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ReNが考える、失敗と成功を重ねることの大切さ 「その繰り返しの中で人は少しずつ進んでいく」

リアルサウンド

21/2/11(木) 12:00

 シンガーソングライターのReNが、今年1月にニューシングル「Running Forward」をリリースした。

 前作「We’ll be fine」からおよそ8カ月ぶりとなるこの曲は、テレビ東京 金曜8時のドラマ『今野敏サスペンス 警視庁強行犯係樋口顕』の主題歌として書き下ろされたもの。まず耳に飛び込んでくるのはアコギをフィーチャーしたオーガニックなサウンドだが、力強く疾走感あふれるリズムはEDMからの影響をも感じさせる。どんな苦境に立たされても諦めず、前を向いてひたむきにチャレンジする人々の背中を押すような歌詞は、コロナ禍で生きる我々へのエールでもあるかのようだ。

 前回のインタビューでは、第1回目の緊急事態宣言が解除された直後の心境について、率直に語ってくれたReN。それからまたさらに半年以上が過ぎ、現在はどんな気持ちでいるのだろうか。楽曲の制作エピソードや、歌詞に込めた思い、プロ山岳ランナー上田瑠偉と共に絶景の中で撮影されたミュージックビデオの裏話など、じっくりと聞いた。(黒田隆憲)

出来ることは100パーセントやっていこうというモードに切り替えた

ーー前作「We’ll be fine」以来のインタビューとなりますが、この約8カ月をReNさんはどのような思いで過ごしてきたのか、まずは聞かせてもらえますか?

ReN:前回のインタビューの時にも話したと思うのですが、コロナ禍でライブがほとんど出来なくなってしまったことに、最初はものすごく落ち込みましたね。制作をするための時間はたくさんあったのですが、なかなかポジティブな気持ちにはなれなくて。そんな中で曲作りにトライしてみても、思うようにいかない時期が続きました。

 ただ、今年に入ってすぐに2回目の緊急事態宣言が発出されたことに関しては、自分の中ではある程度覚悟はしていたんです。去年までは「コロナがあったから」ということが、ある意味では言い訳にもなったけど、そろそろちゃんと前を向かなきゃという気持ちでいます。みんな、この状況の中でなんとか工夫して生きているわけですから、僕も出来ることは100パーセントやっていこうというモードに切り替えたので、今の気分は割とポジティブですね。

ーーインスタライブやツイートなどでも、常にReNさんはポジティブなメッセージを発信している印象があります。

ReN:例えばライブなどでは、たとえステージ上で弱音を吐いてしまったとしても、その分パフォーマンスで盛り上げるというか。「やっぱりReNのライブはパワーをもらえるよね」と言ってもらえたと思うんです。でも、今このライブが出来ない状況で、例えばSNS上で弱音をもし吐いたとしたら、それだけが記録に残ってしまうじゃないですか。SNSの使い方は人それぞれだと思うし、他の人のことをあれこれ言うつもりは全然ないんですけど、僕自身はあまりネガティブな気持ちを書き散らかしたくないんですよね(笑)。

 もちろんコロナ禍という、誰1人経験したことのない世界的なパンデミックの中、どうしても落ち込んでしまう時はあります。「気づき」もたくさんあるけど、生活が一変してしまった時に「自分の生きる意味は?」とかまで考えてしまう人もいると思うんですよね。普段、慌ただしく生きている時には考えないことまで考えてしまうというか。自分を無力だと感じてしまったりすることもあるのかなと。同じシチュエーションでも感じ方、悩み方は十人十色なのだけど、それでもやはり、こういう時こそ自分を強く持つ必要があるのかなと思います。生きていればいつか必ずいいことがあるって僕は信じているんですよね。

ーーそういう強い気持ちを持つため、気持ちをポジティブに切り替えるために、ReNさんはどんなことをしていますか?

ReN:まずはやっぱり、誰かと話をすること。1人で悶々と考えてしまいがちですけど、人と話すことで気持ちが落ち着いたり、少しでも希望を見出したりすることってあると思うんですよ。なので、僕は仲の良い友人と、普段は話さないような話題についてもゆっくりと話す機会を作るようにしていました。そうすることで「自分だけが辛いわけじゃないんだな」と思えたのは大きな力になりました。

 それと、僕自身はファンとのコミュニケーションにも救われましたね。今までライブをやることで、オーディエンスとの「つながり」を感じていたのがすごく大きな力になっていたのですが、コロナ禍では例えばインスタライブなどを開催して、そこでみんなに話しかけたり、逆にみんなからの声を聞いてみたり、そういうところで「繋がっている」という感覚を味わえたのはすごく嬉しかったです。

ーー今回リリースされたシングル「Running Forward」は、ドラマ『警視庁強行犯係樋口顕』の主題歌として書き下ろされた曲だそうですね。

ReN:メインキャストの内藤剛志さんは、以前から僕のライブに遊びに来てくださっていて。それがご縁となって、今回のお話に繋がりました。まずは内藤さん、ドラマの制作チームの方たちと1時間くらい色んな話をさせてもらいました。ドラマの内容がこうで、それに合わせて楽曲はどんなイメージで……みたいな具体的な話というよりは、内藤さんが今までどういう思いで俳優をやってきたか、僕がどんな思いで曲を書いてきたかなど、同じ表現者としての深い話をさせてもらいました。そんな中で、徐々に書くべきテーマが決まっていった感じでしたね。

