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BABYMETAL、BiS階段…「規格外のアイドル」が次々登場する背景を掟ポルシェが分析

リアルサウンド

13/8/25(日) 19:37

20130825-okite.JPG アイドル界の論客としても知られる掟ポルシェ氏が、シーンの最前線を語る集中連載第2回。第1回「ハロプロはソフトレズ容認へ!? 掟ポルシェが語る『アイドルと恋愛』」では、アイドルにとってタブーとも言える恋愛問題について、アイドルと事務所とファンが相互に納得できるかもしれない着地点を示してもらった。

 第2回では、音楽シーンの中のアイドルという視点から、アイドル歌謡曲の今について語った。

――アイドル歌謡曲は最近、音楽面でもマーケット面でも大きな変化を遂げているように見えます。

掟ポルシェ(以下、掟):まず、AKB48が「アイドルのCDは付録である」と、完全に割りきったリリース展開をしたのが大きかったですね。もう、これは一大発明というか。CDを一枚買うと握手が一回出来る。何度も握手したいから同じCDを何枚も購入する。イベントを複数打ってその度に握手会をやってCDの売上枚数を稼ぐというビジネスケースが、アイドルの世界では完全に一般化しています。同じCDやレコードを何枚も買うというのは、一部の熱狂的アイドルヲタがその愛情と忠誠心を示すために昔からあったわけですが、2009年から始まったAKB選抜総選挙で、CDに投票権を封入したことから、同じCDを何枚も購入することがそれほど異常なことではなくなった。他のアイドルも、同じCDのジャケ違いをリリースしたり、ヲタの同じCD複数買いを促す手法をとるようになってきていますし、ファンも「AKBのファンみたいに同じCDを100万円分とか買ってないので、10枚しか同じCDを買ってない自分は全然濃いヲタじゃない」と麻痺してきているのが現状です。それまでアイドルの制作や事務所の方々には「自分たちは音楽を売っているんだ」という意識が当然あったと思いますが、CDが全般的に売れない時代になり、握手会商法をレーベル側から求められ、そちらにシフトせざるを得なくなった。結果、売上が伸びれば制作費を以前よりかけられるようになったりもしますし、悪いことではないですよね。ファンの疲弊度は相当なものだと思いますが。

―― ここ数年の”アイドル戦国時代”については?

掟:最早、アイドル戦国時代ではないとよく言われていますし、確かにそう思います。AKBの国民的アイドル化や、ももいろクローバーZの人気が爆発したことで、アイドルファンが増えているアイドルブームのうちに頭ひとつ抜けようとして他のアイドルを過剰に意識し、アイドル同士がギラギラと競い合うのが戦国時代でしたが、アイドルがブームではなくジャンルとして定着するという形に落ち着いたかと思います。しかしこの、戦国時代という言葉を額面通りに受け取りすぎる運営もいて、そういうのはあまり演出や設定として行き過ぎると、見ている方が辛くなってくる。常にケンカ腰じゃなきゃいけないとか、ライバルを出し抜かなきゃいけないとか、ギラギラしていなきゃいけないとか、そういう無意味なギスギスが、このキーワードが流行ることによって植え付けられてしまった弊害もあったかと思います。

――妙な戦闘姿勢が生まれていると?

掟:戦闘姿勢というか、無闇な攻撃性がなければアイドルはダメなんだというような誤解が若干生まれている。今、ベイビーレイズという「乗り込み! 乗っ取り!! アイドル」をコンセプトにしたグループがいるんですが、他のグループのイベントを乗っ取るということ自体、現実的には無理がありますよね。もちろんアイドル本人の意思でそうしてるわけじゃないんだから、メンバーとしては胃が痛い話じゃないですか。いまはあまりにもアイドルが多すぎて、どこの事務所さんも特色づけに苦慮されているんだろうなとは思いますけど、13歳とか14歳の女の子にそんな無茶なコンセプトを与えなくてもなぁと。普通に活動しているだけでも十分魅力的なのに、コンセプトにアイドル戦国時代ということへの誤解があるおかげで彼女たちは大変なんですよ。でも、現在ベイビーレイズは『あまちゃん』劇中のアイドルソングを歌っていて、その曲はベイビーレイズ名義でもリリースされるようなので、そこは良かったなと。今一番売れている国民的アイドル=『あまちゃん』に乗り込んで、平和的に乗っ取れたというか。でも、ライブなどの実力もあるんだから、もう少し普通にやらせてあげて欲しいグループですね。

ベイビーレイズ「暦の上ではディセンバー」(ポニーキャニオン)

――では、先ほど話に出た「特色づけ」の成功例は?

