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でんぱ組.incから=LOVEと≠ME、バンもん!、ラストアイドルまで テレワークによる“チーム力”結集したコンテンツ

リアルサウンド

20/4/22(水) 12:00

 4月15日、でんぱ組.incが新曲「なんと!世界公認 引きこもり!」のMVを公開した。この曲とMVの制作は、すべてテレワークで行われた。MVが完成したのは公開の前日、4月14日。企画が始まってからMVが完成するまで、その間わずか8日である。

(関連:でんぱ組.inc「なんと!世界公認 引きこもり!」MV

 事の始まりは、でんぱ組.incのプロデューサー・もふくちゃんによるツイート。

 これ以降、ハッシュタグ「#でんぱ新曲作るんさ」を通じて、制作の進捗がリアルタイムで公開されていた。その動きを見てSNS上で「面白そう」と反応した人、もふくちゃんから指名された人など、これまででんぱ組.incの活動に携わってきたクリエイター(+ファン)が企画に参加することに。クレジットはYouTubeの概要欄に記載されているので、そちらを参照していただきたい。

 関係者のツイートや、MV公開直後にLINE LIVEで行われた配信番組「#でんぱ新曲作るんさ 完成記念 スタッフ打ち上げZoom座談」を基に、8日間を振り返りたい。

1日目
・もふくちゃんがファンへアンケートを実施。その結果、BPM200超の曲を制作することが決定。

・浅野尚志(作曲)が途中経過を報告。

2日目
・浅野による作曲工程が終了。

・前山田健一(作詞)による作詞工程が終了。

・YGQ(サウンドディレクション)が釣 俊輔(編曲)に指示を出し、編曲工程がスタート。

・メンバーがレコーディングに向けた練習・準備を始める。

3日目
・YGQがファンに協力を要請。コーラス音源の募集を始める。

4日目
・YGQがメンバーのボーカルとファンのコーラスが入った音源を公開。なお、600トラックにも及ぶコーラス音源を編集したのは、ミックスエンジニアの西 陽仁(ONEly INC.)である。

 ボーカルのレコーディングをする際、メンバーは音響や近隣への迷惑を考慮し、布団をかぶる、押し入れに入る、カーテンに向かって歌うなど、それぞれ工夫したそう。家で各自がレコーディングをする場合、「レコーディングに立ち会う」という形でのボーカルディレクションが不可能になる。それについて、相沢梨紗は「ボーカルディレクションがなかったのが怖かった」と語り、YGQは、各トラックのテンションの差によるやり直しが発生したことを明かした。

・MVディレクターとして森本敬大がアサインされる。

・メンバーの自宅にグリーンバックが届き、それぞれが撮影を開始。MVを森本に発注する前の段階からグリーンバックを使用すること自体は決まっていたため、通販サイトで手配済みだったそうだ。

・YGQがファンに呼びかけ、MVに使用する背景画像の募集を開始。結果、収集するのに半日かかるほどの量が集まる。

5日目
・釣俊輔が途中経過を報告。

6日目
・各ミュージシャンがレコーディングを実施。

・Yumiko(MV振り付け)による振り付けが完成。メンバーへのレッスンが完了したことを報告。

 通常、振り付けは音源が完成してから発注されるため、今回のように編曲と振り付けが併行して進むのはレアケース。また、古川未鈴は、オンラインでダンスレッスンを行う場合、インカメラを使用することにより画面の左右が反転してしまうこと、そのため対面でのレッスンとは別の難しさが発生することに言及している。

7日目
・トラックダウンを行う西らエンジニアチームに、全てのトラックを反映したデータが託される。

・深夜よりトラックダウンの生中継を開始。音源が完成する。

 トラックダウンとは、録音した歌や楽器の音量・音質などを調整し、まとめ上げる作業のこと。藤咲彩音がツイートしているように、この工程は普段メンバーさえも見る機会がない。かなり貴重な映像だ。

8日目
・森本がMVの完成を報告。翌日、YouTube公式チャンネルにてMVが公開される。

 8日間を振り返ってみて改めて思うのは、ものすごいスピード感で物事が動いていたのだなあということ。LINE LIVEで前山田が「やっぱりフラストレーションが溜まっていた」「今回は言いたいことが多かったので」と発言し、もふくちゃんが「多くのクリエイターさんがそうですよね。逆境にいるときこそすごい」と応じる場面もあったように、それぞれの内に秘めたものが爆発した結果、迅速かつ質の高いアウトプットが実現したのだろう。

 全ての作業をテレワークで行うという企画自体の面白さももちろんある。一方、1つの曲が生まれるまでにどのような工程が存在するのか、そしてそこにはどんな人が携わっているのか、それらがSNSを通じて見える化されたことの意義も大きい。

