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Official髭男dism、[ALEXANDROS]、BBHF……新たな音楽体験とポピュラリティを両立する3バンドの独自性

リアルサウンド

19/12/2(月) 7:00

 今年、飛躍的なブレイクを果たしたOfficial髭男dismがことあるごとに発してきた「グッドミュージックを届けたい」という言説。そこに含まれる要素が、ただ美メロや歌唱力ではないことはリスナーも気付いているだろう。それは「Pretender」のヴァースやサビごとのアレンジやサウンドプロダクションの違い、音作りの決定的なイメージのためにレコーディングの最中に小笹大輔がギターアンプを買いに走ったエピソードしかり。徹頭徹尾、一曲の中で多面的なアプローチを行い、聴きごたえと中毒性を両立する楽曲を目指すからに他ならない。

(関連:ヒゲダンの歌詞はなぜグッとくる? Official髭男dism「Pretender」を軸に特徴を読み解く

 中でもサウンドプロダクション面で貪欲にオルタナティヴR&Bやヒップホップなど、現行の世界のポップミュージックと符丁するデジタル/エレクトロニックな要素を導入するバンドは何もダンスミュージックに軸足を置くバンドばかりではない。今回は音楽性やバックボーンは異なるが、各々、多面的なアプローチを行う日本のバンド、[ALEXANDROS]、BBHF、そしてOfficial髭男dismを例に、その共通項や独自性を探ってみたい。

 まず[ALEXANDROS]。軽快なファンク要素を持った最新デジタルシングル「あまりにも素敵な夜だから」が、少々驚きを持って迎えられた印象がある。だが、日本とニューヨークを往復して制作した昨年リリースのアルバム『Sleepless in Brooklyn』で、川上洋平が「過去を一旦全て捨ててしまいたかった」と、様々なインタビューで語っていたように、グルーヴに対する意識はすでにアップデートされていたと思う。少し振り返ると、[ALEXANDROS]はUK王道ロックのDNA(Oasisなど)を持ちながら、川上がそうした大きなグルーヴに自身の歌メロが必ずしも合わない自覚を持っていた。どちらかと言えばラップ的な符割と、特徴的な庄村聡泰のイレギュラーに差し込まれるスネア、さらにはギターやベースのリフも一丸となって突っかかるようなビートを醸成するところにこのバンド最強の中毒性がある。『Sleepless in Brooklyn』で言えば「I Don’t Believe In You」が象徴的だ。

 以前、まだ「ワタリドリ」もリリースされていない頃、川上はボーカルの符割についてラップの口楽しい感覚をエミネムのフロウで体感し、自身のボーカルにも影響があると話していた。今回の「あまりにも素敵な夜だから」はこれまでの力技的な符割から、ぐっとソウルミュージックとポップス両方の美味しい中間地点へと洗練を果たしたものだが、ギターロック出自のバンドでこのグルーヴにたどり着いたことは稀有だ。「ワタリドリ」で一早くギターロックバンドとしてEDM要素を取り入れた彼ら。同曲のYouTube再生回数が1億回を突破した約5年後の今はフィジカルなビート感を磨き上げている。世界で戦うために何が自分たちに必要なのか? そこに自覚的な彼ららしいアプローチだと思う。

 そしてUSインディーとのシンクロを見せ、リスナーの意識を変えることと格闘していた尾崎雄貴を軸とするBBHFは制作とリリース元をデビュー時以来タッグを組んできたソニーから、ラストラム内の自身のレーベル<Beacon>へ移した。そして配信オンリーのEP『Mirror Mirror』ではデジタルな要素、そして一方のCDリリースも行ったEP『Family』では肉体的な要素を表現したとインタビューで語っている(参照:Mikiki)。だが、それは明確に音作りのためにデジタルな機材しか用いない、逆に生楽器しか用いないという方法論ではなく、表現したい音楽が見えていたからこそのテーマの振り分けだった。実際、よりフィジカルでスケール感もある『Family』の中でも、輝度の高いシンセサウンドが印象的な「なにもしらない」や、薄くかけられたプリズマライザーが、ボーカルに神聖かつ力強さを与えている「水面を叩け」など、純粋で崇高なマインドが音選びを必然的なものたらしめている。そう感じさせる理由として歌詞の強さもある。〈飛び込み水面を叩け 骨が砕けるくらい〉――生きている実感と言ったらあまりにもありきたりだが、このEPでの尾崎の言葉は激烈なまでに聴き手の細胞に訴えかける。ここまで透徹した音楽性はBon Iverと比肩するほどだ。BBHFの場合、世界の音楽とシンクロしつつ、今たどり着いたのは普遍的でパーソナルな音楽への愛情の発現なのだろう。

 この2バンドがJ-POP楽曲の幅に対してカウンターを打ち続けてきたことに比べると、冒頭でも書いた通り、Official髭男dismはJ-POPにも明らかにルーツがあり、その幅を広げたい、いい曲を書けば必ず多くのリスナーに届くはずだというスタンスで活動してきたバンドだ。だからこそ、そのアレンジやサウンドプロダクションの細部にわたるこだわりは強く、そのことが明確になったのが2nd EP楽曲「Stand By You」だろう。打ち込みと生ドラム双方で生音ヒップホップ的な少しつんのめるようなビートを刻み、サビでバックトラックがブレイクしクラップが入り、さらに裏表にクラップが入る展開、そして2018年当時、まだヒップホップシーンでしかほぼ耳にしなかったクワイア的なコーラス。洋楽のトレンドを満載したこの曲が2018年10月のタイミングで世に出ていなければ、彼らのプロデュース能力や楽曲のパワーはまた違う切り口で語られていたのではないだろうか。もちろん、最新のアレンジが悪目立ちするわけでなく、あくまでも藤原聡の書く跳躍力のあるメロディが楽曲の軸を構成しているからに他ならないのだが。ヒゲダンが言うグッドミュージックが時代を表現する鮮烈なサウンドメイクを包摂していることは間違いない。今年を代表する1枚となったアルバム『Traveler』も細部を聴き込むほどに周到な仕掛けが満載されている。

 どの時代のどんなジャンルの音楽からもリファレンスを得られる時代だからこそ、バンドがバンドである必然性は何を取捨選択するかに左右される。今回例に挙げた3組のように新たな音楽体験とポピュラリティを両立する日本発バンドの動向を今後も見続けていきたい。(石角友香)

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