『いだてん』から『ポケモン』へ! 中村勘九郎と上白石萌歌をつないだのはトータス松本の熱い“応援”の声?
シリーズ23作目となる『劇場版ポケットモンスター ココ』にゲスト声優として出演している中村勘九郎と上白石萌歌。勘九郎が主演を務めたNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺』に上白石も出演するも、直接の芝居のやりとりはなかったふたりだが、本作では声での共演で親子を演じている。そんなふたりに作品、そして大切な家族への思いを聞いた。
延期を経てクリスマス公開に
それもまた“運命”だった!?
── おふたりとも以前から“ポケモン”が好きで、劇場に映画を観に行かれたりもしていたそうですね?
勘九郎 僕自身はポケモン世代ではないんですよね。僕よりもちょっと下の世代がゲームボーイをやったりしていた世代だと思うので。
僕が最初に出会ったのは劇場版第1作目の『ミュウツーの逆襲』で、映画館に観に行ったんですけど当時もものすごく盛り上がっていて。それから23年間、変わらずに人気であり続けている作品に自分が出させていただけるというのは、やはり嬉しかったですね。
声のお仕事をやってみたいという夢もありましたし、あとは子供たちの顔がすぐに浮かびましたね。うちの子たちはゲームもやってるしアニメも観ているので、彼らが喜んでくれるかと思うと誇らしくなりました。
上白石 私はまさにドンピシャのポケモン世代ですから、今回のお話で「ポケモンに育てられた少年」の役と聞いて「それ私だ!」と思いました(笑)。小さい頃からアニメもゲームも大好きで、初めて映画館に観に行った映画もポケモンでしたし。あの頃、自分が夢を与えてもらったポケモンを通じて、今度は自分が子供たちに夢を与える番だと思うとすごく感慨深かったです。
── 勘九郎さんは幻のポケモン・ザルード、上白石さんはザルードに“息子”として育てられた人間の少年・ココを演じています。今年は特に家族や大切な人に向き合う時間が増えたという人も多いかと思いますが、本作では“今”を象徴するかのような父と息子の深い愛情の物語が展開します。
勘九郎 ザルードは群れの掟を大切に生きている中で、森に流れ着いたココを見つけて、自分で育てていくんですが、最初に脚本を読んだ際に、ザルード自身も自分の親を知らないという描写があって、もしかしたら彼はココを見て自分自身を発見したような気持ちになったんじゃないかな?と思ったんですね。
物語を読み進めていくと、ココを育てているようで、実はザルード自身も成長していって、親子の形、絆が生まれたんだなぁと感じて。見た目はとても子供たちに人気が出るようなビジュアルじゃないけど(苦笑)、いいヤツなんですよ。
Beverlyさんが歌う『ココ』という曲に合わせてザルードの子育てが描かれるんですが、あれも実際の子育ての“あるある”だらけなんですよ! ちょっと目を離したすきにイタズラされていたり……。子供を持つ親として共感できる部分が多い作品でしたね。
おっしゃったとおり、今年は大切な人と向き合う時間が長かったですが、そのクリスマス、年末に大切な人への思いをあらためて確認できる作品をお届けできて……本来は7月に公開される予定だったのが延期を経てこの時期に公開ですからね。作品が持つ“運命”がそうさせたんじゃないかなって思います。
上白石 アニメーションの面白いところのひとつですが、自分とは生まれも育ちも、性別さえも違う役柄に声で命を吹き込ませていただけるということが役者をしている身として新鮮であり挑戦でした。
ココって自分がどこから来て、どこに向かうのか? アイデンティティを模索している子で、私自身もまだまだそういう部分──「自分はどこへ行くのか?」「どうあるべきなのか?」って悩み、考えているところがあって、模索している姿はきっと今を生きる人たちが投影できるんじゃないかなと思います。
何より血のつながりはなくともザルードを自分の親だと信じているし、これからも信じ続ける、その強さを感じましたし、今この時期に家族で観ていただきたい映画だなと思いました。
“咀嚼音”で大ショック!?
ふたりの“親”との向き合い方
── 劇中のザルードとココのように、おふたりも親に反発したり、家族とぶつかり合った経験はありますか?
勘九郎 あのね、うちの父(=故・十八代目中村勘三郎)は「この人に反抗しても仕方がないな……」というか「これは反抗できねぇわ……」って思わせるような圧倒的な熱量とパワーで生きてきた人なんでね(苦笑)。むしろ、気持ちを変えて、一緒にいると面白い景色を常に見せてくれる人だったので「一緒にいていろんなものを吸収してやろう」という思いで。だから、いわゆる“反抗期”って全くなかったんですよね。いや、ちょっとでも反抗してたらボコボコにされたんじゃないかな……(笑)? それくらい憧れの存在でもあったしね。
── 反抗期と言わないまでも、ちょっとしたケンカをすることなどもなかったんですか?
勘九郎 うーん、会話の9割方が芝居の話という人だったんでね、家でも。子供の頃に僕らが「今日、学校でね……」って話を始めても「あぁ、そうか。それで次の芝居なんだけどな……」ってすぐに芝居の話に移っちゃう(笑)。
上白石 えー(笑)!
勘九郎 どんな芝居が面白かったのかって会話の中でのぶつかり合いはありましたけどね。
── ご自身が父親になって、亡くなったお父様の姿を参考にされたり、あえて逆のことをしたりということは?
