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「余白がすごく美しい作品です」太田基裕&牧島 輝ペア『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』稽古場インタビュー

ぴあ

太田基裕&牧島 輝 撮影:杉映貴子

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ブロードウエイと韓国で大ヒットしたミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』が、’19年の日本初演から2年ぶりに上演される。

亡くなった友達アルヴィンの弔辞を書くために、小説家トーマスが、アルヴィンと共に記憶の旅に出る切なくやさしい二人ミュージカル。

今回は、日本初演ペアの田代万里生&平方元基に加え、新ペアとして太田基裕&牧島 輝が出演する。

稽古が始まっての心境を、アルヴィン役の太田とトーマス役の牧島に聞いた。

アルヴィンとトーマス、それぞれの向き合い方

――稽古3日目だそうですが、いかがですか?

牧島 この2日間は本読みをやっています。僕は今まであまり、こんなふうに座った状態で台本を読むような稽古をしたことがなかったので、この、最初にみんなで「ここはこう思う」と擦り合わせながらできる稽古をすごくいいなと思いました。今は少しずつ理解が深まっているのかなと思います。

――太田さんと牧島さんのチームだけでやられているのですか?

太田 そうです。僕たちと演出の高橋さんとでやっています。最初に一度全部を通して、その後は少しずつ。高橋さんの演出のお話もうかがいながら、「僕はこういう解釈でいます」みたいな話をして、ゆっくりやっていっています。なので今はそれぞれがイメージしているものをちょっとずつ共有しているような段階ですね。

――それによって役の理解も深まるのでしょうか?

太田 というよりも今は、ふたりの関係性のバランスをどんなふうに組み立てたらいいかを考えたり、探っているような感じです。役の理解に関しては、僕は自分が演じるアルヴィンをどういう人物像にしたいかは、正直わからなくていいかなと思っているところもあるかな。

――というのは?

太田 アルヴィンもトーマスも完璧な人間性というわけではないし、実際誰でも自分で自分のことはわかっていなかったりするじゃないですか。だから「アルヴィンはこれです!」とならないようにしたいというか。この作品はそういう哲学的な追及の仕方も必要な気がするので、その辺は大事にしたいなと思っています。

――牧島さんは本読みの中でどのようなことを感じられていますか?

牧島 これは単純に今感じていることですが、みんなが「トーマスはひどいヤツだよね」って言うから、僕はちょっと傷ついています。

太田 (笑)。ごめん!

牧島 トーマスは必死なだけだったりするし。もちろん僕もひどいなとは思うことはあるんですけど、よくよく考えると自分もそういう行動を取っちゃってるなと思うこともあったりして。だから「ひどい人だよね」って、自分が言われているような気分になるんですよ。

太田 昨日、何回も言われてたもんね、「トーマスは本当にひでえヤツだな」って(笑)。

牧島 でもそれは、みんな俯瞰で見ているからだと思うんですよ。実際に当事者になったらまた違うんじゃないかと思う。自分がトーマスになったつもりで考えてみると……

太田 必死がゆえに見えなくなることがあるってことだよね。

牧島 そうなんです。必ず死角ができる。そこがどう見えるかなってことは考えます。角度によって全然見えるものが違ったりするので、面白いなと思いました。

――そのトーマスのひどさみたいなところは、アルヴィン役の太田さんはどう感じていますか?

太田 アルヴィンとしては、思っていたより「ひどい」とは思わなかったです。彼は、トーマスがどういう選択をしても受け入れてあげるのが愛だってことを感じている人だと思うから。もちろんがっかりしたり落ち込んだりはしますけどね。でもそれをすべて彼のせいにするってことはないんじゃないかと思っています。だからこそ彼のことを愛し続けたんだと思うし。だから信じ続けられた、希望の光を失わずにいられた、という部分があると思います。なので、演じていて、そこまで彼を否定するような感覚にはなっていないです。がっかりはあるけど。

太田「牧島くんの魅力が炸裂したトーマスと会えそう」
牧島「随所に太田さんの魅力を感じています」



――楽曲は歌ってみてどうですか?

太田 難しいです。いと難しい……

牧島 音たち!

太田 ね。音たち、いと難しい。オタマジャクシ(音符)が夢に出てきそうです。

牧島 (深く頷く)

――どんな難しさですか?

太田 楽曲の中でストーリーも展開していくし、心情も見せなきゃいけないので、その空気感をどう紡いでいけばいいのかなっていう難しさがあります。でもそれは地道に積み重ねるしかないなと思っていますけどね。

――牧島さんはこういうタイプのミュージカルに出演するのが初めてとなりますが、実際に始まってみていかがですか?

牧島 大変なことは始まる前からわかっていたので。今は、この新しいことを楽しみながらやりたいなという気持ちでやっています。だから自分的にはすごく楽しめているかな。

太田 ポジティブ!

牧島 僕は実の姉に「根暗なポジティブ」と言われていまして。

太田 (笑)

牧島 あまり明るくはないけど前向きなんです。だから何周もして楽しいです。

――おふたりは演じていて、どういうところにこの作品の魅力があると思われますか?

太田 余白がすごく美しい作品だなと思っています。言葉で決めつけないですし、答えにも行き着かない。そういう余白の空間で紡いでいく作品だなって。だからお客さんも想像が湧くんじゃないかと思いますし、そうやって「なんだったんだろう」と考える時間が、この作品を観た後のプレゼントというか。そういう余白のある作品だなと思っています。

牧島 まったくもって同意見です。

太田 (笑)

牧島 でも本当に。この余白って幕が開いても埋まることはない部分なんだろうと思うし。

――最後に、この作品でお互いのどんな姿が見たいですか?

太田 このまま稽古が進めばきっと、牧島くんの魅力が炸裂したトーマスと会えそうなので。それが楽しみです。

牧島 僕はすでに随所に太田さんの魅力を感じています。これが本番に向けてどんどん磨かれて、きっと繊細で美しいアルヴィンができあがるんじゃないかなと思っているので、それが楽しみです。

太田 なにプレッシャーかけてるの(笑)。

牧島 それはやっぱり、期待に応えるのが太田さんなので。いつだっていろんな人の期待に応えてきたのが太田さんですから!

太田 誰だよ(笑)。

牧島 だからとっても楽しみです!

取材・文:中川實穗 撮影:杉映貴子



ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』
2021年12月13日(月)~2021年12月25日(土)
会場:東京・よみうり大手町ホール

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