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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

今年の日本映画の中で私の暫定ベスト1位!『女たち』

月2回連載

第68回

ここの文字数じゃ足りないくらい心にグッサリと刺さりました

今回は現在公開中の作品と来週から公開される新作を1本ずつ紹介します。まずは、この作品だけで何時間でも語れそうなほど気に入っている、今年の日本映画の中で私のベスト暫定1位の『女たち』です。

山間の小さな町に暮らす独身女性の美咲は、体が不自由な母親を介護しながら、地域の学童保育所で働いています。彼女は、東京で大学時代を過ごしていたものの、就職、恋愛、結婚にうまくいかず、ふるさとに帰ってきたいわくつき。そんな美咲を、母親は負け犬扱いしています。

『女たち』

たったひとりの母だけに、分かり合いたいと願っている美咲ですが、中々うまくいかない毎日。心の拠り所は、親友の香織だけでした。香織は養蜂を営んでおり、自分らしい生活を自分のペースで送っている女性。美咲は彼女に憧れていますが、実は彼女もまた、人には言えない悩みを抱えており、ある日突然命を絶ってしまうのです。

『女たち』
『女たち』

この作品を私が語ったら、ここの文字数じゃ足りない(笑)! それくらい心にグッサリと刺さりました。母と娘の確執、それを演じた高畑淳子さんの怪演、美咲を演じた篠原ゆき子さんの圧倒的な芝居……どれもが強烈です。

特に、母娘関係は本当にアルアル。対話するチャンスを失っているから、理解し合えないのは当然なんですけどね……。私自身の境遇も思い出してしまったほどです。

『女たち』

この作品の中でも、私が一番感動したのは、ヘルパーのマリアムを演じたサヘル・ローズさん。以前紹介した『ターコイズの空の下で』にも出演されていて、すっかり彼女の芝居には魅了されていたんですが、この作品での彼女を観て、ついに日本映画は次のステージにきたな、と思ったんです。

『女たち』

この10年ほど、日本では「多様性を受け入れよう」という運動が活発化していますが、実際は何も進んでいないし、外国人や外国にルーツを持つ人たちへの偏見も全く変わりませんよね。そんな中で、日本社会を選んで生きるマリアムをあえて配置し、そこにサヘル・ローズさんがキャスティングされたことが素晴らしいと思うんですよ。彼女、演技は上手いし、今回はソフトだけど強く、この家族を見守って、支えている。日本映画にここまで溶け込めるよ、と証明してくれました。

『女たち』

小さい規模の作品ではありますが、こうやって日本映画も変わろうとしているところを感じられて、とても嬉しかったですね。エンドロールまで絶対に見逃さないでくださいね。

自分が時代遅れの考え方かを知るためにも観た方がいい

さて、もうひと作品は、現在公開中の『5月の花嫁学校』。フランスのコメディです。

1967年のフランス、アルザス地方の小さな村。花嫁修業のための学校、ヴァン・デル・ベック家政学校に18人の新入生の少女たちが入学してきます。2年間かけて完璧な主婦として送り出す、というこの学校の授業は、女性解放運動の真っ只中にいる生徒の少女たちとはかなりズレまくり。生徒たちはみな、自立した生活を夢見ているものの、お金と学歴がない彼女らは家族の決めたレールに乗るしかなかったのです。

『5月の花嫁学校』

そんなある日、校長のポーレットの夫で、学校を経営するロベールが急死。ポーレットは彼が隠していた莫大な借金を抱えることになります。金策のために銀行を訪れた彼女を待っていたのは、30年前に第二次世界大戦で死に別れたはずの元恋人。彼はポーレットの窮状を知るや、無茶ぶりな再建案を出します。

ポーレットは学校再建のために経営をイチから学ぶことになりますが、そこで分かったのは死んだロベールの前時代的な考え方。そのとき、ある生徒が事件を起こしたことをきっかけに、ポーレットと生徒たちは自分らしい生き方に目覚める……というお話。

『5月の花嫁学校』

これを観てまず感じるのが、もしかしてこういう考え方っていまでもあるの?ってことです。明らかに古い考え方だし、女性が社会で活躍することは当たり前。でも、結婚となると、この古い考え方を持ち出す人、もしくはこの考え方にとりつかれてしまう人がいるのかな。だとしたら、この作品を観て、考え方を改めてもらいたいですね。

『5月の花嫁学校』

そもそも“いい嫁”ってなにそれ……。夫婦はお互いに平等で、助け合う家族だってことが抜け落ちてますよね。自分が時代遅れの考え方かそうでないかを知るためにも、この作品はいいチェック薬になるかも。

※次回は6月11日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
(C)『女たち』製作委員会
(C) 2020 - LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 3 CINEMA - ORANGE STUDIO - UMEDIA

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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