勘九郎 僕は父が若い頃の子供だったので、本人が「(芝居を)やるぞぉ!」という感じのとんがっていた時期に僕は小学生だったんですよね。だから父が家にいるってことがあまりなくて、家の中の姿があまり記憶にないんですよ。
今年、自粛期間に家にいる時間が普段よりも長かったので、父と僕が一緒にできなかったことをやりたいなという思いで、些細なことなんですけど、キャッチボールとか自転車の乗り方を子供に教えたりはしましたね。
上白石 私は両親が教師で、本当に歯向かえなかったんですよねぇ……(苦笑)。教育者の怒り方なんですよ。先生に怒られているような感覚で。よくお母さんが叱る場合はお父さんが優しく慰めたり……というのを聞くじゃないですか? 我が家はそれが全然なくて、どっちも怖かったです。結果、姉(=上白石萌音)と仲良くなるという(笑)。そこでしか感情の共有ができなかったんですね。
とはいえ一切、理不尽な怒られ方はしなかったし、いつもかっこいい背中を見せてくれる存在ではあったんですけど……ただ、反抗期は多少はありましたね。「お父さんの咀嚼する音がヤダ!」って(苦笑)。ただ、中学2年生で仕事のために鹿児島から上京したので、反抗期をそこまで共にしなかった切なさみたいのは若干ありますね。
── 勘九郎さんは、息子さんたちがいずれ反抗期を迎えることになるかもしれませんが……。
勘九郎 楽しみですね。
上白石 楽しみなんですか(笑)?
勘九郎 うちは息子だからね。男に何か言われても「何を言ってんだ、このやろう!」って返せるけど、娘さんに「お父さんとは洗濯物を別にして」とか「咀嚼音が」とか言われたら、結構ザクザクと心に来るかもなぁ……。男の子でよかったなぁ(笑)!
上白石 しかも、咀嚼音のことは父に直接は言えなくて、こういうメディアのインタビューで話しちゃって、父は雑誌の記事でそれを知るという、すごく残酷なことを……。
勘九郎 かわいそう!
── 娘さんの記事をちゃんと読んでるお父さんが「咀嚼音が」と語る娘の発言を読むという……。
上白石 あれは今思うと、本当にひどいことをしてしまったなと反省してます(苦笑)。
勘九郎 でも親御さんから「理不尽な怒られ方はしなかった」というのはいいですね。うちなんて、理不尽な怒られ方しかしなかったですよ! ちょっと寝坊でもしようものなら「だからこないだの芝居もマズかったんだよ、お前は!」とか言われて……。「なぜそこを関連づけて怒るんだ?」って思いつつ。
上白石 それは確かに理不尽ですね(笑)。
『いだてん』から続く
ふたりの不思議な巡りあわせ
── おふたりは以前NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺』で同じシーンでのやり取りはなかったものの共演されています。これまでお互いにどのような印象を?
勘九郎 『いだてん』は時代が違ったのでシーンでお会いすることはなかったんですけど、それも含めて不思議な巡りあわせを感じてるんです。今回の映画でトータス松本さんがメインテーマ(『ふしぎなふしぎな生きもの』)で「おれがきみの父ちゃんだ」と父ちゃんの応援歌を歌ってくださってるんですけど、トータスさんは『いだてん』ではNHKの河西三省アナウンサーを演じてらして、上白石さんが演じた前畑秀子さんを「前畑頑張れ!」って応援してるんですよね。
上白石 ホントですね! 確かに!
勘九郎 時代を越えて、作品を越えてリンクするところがあってね。不思議な感情になりました。
今回はコロナ禍ということで一緒にアフレコをすることができなかったんです。僕が先に声を録ったんですけど、ちゃんとココに(父の思いを)残せているのか?という不安があって。でも、試写を観たときにね、本当に親子に見えて……いい作品だなぁって思いましたね。
上白石 『いだてん』の金栗さんの役のときにすごくお痩せになられてたので、役のためなら命を削る方なんだろうな……という印象をずっと持ってたんですよ。
勘九郎 上白石さんも大変だったでしょ? 僕はガリガリに痩せなきゃいけなかったけど、逆に上白石さんは、当時の前畑さんの写真も残ってるので、それに近づけるために体重を増やさなきゃいけなくてね。何キロ増量したんだっけ?
上白石 私は7キロくらい。「太れるよね?」って言われて「が、頑張ります……!」って(笑)。
勘九郎 お互いに大変だったね。
上白石 今回のアフレコの後に久々にお会いしたときは安心しました。「良かった! (体重が)戻られて」って。画面で見ても相当細かったんで、役のためなら本当に命を差し出すような方なんだなという印象がありました。
今回、私はほぼ最後に声を録らせていただいて、ザルードだけでなくサトシやピカチュウの声も入っている状態でアフレコをさせていただけて、一番やりやすい環境でできたと思うんですが、勘九郎さんの第一声を聞いたときに「あぁ、父ちゃんだ!」ってすぐに思いました。そこでココとザルードが培ってきた時間が見えたんですよね。勘九郎さんの声に助けられましたし、私自身、声を入れているときは100%父ちゃんだと思って演じていました。
── 『いだてん』では一緒のシーンがなく、今回は声での共演でアフレコもバラバラだったので、次回は生のお芝居でおふたりがご一緒されるのを見てみたいです。
勘九郎 ねぇ、そうですよね!
上白石 逆に緊張しちゃいそうです(笑)。
取材・文:黒豆直樹 撮影:稲澤朝博
※ぴあアプリでは中村さん、上白石さんのアザーカットも掲載中! アザーカットはアプリでご覧ください。
『劇場版ポケットモンスター ココ』
12月25日(金)より全国公開
(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2020 ピカチュウプロジェクト
中村勘九郎さん、上白石萌歌さんのサイン入りチェキを1名様にプレゼント!
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