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ウィズコロナ時代をどう描いている? 『#リモラブ』『姉ちゃんの恋人』『共演NG』の描写に注目

リアルサウンド

20/12/1(火) 6:00

 10月にスタートした秋ドラマはそれぞれ折り返し地点を過ぎ、後半戦へ。春ドラマと夏ドラマは4月に出された緊急事態宣言の下、撮影を中断したり放送延期になったりして大混乱だったが、ここに来て例年どおりのペースに戻ったようである。内容も医療ドラマ、推理サスペンス、ラブコメディ、不倫ものなど、定番ジャンルが並んでいるが、よく見れば、大きな違いがある。それは「物語の世界線がウィズコロナになっているかどうか」。リアルタイムのストーリーであれば、2020年10月から12月を描くことになり、世の中はウィズコロナで街ゆく人のほとんどがマスクを付けているニューノーマルの世界なのだが、大多数のドラマはコロナ前かコロナのない別の世界を描いている。はっきりとウィズコロナだと宣言したのは、『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)、『共演NG』(テレビ東京系)の3作だけだ。

 脚本・水橋文美江、主演・波瑠の『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』は、最もリアルにウィズコロナの社会を描いている。時代に果敢にコミットしていると言っていい。波瑠演じる産業医・美々(みみ)は企業の健康管理室に勤務し、1000人を超える社員たちに感染予防を呼びかける立場の女性。体温37.5度を超える人がいれば警備員を呼んで帰宅させるほどの強制力を持ち、責任感も強い。ソーシャル・ディスタンスを守らない人を手で制止したり、マスクを付けていない人にはマスクを渡したり、フェイクニュースを信じている人には「デマです」と注意したりと、勤務中はとにかく忙しい。そんな美々に接近していく人事部の青林(松下洸平)や五文字(間宮祥太朗)は、健康管理室に入るたびに手をアルコール消毒し、会議室では透明のアクリル板越しに会話する。そのオフィスライフは今のリアルそのものだ。物語は2020年4月の時間軸から始まり、リモートワークの時期を経て、また10月から再開して現在に至る。

 それゆえ、キャストのマスクの着用も現実に即していて、ひとりで自宅にいる場面は外しているが、勤務中やデート中などはきちんと着用。ドラマとしてリアリティのある映像を作ることが、実質的にキャストの感染防止にもなるわけで、これはうまい手だなと感心させられた。さらに、このドラマがすごいのは「コロナでたいへんだ」というシリアス劇ではなく、単なるお仕事ものでもなく、あくまでラブコメディだということ。連続ドラマとして、いち早くこの現実を笑いに変換しているのだ。脚本の水橋は6月に単発ドラマ『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)で既にコロナで変わった世界を描いており、林遣都演じるいまいちパッとしなかった会社員がリモートワークになってオンライン会議のファシリテーター(仕切り役)としての才能を開花させるなど、最先端のビジネスシーンにも取材していたことに驚いた。この『#リモラブ』ではそこからまた一歩踏み込み、ウィズコロナの時代に新しい恋が生まれたらどうするのか? デートは? キスは? その先は?という誰もが気になっていることを描いている。

 12月2日放送の第7話では、ついにお互いへの恋心を確かめあった美々と青林が、恋人としての身体的コミュニケーションをするのかという展開になってくる。青林はその前に同僚の我孫子(川栄李奈)と付き合っていたが(マスク越しのキスシーンがあった)、濃厚接触を避ける青林に不満を抱いた我孫子から別れを告げられてしまった。これも、ウィズコロナの時代のリアルかもしれない。その失敗を乗り越えて、美々とは濃厚接触するのだろうか? 第1話から繰り返し出てくるセリフに「命より大事なものがありますか」「あると思います」という2人のやり取りがあるのだが、医療のプロである美々からすれば、まさにこれは“命がけの恋”になるのかもしれない。

 ウィズコロナの時代の職場を描くということでは、脚本・岡田惠和、主演・有村架純の『姉ちゃんの恋人』も同じだ。こちらの仕事場は郊外のホームセンター。主人公の桃子(有村架純)は高校生のときに交通事故で両親を亡くし、弟3人を養うため、卒業後、ホームセンターに就職して真面目に働いてきた。第1話の回想シーンが印象的だった。今年の春、入荷したマスクを運ぶ桃子に客が殺到し、集団心理でちょっとしたパニックに。たしかに当時、ホームセンターやドラッグストアで働く人は精神的にも疲弊したに違いない。同時期、配送部の真人(林遣都)は前科持ちゆえ、コロナでホームセンターが経営不振になり、職を失ったらどうしようかと思っていた。そこが、「うちは大企業だから大丈夫」という前提がある『#リモラブ』とは違うところ。桃子の親友である、みゆき(奈緒)も大打撃を受けた旅行会社に勤め、この先、今までどおり働いていけるのかと不安を抱える。一寸先は闇になりかねない、約束された未来がない世界に桃子たちは住んでいる。