 内藤さんからいただいたテーマは、「疾走感があり、熱い中にも涼しさを感じさせる曲」というもの。僕の曲からいつもそういうイメージを持ってくださっていたみたいです。なかなかの難題でしたが(笑)、とりあえずあまり深いことを考えず自分が納得する曲を作ればいいんだなと。それで曲に取り掛かりましたね。

ーー歌詞は、新しいことに挑戦している人たち、苦境に立たされている人たちへのメッセージであると同時に、「We’ll be fine」からさらに一歩踏み込んだ内容というか。コロナ禍で生きる我々へのエールでもあるのかなと。

ReN:まさにそうです。自分で選んだ道を、妥協せずもがきながら進んでいく。失敗や挫折を経験しながらもそこから這い上がり、何か一つのことを達成したら、さらにその先の高みを目指す……。それって、僕自身がライブをやったり曲を作ったりしている中で常に繰り返してきたことでもあって。自分は不器用な人間なので、置かれている状況に全く影響を受けずに曲を作ることができなくて(笑)。自分がその時に感じていること、今まで経験してきたことを歌詞の中に注ぎ込んでいきました。

ーー〈ここまで歩んできた過去を振り返れば 簡単なことばかりじゃなかったから〉というラインを、歌詞の最初と最後に持ってきたのも、人生の「繰り返し」を意識しているように思いました。

ReN:僕がこの曲で、最も強く訴えたかったのがこのラインだったんです。この1年間は、コロナ禍でみんながもがきながら生きてきて。辛いことや苦しいこともたくさんあったし、今もまだ大変な状況は続いているけど、それでも僕らはここまで何とか進むことができたのだから、この先どんなことがあっても絶対に負けない、このまま走り切ろうというメッセージを込めたくて。人生を俯瞰で見た時、人は一生をかけて山を登っているようなものだと思うんですよね。

誰かと寄り添って生きていくためには、優しさと厳しさの両方が必要

ーーそういえば昨年11月にReNさんは、「苦しくても何度も立ち上がってその繰り返しが人生でしょ。その過程を鼻で笑うやつは 一生のその場所に留まることになる」というツイートをしていますよね(参考)。ここで言いたかったことも、この曲の歌詞に通じるものがあるのではないかと。

ReN:人の失敗をとことん叩く風潮ってあるじゃないですか。でも失敗した人たちは、必ず這い上がってきますから。僕の知っている人でも、ずっと「どん底」のままの人って全然いなくて。失敗したり、どん底に落ちたりした人こそものすごい力を手に入れて戻ってくるんですよね。僕は失敗したり、どん底を味わったりした人たちにすごく共感する。逆に、人が動いている「過程」を笑っている人は、そこから一歩も踏み出していないし、失敗した人たちに「何くそ!」という燃料を、ただで与えているようなものなんですよね。あのツイートをした時は、確かそんなことを考えていた気がします(笑)。

ーー〈ありきたりな優しさだけでは 大切な人を守り救い切れないんだ〉というラインには、どんな思いを込めましたか?

ReN:優しさだけじゃなくて、厳しさが必要な局面ってあると思うんですよね。その厳しさこそが「本当の優しさ」の場合もあるし、誰かと寄り添って生きていくためには、優しさと厳しさの両方が必要というか。僕自身、心がどんどんネガティブになっていった時に、その感情を蹴り飛ばすくらいの厳しさが必要だったんですよね。ついつい優しい言葉を求め、追いかけてしまったのだけど、それが自分の力になったかというと、一瞬の緩和剤にはなってもエネルギーにはならなくて。痛いくらい背中を叩いてもらったことが、プラスになった出来事が去年のコロナ禍でもあったんです。「あ、これじゃダメだな」って。

ーー〈正直者以外が Gain する不条理な世界で 時に何が正しいかさえも フッと見えなくなってきて〉というラインも印象的です。

ReN:生活している中で、矛盾を感じる瞬間ってたくさんありますよね。善悪の基準も状況でコロッと変わる。誰かに自分の気持ちを正直に話したら笑われてしまったり、相手に対して優しい気持ちで接していたら舐められたり。そういう時に不条理だなと思う。正直なだけじゃ世の中に利用されてしまうし、足元をすくわれてしまう。「あいつ、いいやつだよな」と言われることは、果たして喜ばしいことなのかな? とか思うんですよ。そういう矛盾は、人間だからこそ起きる矛盾でもあると思うし。そういうモヤモヤした気持ちを、ここでは表現したつもりですね。

ーー全体的なサウンドはフォーキーでオーガニックですが、ブレイクダウン、ドロップ、ビルドアップの繰り返しなど、曲構成やリズムからはEDMの影響を感じます。先ほども話してくれた、「失敗や成功を何度も繰り返しながら、人は進んでいく」ということを表現しているようにも感じました。

ReN:いいことがあれば悪いこともある、その繰り返しの中で人は少しずつ進んでいく。おっしゃるように、それをサウンドのリフレインで表現したところはありますね。ちなみに内藤さんとの打ち合わせでは、アヴィーチーの名前も出ました。

ーーちなみに、ReNさんは去年どんな曲を聴いていましたか?

