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BABYMETAL、LinQ、9nine…アイドル界で「グループ名のロック化」が進んでいる

リアルサウンド

13/9/10(火) 8:00

0910babymetal.jpgBABYMETAL『メギツネ』(トイズファクトリー)

 最近のバンド名がやたらと文学的で散文的だ、少しだけ文芸に通じていますというセンスを見せたいのだね、と前回のコラムで書いたが、ちょっと待て、それ以前から「水中、それは苦しい」という強烈なバンドがいたと思い直した次第。主語と動詞、さらには読点までついた素晴らしきバンド名!

 と同時に、かつて三文字の漢字が主流だった政党の世界で、昨年唐突に「国民の生活が第一」を名乗るパーティーがあったことを思い出した。選挙の際に「みんな」「立ち上がれ」と続けば、これも立派な作文なわけで、文章化するネーミングというのはバンドの世界だけの流行ではないのであった。

 そう、気づけばバンド名だけでは全然ない。たとえば代官山「晴れたら空に豆まいて」、青山「月見ル君思フ」、神戸の「太陽と虎」など、いまやライブハウスにも文章みたいなネーミングは増え続けている。「太陽と虎」は中島敦の小説にあると言われても納得してしまいそうだし、「晴れたら〜」はほとんど江國香織のエッセイだ。そのうち「やわらかなレタス」みたいなハコが出てきてもおかしくない気がしてきた。

 たとえば「晴れたら空に豆まいてで、それでも世界が続くならと、踊ってばかりの国。ドリンク\500」と言われたとき、はからずとも「ドリンク\500」が一番バンド名っぽく響くわけだが、英単語+数字というグループ名(例・SUM41、GO!GO!7188)も、昔ほどは見かけなくなった。

 かつてバンド名っぽかった英単語というのは、現在アイドル・シーンで流行っている印象がある。いまや国民的存在になりすぎて誰もそんなこと思わないのだろうが、「AKB48」なんて、ゴリゴリのインダストリアル・テクノユニットだと言われても全然不思議じゃない名前。「SKE」「HKT」と記号化されたアルファベットが続くと、私などは、うっかり狂気のハードハウスを流す覆面集団を想像してしまう。もちろんそんな人間は稀だろうが、ともかく、AKBがこれだけ国民的存在になれた一因に、名前が「おニャン子」的なものではなかったことは挙げておいていいと思う。

 いい大人はおおっぴらに夕焼けニャンニャンの話をしない。「エーケービーがさぁ」といえば、何かETCやCPUの話をしているようなスマートさが感じられるわけで、モー娘。やメロン記念日とAKBの溝はそこにあったと考えられなくもない。いまや、アイドルだからといって可愛らしいグループ名は不要。むしろ「ひめキュンフルーツ缶」が珍しく感じられるくらいだ。

 「BABYMETAL」はもちろん意図的に狙っているわけだが、「LinQ」や「9nine」も限りなくロックバンド的な匂いがする。メタルやパンクの世界によくいそうな、いや実際にいるグループ名。非常階段とユニットを組んだBiSにしても、「BIS」という同名のバンドは過去の洋楽に、そして日本のビジュアル系にも存在した。彼女たちが選んで背負ったグループ名、バシッとシャープに決まるカタカナの響きと比べると、今のロキノン系バンド……たとえばBase Ball Bearやフジファブリックのほうがよっぽど少女らしいものに思えてくるのである。

 大型フェスに進出し、ロックとのクロスオーバーが進むアイドル・シーンというのは近年よく言われていることだが、まず最初にグループ名のロック化があったのかもしれない。ちなみにここでいう「ロック化」とは、ほとんど「気合い」と同義である。熱い団結力を掲げて全力で走って踊る女の子。にゃんにゃん、という言葉じゃ気合いは入らないよね。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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