 今まさにストリーミング配信サービス隆盛期となりつつあるし、その流れはますます加速していくだろう。しかしストリーミングのデメリットとして、「1つの曲に携わったクリエイターのクレジットが見えづらい」ことが挙げられる。例えば、Spotifyには「楽曲クレジットを表示する」という機能があるが、ここで確認することができるのは「アーティスト名」「ソングライター名」「プロデューサー名」の3項目のみ。レコーディングに参加したミュージシャンの名前や、ミックスを手掛けたエンジニアの名前まで把握することはできない。

 同じくSpotifyのプレイリストシリーズ「Works」では作詞家・作曲家・プロデューサーがフィーチャーされている。『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)のように、演奏家や振付師のすごさをピックアップしている音楽番組もある。しかしそういった取り組みはまだ始まったばかりという印象だ。また、クレジットをウェブ上で公開していないアーティストも多く、クリエイター側にも、ポートフォリオのように自身の実績をまとめて公開している人は少ない。ユーザーからすると、気になって検索したとしても、必要な情報に辿り着くのが困難な状況だ。

 1つの曲が生まれるためにどれだけの(人的、経済的、時間的)コストがかかっているのか。それは、コンテンツを購入している(あるいは、提供者の厚意により無料提供されたコンテンツを楽しんでいる)消費者にとっても無関係なことではないだろう。そういった視点を獲得することは、広く言うと、職人による質の高い仕事にそれ相応の対価が支払われる環境の土壌作り――例えば違法アプリの撲滅、営業停止を要請された文化的施設への適切な補償などに繋がるのではないだろうか(もちろんそれらの問題は根深く、ユーザーの善意のみに頼っていい話ではないのだが)。

 最後に、でんぱ組.inc以外にもリモートワークで制作を行っているグループがいるので、それらを紹介していきたい。

 =LOVEと≠MEは4月15日、共同名義で新曲「次に会えた時 何を話そうかな」のMVを発表した。

 同曲の制作は2組のプロデューサー・指原莉乃による発案から始まったとのこと。ボーカルのレコーディング、MVで使用されている映像素材の収録はメンバーが自宅で行い、作詞家・作曲家・編曲家・サウンドディレクター・MV監督はそれぞれ自宅で作業した(参照:音楽ナタリー)。

 また、指原のツイートによると、関係者間でやりとりがあったとのこと(https://twitter.com/345__chan/status/1250363554399576065)。

 MVが公開されたのは4月15日であるため、当初想定していたスケジュールよりも早く進行したことが推測できる。それはつまり、でんぱ組.incの事例でも見られた「クリエイターは逆境にいるときこそすごい」という現象が、=LOVE/≠MEのチームでも発生していたということだろう。

 バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIは4月6日、「6 RESPECT」のMVを公開した。MVで使用されている映像はメンバーが自宅で撮影したものだ。

 「6 RESPECT」は2019年12月に発表された曲であるため、音源は既存のものを使用。レコーディングを行う必要がなく、4月上旬という非常に早いタイミングでの公開が実現した。昨今の状況を踏まえて新たに制作された曲ではないため、リアルタイムのメッセージが歌詞に直接反映されているわけではないが、MVの終盤には、6分割画面を利用してメンバーがファンへのメッセージを発信している場面がある。「新曲ではない」という特性を活かした工夫だ。

 ラストアイドルは4月14日、「愛を知る」の特別映像を公開した。この映像には、18名の選抜メンバーが自宅でダンスする様子、歌詞に合わせてリップシンクする姿が収録されている。

 「愛を知る」は2019年12月時点でリリースが決定していたシングルの表題曲で、同シングルは(リリースに伴うイベントは中止・延期となったものの)当初の予定通り、今年4月15日にリリースされた。3月11日には単曲での配信リリースがされ、MVも同じ日に公開されている。

 そのため、この特別映像は、昨今の状況を鑑みて急遽制作が決まったものと推測することができる。冒頭で「私たちと一緒にお家で踊りましょう!」と呼びかけているように、また、途中で「腕をしっかり振りましょう」といったアナウンスが被せられているように、外出を自粛せざるをえない生活が続くなか、リスナーに身体を動かす機会を提供する意図があったのではないだろうか。

 このように、ステージに立つメンバーのみならず、クリエイターやスタッフも含めた「チーム力」の結集といえるコンテンツが続々と発信されている。新型コロナウイルスによる感染症の拡大は私たちの生活を大きく変えてしまったが、一方、「文化」の重要性をそれぞれが考え直す機会にもなっているといえるだろう。「文化」をフィールドに仕事するすべての人々に対して、今こそエールを送りたい。(蜂須賀ちなみ)

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