掟:前提として、アイドル歌謡曲というのは、アイドルが歌ってさえいれば、どんな音楽をやっていてもそれはアイドル歌謡曲になるんです。その前提を最大限に利用して、アイドルと真逆な音楽要素を加えて新しいものを作ろうという、アイドル歌謡の進化に意欲的な運営もいます。厳密にはコラボユニットですが、BiS階段がまさにそれ。アイドルグループのBiSと、ノイズ界の帝王・非常階段の合体ユニットですね。BiSはメンバー間のドロドロをそのまま演出として見せてしまって、その結果メンバーが脱退したり、素っ裸で野原をかけるPVを作って公開したり、他がやっていない過激なことは全部やってしまうグループとして以前から有名だったんですが、その無闇な過剰性と自由さを音楽に取り入れることで面白くなってきています。非常階段という、ノイズというジャンルで何十年間と世界のシーンをリードし続けてきた、本当のパイオニアとコラボしている。そこまで振り切ってやれば、まったく今までアイドルに興味を持たなかった層まで伝わりますよね。

――なぜ以前は、そういう振り切り方が難しかったのでしょう?

掟:アイドルは本来清廉潔白なものであるべしという、制約が多いジャンルなんですよ。芸能事務所の上層部の人の頭の中にその制約はあって、アイドルがアイドルらしからぬことをやるのに否定的、というか、単純に理解できなかったんですよ。アイドルが増えすぎて差別化のため、楽曲の個性を振り切る必要が出てきて、その制約が突破された。それに、現在ではほとんどのアイドル歌手が芸能と切り離されたのも、アイドル歌謡曲の自由度が上がった一因です。以前はアイドルといえばテレビ番組で歌うものだったのが、現在ではイベント中心の活動形態になり、テレビに出る芸能人になることだけがアイドルの成功ではなくなった。故にテレビコードみたいなものを想定する必要がなくなったのも大きいんじゃないでしょうか。

――あるジャンルのすごい人がアイドルと結びつくケースは増えていますね。

掟:BABYMETALは一番いい例ですよね。COALTAR OF DEEPERS、特撮のギターNARASAKIが最近では曲を書いていますが、彼はデスメタルやグラインドコアにも精通していますし、曲によってはメロディック・デスメタルのアーチ・エネミーの元メンバーであるクリストファー・アモットがギターを弾いたり、そのジャンルの本物がバックを担当するという事態が起こっている。付け焼き刃ではなく、アイドル+メタルを一貫してやり続ける姿勢が運営にある。「こんなのデスメタルと言ってほしくない」という拒否反応も当然ありますが、逆にyoutubeで動画を見た海外のメタルファンからの支持もあり、広く音楽ファンに受け入れられて、ライブでの動員を増やしてきています。

――そういう風潮はいつぐらいから顕著になりましたか。

掟: 5年くらい前に、アイドルのプロデュースについて事務所さんから相談されることもよくあったんですが、たとえばデスメタルみたいな音楽を完全に振りきってやるアイドルが出てきたら面白いですよね、と提案してきましたけど、その時は皆さん及び腰でしたね。アイドル戦国時代と言われるようになってから、特色づけのために音楽性を振り切る必要が出てきて以降のことだと思います。それに、BABYMETALみたいな特殊な音楽性のアイドルグループを作るには、プロデューサーが本当にその音楽を好きじゃないと、絶対にうまくいかない。BABYMETALはKOBAMETALさんという、本当にメタルが好きでしょうがない人がプロデュースしていますから。

――なぜ、そういうことができるアイドルプロデューサーが増えたのでしょう。

掟:予算の問題もありますよね。アイドルのCDが売れているとはいえ、昔に比べれば遥かに制作費も少なくなって、事務所が若いクリエーターに音楽性を一任することが多くなったから、音楽の自由度が高い面白いものが出てきやすくなったということでしょうね。元来アイドルはアイドルらしい清純な曲でデビューし、加齢とともに大人の女の恋を歌って、女優などへ転身していくものだった。でもそういった芸能としてのアイドルの通り一遍の筋道が、コンセプト重視の現代のアイドルには当てはまらなくなっている。芸能頭ではもうアイドルビジネスというものはわからなくなり、若い担当者に権限が与えられるようになったということかと思います。アイドルの本質は、ここ数年良い意味で変わりましたよね。非常階段がアイドルのバックをやっているなんて、やっぱり狂ってるし、本当にすごい時代になったものだと思いますよ。基本的に俺はアイドル歌謡曲を音楽として聴いていて、音楽というものは刺激であるべきだと思っているので、今の状況は面白いと思います。

次回「掟ポルシェが語るハロプロの真価 つんく♂サウンドの『特殊性』とは?」につづく

(取材・文=編集部)

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