 それだけではなく、恋人たちはそれぞれ辛い思い出を抱えている。桃子は目の前で両親の事故を目撃し、真人は婚約者の女性がレイプされかけ相手の男を棒で殴ってしまい有罪となった。これらは新型コロナウイルスとは関係がない過去のことではあるけれど、そこで描かれる突然の不幸や理不尽な成り行きというのは、コロナの直接的、間接的な被害にシンクロするかもしれない。平和な毎日が続いていくはずだったのに、感染症で肉親が亡くなるとか、自分は悪くないのに感染し罪人とされてしまうとか、そんなことも連想できる。12月1日の第6話以降は、そういった残酷な現実を愛の力で乗り越えていけるのかという純愛ストーリーらしい展開になってくるようだ。

 ただ、ホームセンターで働く桃子たちはもうマスクをしていない。桃子の上司・日南子(小池栄子)が夜のバーに通うときも、真人の母・貴子(和久井映見)が弁当屋で接客するときも。桃子と日南子、真人とその先輩・悟志(藤木直人)でダブルデートするときも。これはおそらく、リアルではなくても、役者の顔をちゃんと見せて表情で語りたいという制作方針によるものだろうし、観る方としてもその方がストレスはないのだが、現実にホームセンターで働いている店員はみなマスクを付けているので、ふとした瞬間にどうしても違和感は出てしまう。

 同じようにウィズコロナを描きながらキャストがマスクをしていないのが『共演NG』である。企画・原作が秋元康、脚本・監督は大根仁という異色のタッグが作るテレビ業界コメディ。ベテラン男優・英二(中井貴一)とその元恋人でもある女優・瞳(鈴木京香)が25年ぶりに再会し、不倫ドラマで共演するさまをシチュエーション・コメディとして描いているが、まさかこのぶっとんだ設定で時間軸がウィズコロナとは思わなかった。

 第1話、ドラマの製作発表記者会見でドラマ部長やプロデューサーらスタッフが感染予防対策について話し合う。そこに集まったスポーツ新聞の芸能デスク・中川(橋本じゅん)ら記者たちはみんなマスクをしている。しかし、時間軸がリアルタイムなのだとわかるのはほとんどそこだけで、ドラマがクランクインしてしまえば、もう誰もマスクをしていないし、検温も「形だけですから」ということになり、アルコール消毒の場面もない。ただひとり、プロデューサーの是枝(迫田孝也)はいつも白いマスクをあごの下にし、そのマスクだけがウィズコロナの物語だという印になっている。

 共演NGの組み合わせが撮影現場にどんどん増えていき、あっちもこっちも大変というカオスな設定をさすがの安定感で演じる中井と鈴木の芝居が見どころだが、この作品はメタフィクションの要素があるだけに、現実では本番以外はフェイスガードをするなど感染予防をしているはずなのにという違和感が生まれてしまう。そもそも、ストーリー上の必然性がないので、ウィズコロナの設定にしなくてもよかったのではないか。例えば、長年、共演NGだった英二と瞳が今回のパンデミックで人生を見つめ直し、仲直りしようと改心するなど、メインの展開に組み込まれていればよかったのだが……。

 連続ドラマが全てウィズコロナの物語になる必要なんてない。現実は家族や友達とも気軽に会えず辛いから、ドラマではせめて“変わる前の世界”を観たい。いろんな思いが混在する現在、それでも新企画のドラマでウィズコロナを描く選択をしたクリエイターたちをリスペクトしたい。そういう作り手がいなければ、今後もし、また緊急事態宣言が出たり、大不況が訪れたりという過酷な事態になったとき、ドラマはもう現実に追いついていけないと思うからだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送
※第7話は12月2日(水)放送
出演:波瑠、松下洸平、間宮祥太朗、川栄李奈、高橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、福地桃子、渡辺大、江口のりこ、及川光博
脚本:水橋文美江
演出:中島悟、丸谷俊平
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/remolove/
公式Twitter:@remolove_NTV
公式Instagram:@remolove_NTV

■放送情報
『姉ちゃんの恋人』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:有村架純、林遣都、奈緒、高橋海人(King & Prince)、やついいちろう、日向亘、阿南敦子、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、スミマサノリ、井阪郁巳、南出凌嘉、西川瑞、和久井映見、光石研、紺野まひる、小池栄子、藤木直人ほか
脚本:岡田惠和
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Mr.Children「Brand new planet」(TOY’S FACTORY)
演出:三宅喜重(カンテレ)、本橋圭太、宝来忠昭
プロデュース:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)、平部隆明(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/anekoi/
公式Twitter:https://twitter.com/anekoi_tue21
公式Instagram: https://www.instagram.com/anekoi.tue21

『共演NG』
テレビ東京系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:中井貴一、鈴木京香、山口紗弥加、猫背椿、斎藤工、リリー・フランキー、里見浩太朗、堀部圭亮、細田善彦、小澤廉、若月佑美、小野花梨、小野塚勇人、森永悠希、小島藤子、岡部たかし、迫田孝也、岩谷健司、瀧内公美、橋本じゅん
企画・原作:秋元康
監督:大根仁
脚本:大根仁、樋口卓治
プロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、合田知弘(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作:テレビ東京/FCC
製作著作:「共演NG」製作委員会
(c)「共演NG」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kyouen_ng/
公式Twitter:@kyouenNG_tx

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