係がどうなるのか。今世間が厳しい状況だからこそ、咲のような強い女性は世間に勇気を与え、時を経て2020年の救世主になっているのではないかと思う。 (文=本 手)

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