豪華なクリエイター陣が参加したKinKi Kidsのニューアルバム『O album』、KREVAと三浦大知の6度目のタッグが実現した「Fall in Love Again feat. 三浦大知」などを紹介。歌の魅力を引き立たせたアレンジにも注目しながら聴いてほしい。

　久保田利伸の提供曲「The Red Light」、堂本剛・堂本光一の共作による「Topaz Love」、坂本真綾が作詞を手がけた「光の気配」、ジャニー喜多川氏に捧げた「KANZAI BOYA」などのシングルを収めたKinKi Kidsのニューアルバム『O album』。竹内アンナのペンによる「感情愛情CRAZY」、松本隆（作詞）、細野晴臣（作曲）の黄金タッグによる「99％」といった新曲も充実。ネオソウル、ファンクを取り入れた楽曲から叙情的なバラードまで、40代になったKinKi Kidsの成熟が感じられる作品に仕上がっている。伝統的な歌謡曲に根差したスタイルを現代的なポップスに昇華させた堂島孝平のプロデュースワークに最大の賛辞を送りたい。ややレイドバックした剛の歌声、正確なタイム感とピッチを貫く光一のボーカルもさらに向上。二人の感情が交差し、“KinKi Kidsの声”としか言いようがないハーモニーが立ち上がる瞬間は、やはり格別だ。

　小山慶一郎、加藤シゲアキ、増田貴久の3人体制となって最初の作品は、NEWS初のトリプルAサイドシングル『ビューティフル/チンチャうまっか/カナリヤ』。「ビューティフル」は、アコギの響きを活かしたトラックとボーカルからはじまり、“君は君のままで美しい”というメッセージを放つサビへとつながるミディアムチューン。世界各国の“おいしい”という言葉をちりばめた「チンチャうまっか」ではエキゾチックなビートに乗って官能的なロマンスを描き出し、「カナリヤ」では懐かしさ、切なさ、力強さに溢れた旋律のなかで、“傷を背負い、理想を掲げて生きていこう”とメッセージする。柔らかく大らかな雰囲気の増田のボーカル、シャープな手触りの小山のフロウ、豊かな感情をたたえた加藤の歌声のバランスも見事だ。

　東京スカパラダイスオーケストラのニューシングル『ALMIGHTY～仮面の約束 feat.川上洋平』（作詞：谷中敦／作曲：川上つよし）の表題曲は、『仮面ライダーセイバー』（テレビ朝日系）主題歌。大人のムードを感じさせるシックなメロディとスカパラ特有の高揚感が共鳴し、川上洋平（[Alexandros]）のヒーロー然としたボーカルが響き渡るアッパーチューンだ。『仮面ライダーセイバー』のテーマである“約束”を軸に、“人の想いや知恵は時空を超える”とメッセージする歌詞にもグッとくる。茂木欣一（Dr/Vo）がボーカルとを取るカップリング「仮面ライダーセイバー」（作詞：谷中敦／作曲：加藤隆志）はエンディングテーマ。ギターリフと管楽器が絡み合う戦闘的なサウンド、〈世界を変える気骨あるなら／まず自分自身を変えろ〉という熱い歌詞が突き刺さる。

　「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」のリリース、PUNPEEの「夢追人」への参加、尾崎裕哉への楽曲提供、そして『908 FESTIVAL ONLINE 2020』の開催など、コロナ禍の2020年を精力的に駆け抜けたKREVAのニューシングルの表題曲は、盟友・三浦大知をフィーチャーした「Fall in Love Again feat.三浦大知」。〈どんなに辛くても死んじゃダメ〉と率直に語り掛けるKREVAの歌い出しから、〈さぁ今ここから／Fall in Love Again／愛を確かめ合って〉という三浦の最後のフレーズまで、全編に渡り、“未来に向けて、新しい関係を作っていこう”というメッセージに満ち溢れている。神聖な雰囲気のトラックのなかで、しなかやなグルーヴを描く出す二人のフロウとボーカルも素晴らしい。カップリングには配信でスマッシュヒット中の「タンポポ feat. ZORN」を収録。リアルな生活と人生に根差したリリックで知られるZORNと日本のヒップホップシーンを牽引し続けるKREVAが“理想”を語り合うナンバーだ。

　“子どもの頃から大のポケモン好き”の岡崎体育が『劇場版ポケットモンスター ココ』の全テーマソングを書き下ろし。そのすべてを収めたのが本作「『「劇場版ポケットモンスター ココ」テーマソング集』だ。劇中のシーンに合わせて制作された楽曲には、最適なボーカリストをフィーチャー。命の連なり、家族への思いを歌ったメインテーマ「ふしぎなふしぎな生きもの」ではトータス松本（ウルフルズ）、さらに華やかな高揚感に彩られたオープニングテーマ「ココ」にはBeverly、切なさと穏やかさが混ざり合うエンディングテーマ「ただいまとおかえり」では木村カエラが豊かな歌声を響かせている。矢嶋哲生監督が作詞した「掟の歌」は岡崎体育とSiMとのスペシャル・ユニットSiNRiN が担当。シンガーの特徴を際立たせるアレンジワークにも注目してほしい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。