ReN:アリシア・キーズの「Underdog」はよく聴いていましたね。曲調も好きだったし、歌詞もまさに今の自分たちが日々感じていることを歌っているなと。このアンダードッグな状況から少しでも這い上がろうという力をもらえる楽曲でした。それからウィークエンドの「Blinding Lights」。自分を別世界に連れて行ってくれたり、ヒーローになった気分を味わせてくれたりする曲が大好きなんですよね。エイティーズのシンセの音も良かったですし。もちろん、相変わらずコールドプレイもエド・シーランも好きで聴いています。

ーー「Running Forward」のMVには、プロ山岳ランナーの上田瑠偉さんも出演しています。メイキング映像には、とても仲が良さそうな2人の様子が収められていますが、もともとお二人は交流があったのですか?

ReN – Running Forward [Official Music Video]

ReN:いや、実は今回の撮影で初めてお会いしました。同い年なんですよね。瑠偉くんはもともと駅伝にも出場するなど、長距離ランナーとして活躍していたのですが、怪我をして道半ばで諦めざるを得ない状況になって。そこから「スカイランニング」という分野でアジア人初の年間世界王者になった人なんです。僕自身も、もともとはモータースポーツの世界にいて挫折を経験しているから、お互い感じてきた悔しさみたいなものが、会話をせずとも表情を見て分かり合えた気がしたんですよね。「この人、いろんなものを背負ってきているんだろうな」と。撮影の合間にもご飯を食べながらいろんな話をたくさんして、どんどん仲良くなりました。今朝もLINEでやりとりをしたばかりなんですよ(笑)。

ーーなんとなく、お二人の顔つきも似ている気がします(笑)。

ReN:そうなんですよ。今回の撮影でも、どっちがどっちか分からないんじゃないか? というくらい、似たカットがたくさんあって(笑)。編集が結構大変でしたね。

ーーとにかく、息を飲むような絶景でした。撮影場所はどこだったのですか?

ReN:伊豆大島の三原山です。朝4時に起きて、1時間くらいかけて山頂まで登ったのですが、「ここは火星か?」って思いましたね。ほんと、見渡す限り建物が一つもなくて、どこか別の惑星に降り立ったような神秘的な気持ちになりました。しかも瑠偉くんが、率先してたくさんの危険な道を走ってくれて。本当に気持ちが入った状態で臨んでくれているのが、ひしひしと伝わってきて本当に嬉しかった。

ーー天候にも恵まれた撮影だったのではないですか?

ReN:確かに雨は降らなかったのですが、今まで経験したことがないくらいの風が吹いているんですよ。周りに遮るものがないから、油断すると投げ飛ばされそうなくらいの強風なんです。その状態だと上まで登れないので、風が吹いていない時間帯を見計って登って行くんですね。とはいえ、山頂まで1時間くらいかかるので何が起きるか分からない。登った時に雲が多くなる可能性もあるし。

 まずスタッフが先に上まで上がって、僕らはふもとで待機して。「よし、今なら大丈夫!」という合図に合わせて一気に登っていくっていう。で、水だけちょっと飲んで、息切れを抑えてすぐ撮影、みたいな(笑)。とにかく時間との戦いというか、ほぼ一発勝負の撮影だったんです。

ーーあの美しい映像を収めるために、大変な手間と時間がかかっているわけですね。

ReN:まさに。山を登りながら、自分が書いた歌詞の意味を実感していました(笑)。ただ、本当に久しぶりに遠出をして、外の空気をたっぷり吸うことができたのはすごく嬉しかったです。自宅やスタジオにこもって制作をするのとはまた全然違った気持ちを味わうことができたし、「心のリハビリ」になりました。皆さんにも、少しでもこの映像に癒されてもらえたらすごく嬉しいです。

ーー最後に、2021年の抱負を聞かせてもらえますか?

ReN:本来は去年の3月に終わっているはずの『HURRICANE』ツアーが、未だに完遂できていないことがずっと心に引っかかっているんですよね。今年はどんな形でも必ずやろうと思っていますし、その先もまた普通にライブができることを心から願っています。

■リリース情報
「Running Forward」
リリース日:1月15日(金) 
ダウンロード / ストリーミングはこちら

■タイアップ情報
テレビ東京
ドラマ『今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕』
初回放送1月15日、毎週金曜20:00〜
主題歌:ReN「Running Forward」
番組HP

■ライブ情報
ReN ONE MAN「HURRICANE」TOUR 2019-2020
再延期公演(Tour Final)
4月16日(金)ZEPP DiverCity (Tokyo) 
OPEN 18:00 / START 19:00
問:SMASH(03-3444-6751)

■関連リンク
ReN Official HP
ReN Label HP

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