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「何もないことの積み重ねをエンタメに」岡田将生×三浦大輔『物語なき、この世界。』

ぴあ

岡田将生×三浦大輔 撮影:源賀津己

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3年ぶりとなる三浦大輔の新作舞台、COCOON PRODUCTION 2021『物語なき、この世界。』が、7月に東京で、8月に京都で上演される。これまで猥雑で、欲望むき出しの人間たちの物語を数多く創作してきた三浦だが、本作ではその“物語”自体を疑うことから始め、自ら「挑戦作」と位置づける。そこで主人公の菅原裕一を演じる岡田将生とともに、どんな舞台が立ち上がっていきそうか。作品にかける想いを訊いた。

中途半端の極みのような菅原裕一を演じること

――シアターコクーンでは3年ぶりの新作ですが、創作の出発点になったこととは?

三浦 これまでは人間のいやらしいところを描くとか、揚げ足を取るような表現が僕の作風とされてきたと思うんです。今回もその根本は変わりませんが、なんか世の中全体の揚げ足を取りたい、そんな大風呂敷を広げてみたいと思っていて(笑)。

岡田 (笑)。

三浦 ふと思ったんです。ずっと僕は“物語”をつくってきたけど、それって都合のいい事柄だけ、自分の描きたいもののエゴだけでうまくまとめようとしていたんじゃないかなって。ただそもそも人って、自分の人生を物語だと思いたがる節があるんですよね。単なる出来事の羅列を都合よく解釈して、物語にしているだけ。そういうことに対して揚げ足を取りたかった、というか。まぁひねくれ過ぎなんですけど(笑)。

岡田 でも僕自身もひねくれているところがあるので、少しわかる気がします。人間誰しもそういう部分は持っていて、どこか悦に入る時ってありますよね。

――岡田さんは映画『何者』で三浦さん作品に参加されましたが、今回舞台のお話があった時はどう思われましたか?

岡田 本当に嬉しかったです。やはり舞台ということで、映画よりももっと濃密に、三浦さんの演出を受けられて役に没頭出来ると思うので。俳優という仕事をしていると、どんどん違うステージに行きたいとは思いつつも、そのためには何かきっかけがないとなかなか難しくて。そういった意味でも、三浦さんの舞台に立つことで、また違う一面を見せられるのではないか、とそんな想いもありました。

――新作『物語なき、この世界。』ですが、三浦さん作品における主人公は、ほぼ毎回「菅原裕一」ですね。

三浦 そうですね、もう10代目くらいじゃないかと(笑)。

岡田 そうなんですか!?

岡田 そうそう。まぁ言ってしまえば、僕の分身でしかないんですけどね。でも岡田くんがやる菅原っていうのは、すごく僕の中でしっくりきて。やっぱり作家や演出家っていうのは、今まで見てこなかったその人を見たい、引き出したいと思うもの。ほかの作品で岡田くんが、菅原裕一みたいな中途半端の極みとも言える役を演じている姿って見たことなかったですから。どんな男かよくわからない、曖昧な人物をやってもらいたいと思ったんです。

岡田 それってすごく難しい作業ですよね……?

三浦 綱渡りみたいな作業になっちゃいますからね。すごく難しいとは思います。でも僕の中で岡田くんがやる菅原のイメージはすぐに沸いたんですよね。

――この役を構築していく上で、どんなことが最初の手がかりになっていきそうだと思いますか?

岡田 役もそうですが、やっぱり作品づくりなので、まずは共演者の皆さんと、このチームでやっていくって意識を高めていくことが、いつも舞台に出る時の最初の作業になっています。そして10代目にはなりますが(笑)、また違う菅原裕一を見つけたいですし、三浦さんやこのチームと、芝居づくりという点では密にやっていけたらと思います。

何もないことを提示し、面白がってもらう

――その共演者ですが、峯田和伸さん、寺島しのぶさんといった三浦さん作品経験者のほか、柄本時生さんや内田理央さんなど、バラエティに富んだ面々が集いました。

三浦 僕にとっては挑戦作になるので、まずは信頼出来る岡田くん、峯田くん、寺島さんというお三方をメインにしたいと考えました。あと思ったのは、統一感を持たせたくないなということ。バラバラな、まとまりのない感じも、キャスティングの狙いではあります。それぞれ単体で面白い人というか、時生くんとか内田さんとか、なんか俗っぽいと思うんですよ。いや、言い方悪いか。存在がこう…俗っぽいっていうか。

岡田 また「俗っぽい」って言っちゃってますけど(笑)。

三浦 (笑)。つまりこの作品の匂いみたいなものに合っている方がいいなと思ったんです。

――新宿・歌舞伎町を舞台に、岡田さん演じる売れない俳優・菅原と、峯田さん演じる売れないミュージシャン・今井が出会うことから作品は動き出します。

岡田 ただ菅原と今井の間には、特に何もないんですよ。その何もない人間関係って、これまで作品にしてこなかっただけで、往々にしてそうあることが多いと思っていて。で、今回はその何もなさに執着して描くことで、浮き彫りになるものがあるんじゃないかなと。つまり何もないことをお客さんに提示し、何もないことを面白がってもらおうと思っているんです。

岡田 まためちゃめちゃ難しいことをサラッと言いますね(笑)。

――演じる側にとっては、相当ハードルが高い作業ですよね?

岡田 しびれますね(笑)。

三浦 (笑)。だから演出に関しても、何もないことに突き進む感じになると思います。そこに何かが生まれてはダメだし、例えば菅原と今井の間に友情とかが芽生えてはダメなんです。

岡田 難しい!

三浦 でも結果的にそういうものの積み重ねが、ひとつの世界観になっていくのではないかと思っていて。

岡田 プロットを読んだ時点で、三浦さんの世界だなと思うのと同時に、また今までとは違う匂いも感じました。

三浦 結果、それがエンタメになり得るかが勝負ですし、僕にとっての挑戦だと思っています。

取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己

公演情報
COCOON PRODUCTION 2021『物語なき、この世界。』
作・演:三浦大輔
出演:岡田将生 / 峯田和伸 / 柄本時生 / 内田理央 / 宮崎吐夢 / 米村亮太朗 / 星田英利 / 寺島しのぶ / 増澤璃凜子 / 仁科咲姫 / 日高ボブ美 / 有希

【東京公演】
2021年7月11日(日)~2021年8月3日(火)
会場:Bunkamura シアターコクーン

【京都公演】
2021年8月7日(土)~2021年8月11日(水)
会場:京都劇場

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170751

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